駒の小屋番(その1)
日本百名山にも選ばれている、越後駒ケ岳の小屋は「駒の小屋」と呼ばれている。
私の記憶では、三十年程前に私が初めて登って以来五人ほど小屋の番人が交代している。
いずれ劣らぬ個性派の人達である。初めて登った時の番人が、長い間小屋番を勤め多くの岳人に愛された、
通称「駒の六さん」だった。この六さんについては前にも書いたが、
ある年の十一月駒の小屋の直下で、吹雪に巻き込まれ無念の遭難死を遂げてしまっている。
三十年近く前に家族で、小屋に一泊した時の番人は、娘がその事を書いた作文が、
コンクールに入賞したと手紙を出すと、冬前に下山した際に、お祝いに来てくれた。
その後しばらく登っていないので、今の小屋番の「Yさん」までの間には何人か代わっているのかもしれない。
「Yさん」に面識は無かったが、新聞で駒ケ岳の写真集を発行したとの記事を見て、一冊購入した。
奥様が高速道路のインター近くにに「ウッディ」と言う喫茶店を経営しておられる。
写真集を求めに訪れたのは夏であり、「Yさん」は小屋に入っており不在であった。
その時はまだ版画は目立たなかった。
最近お茶を飲みに行った妻が、すばらしい版画が何枚も展示されていると言う。
次の日曜、妻と「ウッディ」を訪れた。
(続く)