桶か樽か(その2)
醤油を醸造したその桶は台でもなければ中を覗き込むことさえ出来ない。
もちろん一人二人の力では微動させることも出来なかった。
苦労して積んだ二トントラックの荷台からは幅がはみ出す。
明らかに積載違反だが交通量の少ないコースを選び冷や汗を掻きつつ運んだ。
ようやく出発し、越路町地域に着こうかと言う頃「荷物を縛るための布製のバンドを積み忘れた」と妻が言う。
ただでさえ、警察の目を気にしながらだの道中だというのに、もう一汗別の汗をかくことになってしまった。
我が家に到着した、大きな桶は少しでも多くの人達に見て頂こうと、私の畑の道に近い片隅に置いた。
転用も考えたのだが、酒と違い醤油の製造に使用した桶は、何年経っても醤油が滲み出し、
人間が中に入って利用する事は無理だと言う。
(続く)