作家 綾辻行人氏による 読んでほしい推理小説
エラリ―・クィーン作「暗黒の館の冒険」ジューナを連れて遊園地へ行ったエラリーは又もや死体と遭遇する
赤い矢印と緑の矢印 暗くてもそれを見れば迷わないツクリになった館の中・・・何を目印に犯人は相手を見分けたのか
山田風太郎作「黄色い下宿人」 ホームズの推理を覆した人物の正体は―
ロナルド・ノックス作「密室の行者」これはミステリー・パズルみたいな本には よくとりあげられるネタでもあります
私は中学生時代に 「中○コース」なんて本で読みました
食べ物はいっぱいあるのに・・・餓死せざるを得なかった男
何故に?!
ジョン・カーター・ディクスン作「妖魔の森の家」タイトルからしてわくわくさせてくれます
さすがカー
冒頭のヘンリー・メリヴェール卿を待つ男女の会話からして深い意味があります
背が高く黒髪でハンサムかつ生真面目な外科医 金髪の娘
二人は子供の頃 密室で行方不明になり やがてまたその密室に忽然と現われた娘に会いたくはないか―と言うのだ
蠱惑的な女性に成長した女相続人ヴィッキー・アダムズ
彼女はまたもや 子供の頃のように姿を消した
ヘンリー・メリーヴェール卿もいたピクニックの場から
事の真相に突き当たった卿は 暫く不気味な思い出に悩まされるのだ
密室 怪奇趣味
雰囲気ある作品を書かれる作家さん
推理小説にとどまらず歴史モノとか ややオカルトがかった作品も書いておられます
クィーンと並んで学生時代好きだった作家の一人です
あの頃 夢中になって読んでいました
エドワード・D・ホック作「長方形の部屋」殺された同室の男子学生の傍らにずっとついていた男
何故彼は逃亡もせず死体の横に居続けたのか
ホックは短編の名手
田舎医者が若い頃から関わった事件を語るサム・ホーソンシリーズなど 『やられた』と読後思える話が多いです
法月綸太郎作「カニバリズム小論」まず食事時またはその前には読まないで下さい
ブラックですがショートショート的味わいもあります
自分が殺した女の死体を食べ続け調理中に捕まった男がいる
探偵であり作家でもある綸太郎の辿り着いた 死体を食べ続けた動機とは―
そりゃガキの発想だろうよ
と犯人の動機については思うかもしれません
「おまえのかあちゃん デベソ」レベルな精神年齢だぞと
泡坂妻夫作「病人に刃物」殺人に使われたナイフの持ち主であった為に犯人にされかけた男
それを救ったのは 亜愛一郎
凶器は何処からやってきたか―
「乱れからくり」これが映画化されたのは30年くらい前になるでしょうか
引退した奇術師を探偵に据えたシリーズ
数々の憎い名作があります
連城三紀彦作「過去からの声」子供の誘拐事件
その捜査を最後として刑事をやめた青年がかつてコンビを組んだベテラン刑事にあてた手紙に書かれていた内容は―
ミステリでありながら 漂う切なさは この作家さんの持ち味かもしれません
鮎川哲也作「達也が笑う」
ふっふっふ
初めてこの作品を読んだ後 作者の稚気に笑みがこぼれました
作品の細部は忘れていましたが これだけは忘れっこない―という仕掛けがあるのです
密室で死んだ男
そのからくりに気付いたらしい達也も殺される
遺した言葉から犯人は 女であるらしい
そして死んだ女性が一人
犯人自殺で事件は終わったのか?!
今は簡単に入手できない作家の本は忘れ去られやすい時代でもあるようです
少し古い作家の本は書店に置いていないこと―が よくあります
粗製濫造でなく 良い物は手にとりやすい場にあれば―
話題の作品ばかりが 本ではないのだと
古典にかえる
古典を知った上で現代の推理小説も読んで欲しいと思います
映画もそうですがオリジナルを知らなければ パロディの面白さも理解できません
このセリフは あの映画から 小説からだ―なんて分ると 更に面白さが増します
もっともっと読んでほしい
そんな編者の声が聞こえてくるようなアンソロジ―です
あなたの読書の世界が広がりますように