にほんブログ村
にほんブログ村
2016年、イシダシジミの現況とマニアの採集との関係
わが国において草原性蝶類の衰退はいちじるしい。
マスコミ的な表現では環境変化とマニアの乱獲が原因ということになるが、マニアの乱獲にウェイトを置きたがるのはニュース性を追い求めるマスコミの体質上仕方がないだろう。
しかし、多くの場合マニアの採集は、すでに絶滅が近づいている個体群に単にトドメをさすといった一見やたら目立つ行為ということに過ぎない。
このような場合、しばしば乱獲というマスコミ用語が用いられる。
私たち蝶愛好家の視点からすれば本当の原因は種々の理由による棲息環境の変化であることは言を待たない。
イシダシジミの場合も同じと思う。
20年ほど前であれば道東の産地を回ってイシダシジミ終令幼虫をナンテンハギの葉先からいくらでもつまんできては蛹化させ、おびただしい数のイシダシジミを羽化させることなど容易であったがこれを乱獲とはいえない。(キャベツ畑に乱舞するモンシロチョウを1000匹採集してもこれを乱獲とは言う人はいないだろう。それと同じ。 )
道東の泉川の駅周辺では、やや発生の後期にゆけばイシダシジミはまさに群飛・乱舞しており、採集の食指はまったくわかない駄蝶であった。
そんな蝶が、気が付いたらほとんどいなくなっていたのだ。
誰もそれと気づかないうちに忽然と道東の草原から消えてしまった。
理由はよくわからない。爆発的に増えたエゾシカが大好物のナンテンハギ若葉をイシダシジミ幼虫もろとも食べてしまったという意見はかなり真実味をおびて語られた。
鉄道路線が廃線になり線路脇の草刈りをしなくなったためナンテンハギが他の植物に負けて消えてしまった。
やや湿った道路脇に発生地が多かったのだがアスファルト舗装がどこまでも行き渡り排水溝も完備して環境が乾燥し、発生地が消えた。
イシダシジミ生息に理想的な草原がことごとく畑や牧草地に変わってしまった。
帯広の大産地は宅地化で消えた。
草原の乾燥化がはじまり灌木が茂り背の高い雑草が茂りナンテンハギを覆い尽くして、やがてナンテンハギは消えてしまった。
農薬散布の巻き添えを食ってイシダシジミ幼虫全滅。寄生虫、ウィルス、天敵などにやられたのではなかろうか。
地球温暖化が何らかの悪影響をあたえたに違いない。 etc etc etc .........。
いずれの説も一見本当くさいが実際のところはっきりした原因は不明であろう。
しかし人間の生活の営みそのものに関わる形で消えていった産地は実際のところきわめて多いと思われる。
一方、種アサマシジミ(イシダシジミはアサマシジミ亜種)は環境さえ整えばモンシロチョウ以上に爆発的に発生する蝶で、私は実際にモンゴルで数百匹規模の大吸水集団はよく見ています。
たとえば2002年6月24日、モンゴル最北部の秘境ドートノール湖畔では雲霞のごとく本種が大発生していました。
採集記録をみると、この日イシダシジミ608♂♂82♀♀を採集しましたが(これも乱獲とは言えないだろう)見渡すかぎり、おそらく数万~数十万の本種が大発生していました(拙著モンゴルの蝶類第4巻シジミチョウ科・セセリチョウ科 P. 117)。
ひたすら採集に徹して大急ぎで各地をまわる調査旅行で生態観察が十分出来なかったのが残念です。
モンゴルでの状況を見ればイシダシジミは環境さえ整えば爆発的に増える蝶と言えます。
モンゴルほどではありませんが前述の泉川駅周辺のように道東でもかってはおびただしい数の本種をみています。
田中角栄時代以降の、ごく最近の自然しか知らない若い方々(おそらく環境省職員も同じ)には到底理解できないかもしれませんが、環境さえ整っていれば、マニアの絶え間ない乱獲のみで絶滅する蝶(ほ乳類や鳥類とは発生の仕組みが別次元の生物です)は滅多にいないと断言できます。
近年ではオホーツクで唯一、まだ生息が確認されているという遠軽町自衛隊射撃訓練場のイシダシジミにその気配を感じることができると思います。
2015年6月のこと、絶滅間近???とされる遠軽の狭い産地に残り少ないイシダシジミ(幼虫)を求めて血眼で殺到する多数の蝶マニアの方々の気持ちはわからないでもありませんが、あまりにもアサマしすぎて一般の方々がみれば、とてもみにくい光景に映るかもしれません。ただ、これまでの私自身の所業からして彼らを非難する資格は私にはありませんが。
しかし、諸般の事情で発表できないため、おおっぴらになってはいないのですが実は2013年、ここのイシダシジミは大発生しています。
その前年2012年秋に、詳しいいきさつは不明ですが自衛隊員によるこの場所の大々的な草刈り・灌木伐採があったのです。
ナンテンハギに覆い被さる雑草・灌木が刈られた結果、翌年ナンテンハギの生育がよくなったことが大発生の理由と考えられます。
秋の草刈りによる2013年イシダシジミ大発生は多くの方には留意されることも公表されることもありませんでしたが、たまたま、その時期に訪れた蝶愛好家の方々によりはっきりと確認されています。
その情報をもとに 2014年は多くの採集者が入ったようですが発生状況は悪くなく一人成虫20頭ほどは採集できたとのことでした。
その後草刈りは行われず雑草は勢いを取り戻しナンテンハギの勢いは再び衰え、採集者の増加もあって2015年は発生個体数は再び激減していたのが現状と推定されます。
ただ、蝶は大発生のあと激減することがあり、もしかするとそれかも知れませんが。
ナンテンハギそのものは刈らないよう気配りした秋の草刈りを継続し、自衛隊による射撃場管理(立ち入りを厳格に制限する)を徹底することにより遠軽のイシダシジミは再び勢いを取り戻す可能性は多いにあると思います。
これが遠軽のイシダシジミを存続させる最も現実的な方法とおもわれます。
射撃訓練場であるという特殊事情から危険や軍事機密等、自衛隊法の縛りなどあるのだろうか。
ただ北富士自衛隊演習場は訓練のないときは広く一般に開放されていると聞く。柔軟な法解釈で一般ボランティアなどが合法的に立ち入るようには出来ないのだろうか。
この項、 続く。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
2016年、イシダシジミの現況とマニアの採集との関係
わが国において草原性蝶類の衰退はいちじるしい。
マスコミ的な表現では環境変化とマニアの乱獲が原因ということになるが、マニアの乱獲にウェイトを置きたがるのはニュース性を追い求めるマスコミの体質上仕方がないだろう。
しかし、多くの場合マニアの採集は、すでに絶滅が近づいている個体群に単にトドメをさすといった一見やたら目立つ行為ということに過ぎない。
このような場合、しばしば乱獲というマスコミ用語が用いられる。
私たち蝶愛好家の視点からすれば本当の原因は種々の理由による棲息環境の変化であることは言を待たない。
イシダシジミの場合も同じと思う。
20年ほど前であれば道東の産地を回ってイシダシジミ終令幼虫をナンテンハギの葉先からいくらでもつまんできては蛹化させ、おびただしい数のイシダシジミを羽化させることなど容易であったがこれを乱獲とはいえない。(キャベツ畑に乱舞するモンシロチョウを1000匹採集してもこれを乱獲とは言う人はいないだろう。それと同じ。 )
道東の泉川の駅周辺では、やや発生の後期にゆけばイシダシジミはまさに群飛・乱舞しており、採集の食指はまったくわかない駄蝶であった。
そんな蝶が、気が付いたらほとんどいなくなっていたのだ。
誰もそれと気づかないうちに忽然と道東の草原から消えてしまった。
理由はよくわからない。爆発的に増えたエゾシカが大好物のナンテンハギ若葉をイシダシジミ幼虫もろとも食べてしまったという意見はかなり真実味をおびて語られた。
鉄道路線が廃線になり線路脇の草刈りをしなくなったためナンテンハギが他の植物に負けて消えてしまった。
やや湿った道路脇に発生地が多かったのだがアスファルト舗装がどこまでも行き渡り排水溝も完備して環境が乾燥し、発生地が消えた。
イシダシジミ生息に理想的な草原がことごとく畑や牧草地に変わってしまった。
帯広の大産地は宅地化で消えた。
草原の乾燥化がはじまり灌木が茂り背の高い雑草が茂りナンテンハギを覆い尽くして、やがてナンテンハギは消えてしまった。
農薬散布の巻き添えを食ってイシダシジミ幼虫全滅。寄生虫、ウィルス、天敵などにやられたのではなかろうか。
地球温暖化が何らかの悪影響をあたえたに違いない。 etc etc etc .........。
いずれの説も一見本当くさいが実際のところはっきりした原因は不明であろう。
しかし人間の生活の営みそのものに関わる形で消えていった産地は実際のところきわめて多いと思われる。
一方、種アサマシジミ(イシダシジミはアサマシジミ亜種)は環境さえ整えばモンシロチョウ以上に爆発的に発生する蝶で、私は実際にモンゴルで数百匹規模の大吸水集団はよく見ています。
たとえば2002年6月24日、モンゴル最北部の秘境ドートノール湖畔では雲霞のごとく本種が大発生していました。
採集記録をみると、この日イシダシジミ608♂♂82♀♀を採集しましたが(これも乱獲とは言えないだろう)見渡すかぎり、おそらく数万~数十万の本種が大発生していました(拙著モンゴルの蝶類第4巻シジミチョウ科・セセリチョウ科 P. 117)。
ひたすら採集に徹して大急ぎで各地をまわる調査旅行で生態観察が十分出来なかったのが残念です。
モンゴルでの状況を見ればイシダシジミは環境さえ整えば爆発的に増える蝶と言えます。
モンゴルほどではありませんが前述の泉川駅周辺のように道東でもかってはおびただしい数の本種をみています。
田中角栄時代以降の、ごく最近の自然しか知らない若い方々(おそらく環境省職員も同じ)には到底理解できないかもしれませんが、環境さえ整っていれば、マニアの絶え間ない乱獲のみで絶滅する蝶(ほ乳類や鳥類とは発生の仕組みが別次元の生物です)は滅多にいないと断言できます。
近年ではオホーツクで唯一、まだ生息が確認されているという遠軽町自衛隊射撃訓練場のイシダシジミにその気配を感じることができると思います。
2015年6月のこと、絶滅間近???とされる遠軽の狭い産地に残り少ないイシダシジミ(幼虫)を求めて血眼で殺到する多数の蝶マニアの方々の気持ちはわからないでもありませんが、あまりにもアサマしすぎて一般の方々がみれば、とてもみにくい光景に映るかもしれません。ただ、これまでの私自身の所業からして彼らを非難する資格は私にはありませんが。
しかし、諸般の事情で発表できないため、おおっぴらになってはいないのですが実は2013年、ここのイシダシジミは大発生しています。
その前年2012年秋に、詳しいいきさつは不明ですが自衛隊員によるこの場所の大々的な草刈り・灌木伐採があったのです。
ナンテンハギに覆い被さる雑草・灌木が刈られた結果、翌年ナンテンハギの生育がよくなったことが大発生の理由と考えられます。
秋の草刈りによる2013年イシダシジミ大発生は多くの方には留意されることも公表されることもありませんでしたが、たまたま、その時期に訪れた蝶愛好家の方々によりはっきりと確認されています。
その情報をもとに 2014年は多くの採集者が入ったようですが発生状況は悪くなく一人成虫20頭ほどは採集できたとのことでした。
その後草刈りは行われず雑草は勢いを取り戻しナンテンハギの勢いは再び衰え、採集者の増加もあって2015年は発生個体数は再び激減していたのが現状と推定されます。
ただ、蝶は大発生のあと激減することがあり、もしかするとそれかも知れませんが。
ナンテンハギそのものは刈らないよう気配りした秋の草刈りを継続し、自衛隊による射撃場管理(立ち入りを厳格に制限する)を徹底することにより遠軽のイシダシジミは再び勢いを取り戻す可能性は多いにあると思います。
これが遠軽のイシダシジミを存続させる最も現実的な方法とおもわれます。
射撃訓練場であるという特殊事情から危険や軍事機密等、自衛隊法の縛りなどあるのだろうか。
ただ北富士自衛隊演習場は訓練のないときは広く一般に開放されていると聞く。柔軟な法解釈で一般ボランティアなどが合法的に立ち入るようには出来ないのだろうか。
この項、 続く。
にほんブログ村
にほんブログ村
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます