報道カメラマン西崎は山で不思議な物を見て撮影する
彼の別居中の妻慶子も仕事でおかしな事に巻き込まれていた
娘を死なせたことで 自分を見失っていた男は 異様な事態の中で 大切なものに気付く
政府は何を隠そうとしているのか 山中での戦い
家族を日本を守る為に 男達が選択したことは
読むと映画ではどうなのだろうと 観たくなります
報道カメラマン西崎は山で不思議な物を見て撮影する
彼の別居中の妻慶子も仕事でおかしな事に巻き込まれていた
娘を死なせたことで 自分を見失っていた男は 異様な事態の中で 大切なものに気付く
政府は何を隠そうとしているのか 山中での戦い
家族を日本を守る為に 男達が選択したことは
読むと映画ではどうなのだろうと 観たくなります
雅 京四郎は 今迄 体調が悪い 体が重い
頭が痛い・・・
そんなことに悩まされることなく生きてきた
悩みと言えば どうして桜町弘子に釣合う年頃で生まれなかったのか ―そうすれば自分も久我美子を射止めた 今は亡き俳優のように頑張れたのに・・・と ―のどかな(本人には切実な)ものだった
現実の娘達は 彼には同じ日本人にも思えなかった
おっとりと淑やかな大和撫子は もう死滅したのだろうか
町を歩くたび 彼は思うのだ
時代劇マニアな彼は このあちこちに史跡ある地方の都市が気に入っていた
最初は確か風姫山を歩いていてこけたのだ
気付いたら自宅で朝だった
幾ら何でもおかしすぎる
若年性痴呆症だろうか
今夜もそのこけた辺りを 思い出しながら 京四郎は歩いている
京四郎の名は 祖母がつけたのだ
柴田錬三郎原作 眠 狂四郎シリーズの愛読者で市川雷蔵のファンだったと言う
狂四郎はあんまりなので 京の字にしたとか
ニヒルな剣客とは程遠く育ったが
他にも「われら九人の戦鬼」から夜八郎とかも考えていたらしい
シバレン(柴田錬三郎)より 山手樹一郎の方だな―とは山本の感想である
歩きながら何か忘れている気がして 首をひねっていたが やがて「しまった」と冬眠してる熊がひきつけ起こしそうな大声をあげた
警察官現役やOBが中心に指導している若鷹会の手伝いを山本から頼まれていたのだ
幸い公民館の場所は ここから近い
走って山駆けおり車に乗れば ギリギリ間に合う
息せき切って公民館の入口に立つと 「遅い」と下から頭をはたかれた
「落着いたら相手してやれ 油断してるとめんとられるぞ」 山本が言う
心落着け防具をつけて 竹刀を持つ
空いている筋に立ち 子供達が並ぶのを待った
若鷹会では剣道人口が増えること 裾野の広がりを願って小学生から教え 時々試合もしている
正月明けの初稽古では地区対抗の試合も 聡明女学院の体育館を借りて行われる
すっと一礼してきたのは 若い娘だった
香月とある
その時は ぴんと来なかった
立ち姿に 目を奪われただけだ
静かな・・・面の奥から気合いの声
見てる間に 本当に面を取られた
山本の爆笑が聞こえる
次はこて取りに飛び込んできたところを何とか抜き胴に取り 面目を施したが
身が軽い 動きが早いのだ
見た目より腕を長く感じる
野郎相手とは勝手が違った
腕の細さに打ち据えて良いものかと思うのだ
打ち合ううちに漸く気付いた
聡明女学院の香月さやか―
文芸部の頭があってぴんと来なかったのだ
「有難うございました」一礼して下がる
次にかかってきたのは 形も何もまだできていない
しかも荒っぽい
が無茶苦茶動きが早かった
まるで鳥のように飛び込んでくる
彼は打ち返すより受け止めたい―と思ってしまった
ぐらり足が よろめき 『うわ・・・』
「本当によく眠っていますね」
「埋蔵金目当てに山へ入る人間を警戒のパトロールで 非番も夜も無かったからな」
「ぼく・・・ついています」
この後 子供達から ぶっ倒れ先生とか からかわれるようになる雅だが
つまずいて倒れた彼は 案じて傍らに行った山本が様子を見ると 気持ちよさそうに眠っていたのだ
額にタオルか何か乗せてあるのか 冷んやりして気持ちが良い
目を開けた雅 京四郎に見えたのは 白い着物 袴姿 わずかに明るい髪色の・・・藤衣なつきだった
正座して彼の枕元にいる
「よく眠れましたか ぼくも眠り込んで 母によく叱られます」
そうだった この少女は 自分のことを ぼくと言うのだ
「剣道は好き?」
「さやか 香月さんにさそわれて― 竹刀を振るのは好きです」
「香月さんもそうだけど 君は更に身が軽い
続けてくれたら楽しみだな」
なつきはペコリと頭を下げた
形良い細い首の線が眩しいようだ
と なつきが いや 声と口調が変化した 「起きよ これ」
京四郎の中から別な声が返事をする
「姫様・・・」
「そなたも体を見つけていたか
使いやすいかえ」
「多少軟弱ではありますが しかも気がゆき届きませぬ
先程も姫を打とうなどと ご無礼を」
京四郎の中の誰かは 勝手な事を言っていた
なつきの中にも誰かがいる
見た目 なつきは平然としていた
何か達が会話に満足し休みをとってから なつきが 雅の中にいるのは 雪景 新九郎らしいと教えてくれた
彼らは 人の体を動かせるらしい
「慣れたら 新九郎さんから詳しい事は話して貰えると思う
姫御前なんて やたら話しかけてきて五月蠅いの
じゃぼく そろそろ行くね 」
こんな異常な体験は 他の人間には相談できそうにない
だから雅は言ってしまった
ナンパではない 断じてない
「また話し聞いて貰えるかな」
「あはは・・・これ慣れるまで大変さ~ 頑張ってね」
なつきの姿が見えなくなると 妙に心細くなった雅である
西部の無法者 列車及び銀行強盗
一味を率いて馬を駆り 銃撃ち鳴らし・・・
そして部下の裏切りに遭い 自宅で丸腰でいるところを後ろから撃たれて死んだ
タイロン・パワーの映画だったかを見たのが ジェシ―・ジェームズという名前を知った始めだった
史実とは違うがジェシ―の生き残った兄弟が彼の復讐をするという映画もあった
こうしたたいていの映画では何故か不思議と 無法者一味の彼らを追いかける側がひどく陰険で卑劣に思えてくるのだ
この本は ジェシ―・ジェームズを殺した男ボブ・フォードの死までを描いている
子供の頃からジェシ―・ジェームズに憧れ 切り抜きを集め 自分との共通点を捜し なんとか一味に加わろうと押しかけ
ひたすらジェシ―につきまとい
彼のイトコを殺した事から ジェシ―に殺されると被害妄想膨らませ怯え この大人になりきれない卑劣な臆病者は 検察側と取引する事で自分を正当化し ジェシ―を殺すことで英雄になるのだと思い付く
どうしたってこのカリスマ ジェシ―にとってかわることは できやしないのだ
なら破壊してやる
俺様こそが殺してやる
兄チャーリーを巻き込んで ボブはジェシ―を撃つ
それはどう言い訳しようと いつか自分は間違なくジェシ―に殺される だからこそ先に それも自分が撃たれないように 相手が武器を持っていない時に背中から撃ったのだ
ボブが願ったように世間は彼を英雄視してくれなかった
兄チャーリーは自殺し ボブも背後から撃たれて死ぬ
因果はめぐるのだ
ブラッド・ピットがジェシ―・ジェームズをケイシー・アフレックがボブ・フォードを演じて映画化されております
悪党の栄光の時は短い
どう描写を変えようとも 裏切り者は裏切り者
一度裏切った人間は 必ずまた裏切る
そして運命にも結果として裏切られる
それが報い・・・
かつては単純に描かれた西部劇は いつのまにか人間や史実に拘泥して描かれる時代に入りました
ある種の爽快さは逆に失われたように思えます
時代劇も時代考証にばかり拘ると自由な物語の楽しさ
映画の夢の味わいが消えるようです
難しいものですね