先日の朝日新聞夕刊にとても粋な記事が掲載されていた。
「英国人は行列を大切にする」テニスのウィンブルドン選手権では会場近くの広場に1000ほどのテントが並ぶ。彼らは当日券を求める人たちの列「ザ・キュー」で本格的なキャンプとは異なり、トイレも給水所も近くにコンビニや飲食店もあり、近くのジムでシャワーも借りられ、観戦が終わると再び最後尾に並び直す。大会主催者はテントで列をなすファンのために当日券を残し、さらにセンターコート前列の特等席も用意される。インターネット販売でない時間をかけた人に報いるべきだという英国風土。そして記事はこう結ばれている。「タイパが重視される時代にあって、時間をかけることで得られる感動のとりこであり続ける」
主催者側の心意気に感銘を受けつつ、思い出したのは17歳での初めてのひとり旅だった。オールナイトコンサートの前売りチケットを購入しに新宿まで行ったり、コンサート会場のあるキャンプ場まで山道を登り、テントの中で一泊して観たオールナイトコンサートは40年以上経過したがまだあの光景は鮮明に蘇るほどでまさに時間をかけることで得られる感動であった。当時はネットが無いので自らで探したり、調べたり、出向いたりした。だからと言ってネットの便利さを知ってしまった以上はあの頃に戻りたいとは思わないし思えない。ネットのおかげで生活は非常に快適になったのは紛れもない事実であるが、あの頃はあの頃でそれはそれで面白かったなとつくづく思う。だからひとり旅では極力レンタカーを借りずに、地元の公共交通機関を利用しているのもそれに近い感覚である。