熊騒動
黄金週間の最初の日曜日に、恒例の集落の共同作業「排水路の清掃」が行われた。
田畑の作業が本格的になる前に、まず水を確保しようと言うことである。
八時から分担を決め作業開始。投げた泥の中から泥鰌が出てきたりして、
一時期強力な除草剤、殺虫剤の散布で姿を消した生物の復活のさまを見せてくれる。
十時になり、係りが飲み物を配りに来て、休憩となり座る場所を探して集まった。
久しぶりに顔を会わした顔ぶれが、皆の気持ちに軽い興奮を呼び話が弾む。
その時、一人が「実は昨日、沢の奥の休耕地になっている田の跡で熊の足跡を見つけた人がいる」と言った。
まさか、と言うのが大方の反応だった。
私もそう思った。最近カモシカが移り住んだりしているとはいえ、JRの線路からは二キロほどの距離。考えられない事である。
しかし、翌日騒動が起きた。山菜取りに沢に入った人が、熊らしき動物を見たと言う話が駆け巡った。
道路の要所、沢筋の入り口に注意と、情報提供を求める看板が立てられた。
それでも山菜取りが減ったと言う事はまったく無く、普段と同じに自動車は停まっている。熊も驚く山菜ブームである。
その後目撃談が出ないところをみると、どう考えても私には熊とは思えない。
思い当たる節が無くもない。実は山の農道の除雪が終わったばかりの頃、犬を連れて散歩に行った際、
斜面を下り道路を横切るカモシカを見ていたのである。
何年か前から住み着いたカモシカとは明らかに違い、歳も若いのか黒味の強い毛色をしていたのである。
見方によっては熊に見えない事も無い。きっとそれに違いないと、近所の山菜採り好きなお母さんと話をした。
しかし、無法者の山菜取りを防ぐため、熊だったことにしようと、笑いながら話し合った。
しかし、その後聞いたり、読んだりした事で学んだことは、熊はその気になれば、
一晩で100キロも移動することがあるという事実。油断は禁物ってこのことです。
忘れてならないのは、いつ、熊が現れても不思議のない環境に住んでいるという事でしょう。