独立しても読める短編が関連しあって 一つの話にもまとまるというツクリになっています
「いも虫」女の為に金を使い込み 思案にくれる繁吉の前に現われた幼馴染みの新助
盗んだ逃亡資金をそのまま渡してやる
喉元過ぎれば熱さを忘れる
繁吉は もうその金を 女とあれこれしようと考えていた
新助が捕まる―などとは考えていないのだ
「あまったれ」真面目に生きてきた男は身をもち崩し言った―わたしだって 甘ったれてみたかったんだよ―
表題作「どぶどろ」で出てくる人々の人間関係もさりげなく説明する顔見せ・・・的一編
「役たたず」女板前でしっかり者のお梅にだって悩みはある
人の世話は出来ても―
「くろうと」橋の両袂に向かい合わせに出る夜鷹蕎麦の屋台 若い男と爺さんと
しかも二人には奇縁というべき不思議な繋がりがあった
「ぐず」金貸し検校の下で取り立てを仕事とする男は 惚れてた女と再会し 力を貸してやりたいと思うが―
「おこもさん」亭主に死なれ 世話をしてくれる男と深い仲になってしまった女
その下の息子は時々乞食のところで遊んで貰っていたが
「おまんま」亭主とはうまくいっていたのに 姑に追い出された女が新しく持った男は何やら覇気がなく 夫婦仲もうまくいかない
心配した源助は 手を打った
「どぶどろ」山東京伝の家で働いていた平吉は 一人前だからと他に住まいを持つようになったが
夜鷹蕎麦の屋台の爺さんが殺された事から 信じていたものの裏側が次第に見えてきて
彼は自分が信じる何かの為に 力を尽くそうとする
どぶどろの中で生きる人間は そこを見下ろす人間には勝てやしないのか
作家の宮部みゆき女史も大好きな作品とのこと
「ぼんくら」は宮部女史の中で 「どぶどろ」が消化され発酵してできたものなのだそうです
優しく温かな推薦の言葉
日下三蔵氏の解説も半村良という作家について丁寧に紹介してくれています
忘れられて絶版になってしまっている名作を発行していこうという扶桑社の試み「昭和ミステリ秘宝」シリーズ
どうか続きますように