柴燈護摩供養が催された、仁井寺山極楽寺の本堂に上がる108段の急階段の手前に、どっかりと1メートルもあろうかという天狗様が鎮座してござった。
普通天狗といえば赤ら顔の、闇夜に出会ったら何とも不気味な存在というのが通り相場のはずだ。それが、ここには白塗りのお化粧したような純白で、一段と鼻の高い天狗様であった。どうかすると、今までの常識を覆して、この真っ白天狗の方が闇夜では一層不気味に思える気がした。
天狗様には諸説ある。 修験者を天狗と呼ぶようになった…
鞍馬山で牛若丸に剣を教えた者が、天狗の面を付けて素性を隠したという伝承もある・・・
天狗が成立した背景には複数の流れがあるため、その種類や姿もさまざまである。 一般的な姿は修験者のいでたちで、その顔は赤く、鼻が高い。翼があり空中を飛翔するとされる。このうち、鼻の高いのを「大天狗」、鼻先が尖ったのは「小天狗」あるいは「烏天狗」という。
天狗は、慢心の権化とされ、鼻が高いのはその象徴である。これから転じて「天狗になる」と言えば自慢が高じて、鼻持ちならない様子を言う。彼等は総じて教えたがり魔なのだそうだ。
早い話が、天狗様は、現世では怖れられる存在ではあるが、どちらかというと負のイメージが強い。 アイツはこの頃天狗になっとる・・・。 いつかあの鼻っぱしらをへし折ってやりたい・・・などと。 気を付けよう、暗い夜道と天狗鼻。