野中昇氏によるカバー画は実に巧みだ
平和な田園風景をバックに 多分 女の子のものであろう黒い靴が枯れた落ち葉に半ば埋もれている
空の色と相俟って静かに不気味である
前作「夜の闇を待ちながら」から約十年後 警察を辞め農場主となったジョン・マッデンはたまたま行方不明の少女の死体を発見する
無惨にも顔を殴打され破壊され しかもレイプされていた
それは浮浪者でもなければ知らない場所
ジョンは違和感を覚える
余程の土地鑑があるのか
犯人は被害者を前もって選んでいた
そしてこれが初めての犯行ではなく {手慣れたもの}であるように感じ 常習者ではないかと考える
ジョンの辞職を惜しむかつての上司 部下は その勘を信じ 捜査を進めると 驚いたことに英国以外でも共通する事件があり ドイツから警部が訪ねてくる
犯人が標的にしているらしい少女
彼女を囲む人間関係が他方で描かれる
うろつく男に不審な物を感じ 少女を守ろうとする男たち
対して最後まで まともな言葉を発しないように描かれる犯人は 人でないケモノのようで不気味である
犯人を見た人間が遺した言葉は 悪魔の印
その手掛かりから犯人らしい人間が潜む場所が判り
車が故障したかつての部下を送り届けたジョンは 偶然から犯人の車を発見する
捜し始めたジョンは怪我した男から ネルという少女が狙われていたと知り 犯行を阻止しようと追いかける
第二次世界大戦の気配迫る時代
まだ平和ながら不穏な空気も何処かにある
その中で助け合って生きようとする人々
再び事件と関わる夫を心配する美しい医者でもあるヘレン
この一家にも戦争の影は襲いかかるのでしょうか
否応なしに?
そうであってはほしくないと 祈りつつ―
殺し続けずにいられなかった男の魂は 今もなお 闇を彷徨う
力作です