夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「恋する魔法使い」-6-

2017-03-22 12:29:09 | 自作の小説
アクナシティの船団がレイダンドの国へ近付いている噂は ブロディルへも届く
案じたブロディル国のアンドルフ王はカズール・シャンデ将軍を呼んだ
大切な四人の王子がレイダンド国の城に滞在中だ

シャンデ将軍は若い頃 秘密の任務でレイダンドの国都へ行ったことがある
その任務絡みでシャンデ将軍は右目を喪い・・・将軍となった現在は隻眼将軍と呼ばれている
残った片方の目も凍り付いているーそんな心無い噂をする者もいる

「お前が右目を喪って以来 レイダンドに足を向けなかったことは知っておる」

カズール・シャンデが失ったのは・・・右目だけでは無かった
愛する娘とその子供・・・・・
彼は苦い思いを噛みしめる

眼の傷が治りー捜した娘は・・・「もう 死んだ」
そう教えられた

それゆえ もう二度と足を踏み入れまいと誓っていたがー
「このわたしがまいります この命に代えても 王子様方は守り抜きます」

部下を引き連れ 疾風迅雷ー将軍はレイダンド国へ向かった



一方 レイダンドの国が近付くとアクシナティ国の皇帝コキンタクは武大臣モウトウゲン・内大臣ボクグジン・リシュウライ将軍を集め
「自分の偉大なる決心」について話す
この戦いで大いなる殊勲のある者を自分の後継者としファナク皇女を与えると

ファナク皇女は16歳 皇后シュランサイの特別な美貌を受け継いでいる

父親の言葉にファナク皇女は青ざめた
父親コキンタクより幾らかは若いと言っても いずれもいい年をしたオッサンばかり
若い娘が夢見る花婿には3人とも程遠い・・・
正妻こそいないけれど妾(めかけ)はたんと・・・・持っている

まだ見ぬレイダンド国 父親が征服を夢見る土地
こうなったら 父の手が届かない場所へ逃げ出そう
恐れ知らずの若い皇女はそう思った


そしてレイダンドの城では ほぼ・・・・・和やかに食事が終わった場でディスタン王はアクシナティ国の船団が近付いてきている話をする
先代のランデール王の時にも海を越えての攻撃があったこと
呆れるほど女好きのコキンタクのこと

「城へ攻撃をかけられる前に食い止める準備はしているが 戦闘が始まっては何が起きるか分からぬ
アンドール王子 ロブレイン王子 リトアール王子 ダンスタン王子 あなた方に何かあればブロディルの国王夫妻に申し訳が立たぬ」


「まさか!」とロブレインが目を輝かせる「国へ帰れなどと仰いませんよね」

末のダンスタンも続く「僕達は敵を前にして逃げ出すような卑怯者ではありません」

「僕としては・・・・・これでも頼れるところがあると見せられたら・・・ちょっと嬉しいかも」
と 独特の言い回しのリトアール

まとめる形でアンドール「ここで逃げ帰ったとあっては父に叱られます
まずーアクシナティのことでわかっていることをお教え願えませんか」



ロズモンドは意外な成り行きに驚きながら胸騒ぎを覚えていた
部屋へ朝食を届けに行った時の別れ際のベルナーの言葉
「ロズモンド ロズモンド 僕の為に祈ってくれるかな」

何の為の祈りが必要だったのだろう
何故 あんな眼で自分を見たのだろう

まるで姿を焼き付けるような?!
あの表情に何の意味があったのか・・・・・



海に近い場所にベルナーはいた
ーできるだけ上陸してくる前にとどめなくては!
相手が海にいる間に船団を混乱させる

レイダンドの人々が被害を受けないようにー

アクシナティの船団を眺め 歌うたいのベルナーは魔法使いアスタリオンとしての力を 一世一代の秘術を使おうとしていた

広い海・・・青い海・・・・・

彼は思い出す 育ててくれたアスザールの言葉を

ランデール王の願いは人々を守ること
無駄な命は奪わないこと
それが敵であろうとも

アスザールはクリスタベルを苦しめたくはなかった できるならば!
ランデール王との友情 二人の間の子供を守りたいという思い

ー俺の弟が この領域を脱走した弟が全ての始まりだったー

そうアスザールは語ったのだった

長老達により外の世界を知るようにと領域を出ることを許可されたアスザールは レイダンドの国でランデールと友となった
力を使わずに普通の人間として生きること
それを学ぶのだと長老達はアスザールに教えた

アスザールの弟のログサールはそんな兄を羨み その領域の数多の縛りも嫌で脱走し・・・・・
密かにレイダンド国へ潜入し名高き美女クリスタベルに恋した
早くからランデール王を愛していたクリスタベルにその想いは届かずークリスタベルはランデール王の妃となった

横恋慕の勝手な深い恨み抱きしログサールは名を変えてアクシナティ国の女好き皇帝コキンタクに近づきレイダンド王妃クリスタベルの美しさと魅力とを吹き込む
男なら誰もが欲しがるー手に入れるべき美女なのだと

レイダンドに対し その持つ力でも攻撃を加えようとしたログサールだが・・・ランデール王の傍にはアスザールがおり対抗した
防御に成功したもののアスザールはログサールの悪意と妄執と野心を知った

全ての始まりは恋 間違った恋ゆえに・・・
「クリスタベル妃は素晴らしいお方だった 恋し夢見ずにはいられない」
アスザールの中にも秘めたる想いはあったがー
それにも増してランデール王という人間への尊敬と友情と・・・・・

アスザールは成長するアスタリオンの姿に その中にランデールとクリスタベルを見ていた
時に浮かび上がる二人の面影
ランデール王の片鱗 クリスタベルの美しさ
更にアスタリオンには領域の人間の「力」の並外れた素質まであった

血の繋がりなどないのに 同じ力もある
アスザールにはアスタリオンは自分の子のようにも思えた
だから魔法使いとしての名前「アスタリオン」を与えた

「わたしは 俺は幸せだった 
アスタリオン お前は真の名前を人に知られてはならない
お前を害そうと思う者に知られたら その力は半減する」

「力」には限界がある
限界を超えて術を使えば 力の消滅どころか自身の消滅もあり得る

ログサールの消息を追い調べていたアスザール
いつかカタをつける為に・・・アスザールは死んで・・・
それは{し遺した仕事}となった

ログサールとコキンタクがレイダンド国への野望を忘れておらず攻撃を加えてきたならば
それにケリをつけるのは自分の仕事だ
その為に自分は生まれてきたのかもしれない
もうこの世にいない両親の代わりに この国を守る為に・・・・・

ーこの僕がやるしかないのだー

「恋する魔法使い」-5-

2017-03-21 14:21:59 | 自作の小説
ーこれが レイダンドの国かー
寝不足気味の頭に吹く風を心地よく感じながら 歌うたいのベルナーは目を閉じている
城のある丘からは遥かに海も見える

昨夜遅くー寝る部屋まで案内してくれたロズモンド
寝具にきちんと陽(ひ)の匂いがするちゃんとした物が用意されていること
目覚めた時の飲み物の確認までしてくれてから
「ゆっくりお休みになれますようにー」
彼の頼みも引き受けてくれて去っていった

あの優しい声がまだ耳の奥に残っている

ロズモンドはすぐさま手紙を渡してくれたようだ
ベルナーの部屋に直接 メリサンドを従えたレイダンド王のディスタンが訪れたのだから

ーお前の顔を見れば その姿を見れば その歌声を聞けば・・・・・あの方々を知る人間であれば・・・・
お前が誰かは分かる お前が本当は誰なのか
それほどにお前は苦しいほどに彷彿とさせる
あの懐かしい方々 二度と会えぬ方々ー

ディスタン王は言った「君のご両親の名前が知りたい」

ディスタン王が受け取った手紙は 砂漠の向こうの領域の長老からのもの
手紙の他には ディスタン王が忘れられない品が入っていた


レイダンドのランデール
その名を聞くだけで敵は縮み上がった
その兄ランデールが不慮の死を遂げて急遽王となったディスタンは行方不明のランデールの息子を探し続けていた

美しいクリスタベル
ランデールの親友で片腕でありながらークリスタベルへの恋情に悩んだアスザール
遂に彼はランデールとクリスタベルの子供を盗んで逃げた

何故かランデールはアスザールを追おうとはせず
その子の行方も探さなかったが
クリスタベルは悲嘆にくれた


「この手紙に入っている これは・・・・・レイダンドの紋章の入ったこの指輪は 見間違えることはない
わたしが兄に贈ったものだ
ランデールは産まれた子供にお守りだーと

わたしは一度も自分がこの国の王だと思ったことはない
いつか見つけて・・・その子に渡すまで預かっているつもりだった」


「ディスタン様 あなた様は立派な王です」
歌うたいのベルナーはディスタン王の前に膝をつく

「砂漠の向こうの領域でアスザールは魔法使いに戻りました
僕はアスザールの養い子
魔法使いのアスタリオンとして育ちました

アスザールは死ぬ前に僕の身の上についても教えてくれました

戦いに敗れはしたもののアクシナティのコキンタクはランデールとその子供の命も狙っていてー

アスザールは僕の命を守る為にー汚名を着てーコキンタクの手が及ばぬ場所へ

アスザールは全ての名誉を捨てました
僕を無事に育てる為だけにー


魔法使いアスタリオンのこの僕が・・・歌うたいのベルナーと名乗りレイダンドの国を訪れたのはー
アクシナティがこの国を攻撃するーとの情報が入ったからです
あの領域には様々な情報が集まります

微力ながらこの国を守る為の戦力として 魔法使いアスタリオンとして参りました

何事も起きなければ 僕はただ歌うたいのベルナーとして去っていきます」

「しかし! しかし!」

「ディスタン王 あなたは立派なレイダンドの王です
長く平和に国を治めてこられました

僕は・・・・・父や母やアスザールの愛した国を守りたい
そして叔父上や従妹達にも会ってみたかった

夢はかないました

僕の願いはこの国の平和と皆様の幸福」


ぐおぅ・・・・声にならない叫び声と共にディスタン王は 歌うたいのベルナーで魔法使いのアスタリオンの体を抱きしめた 力いっぱい
「その髪の色と瞳 面差しはクリスタベルに・・・・・
ただ体つきや声は・・・兄に ランデールにそっくりだ
兄もいい声をしていた
戦いの前の兄の言葉は兵士を鼓舞し雄々しく力づけた

たくみに楽器を扱い深い声で歌い


わたしは 兄が大好きだった

何年も何年もお前を捜した
兄の一人息子を
ずっと探していたんだよ」


「有難うございます
まだ僕の身の上については秘密にしておいてください
魔法使いということも 何かの切り札として秘密にしておきたいんです

女官長メリサンド様 何卒よろしくお願い致します」


それからベルナーについてはディスタン王の直属の密偵ということで この国を守る立場の人間にもベルナーは紹介された

あれこれ決めることもあり そこそこには寝たはずなのに動いていないと眠くなってくる


「昨夜というか明け方まで動いておられたようですが お体を壊されますよ」
ふわさっとベルナーの上に布が落ちてきた

「メリサンド女官長・・・すみません」有難く布にくるまりながら「ああ・・・陽(ひ)の匂いだ
部屋の寝具も気持ち良くて よく疲れが取れました 有難うございます」

「お客様に気持ちよく休んで頂けるように目を配るのも女官の仕事ですから」
こともなげなメリサンド

「あなたこそ 休まれたのですか」

「女官長ともなるとね 少しは下の者に仕事を任せられるんです
わたしにはロズモンドもおりますしねー」

「ロズモンドは特別な?」

「ああ・・・娘ですから」メリサンドは目元を和ませた「わたしだって恋をしたことはあるんです
うまくいきませんでしたけれど
あの娘(こ)が居たから・・・リザヴェート様の乳母となり現在につながっています」

「だから・・・あれこれ 動いておられる」

くすりとメリサンドは笑う さっきも四人の姫君にとっちめられないうちに席を外してきたのだ
「気が付いていましたか・・・・・わたしの恋はうまくいかなかったけれど姫様方には幸せになっていただきたいのです
普通に出会って恋して愛し合う
それが理想ではあるのだけれど
姫様方にはお立場がある
そのお立場に似つかわしい・・・相応しい方と愛し合えるならば・・・・・

従者を見ていると ある程度ついている人間のことはわかりますしね
従者をどう扱っているか 従者がどう仕えているのか」


「僕にはあなたのうまくいかなかった恋の相手には何か理由があったように思えます
レイダンドのお姫様達はお幸せだ
あなたのような方が傍におられて」

「それでもおられない母上様の代わりにはなれませんけれどね」

「どういう恋であったのか 尋ねるのは失礼なことでしょうか」


「随分 昔の話です わたしは女官長をしていた母の下で女官をする話になっていました
三日三晩踊り続けるお祭りがあって・・・
そこであの方に出会いました
黒髪に・・・・・ロズモンドと同じ金色に緑きらめく不思議な瞳
その強い眼差しに わたしは一目で恋に落ちました

祭りが終われば お城へ 母の元へ行かねばならない

束の間の・・・この時だけの恋
祭りが終われば終わる恋

覚悟をしていたつもりでーわたしはあの方から離れられず
重要な仕事があるというあの方も 一度故郷へ帰らねばならず

わたし達は約束をしたのです
会う場所と時間とを決めて

でも約束の場所にわたしは行けませんでした

母に閉じ込められて

お腹にはロズモンドがいて・・・・強情張って わたしは産みました

ー邪魔するならお腹の子供ごと死んでやる!-

産んだわたしはリザヴェート姫の乳母となることとなりーお城にー

それっきりです

あの方が約束の場所に来たのか 来なかったのか

長い月日が経ちました
わたしのことは忘れてしまったことでしょう

ただの若気の至りーとして」

「でもメリサンド女官長 あなたは」

「わたしにとっては ただ一度の ただ一つの恋です
ロズモンドはあの方と同じ瞳を持っているのですもの」
指先で浮かんだ涙をぬぐうと微笑んで明るく言う「だからこそ 姫様方にもロズモンドにも
幸せな恋を・・・と願ってしまうのです」


その後 きびきびした態度に戻り「さぁ昔話はおしまい
姫様方は剣も弓矢も 実は揃ってお得意です
このわたしも鍛えてさしあげましたからー」

「メリサンド女官長?!」

「ロズモンドは若い頃のわたしにとっても似ています
母親が閉じ込めておかずにはいられないはねっ返りでしたもの
わたしがロズモンドの父親と出会ったきっかけも祭りの弓矢での的当てだったんです

これで・・・ね 小さな頃は叱られても叱られても男の子達を子分にして野原を駆けまわっておりました
娘には内緒ですよ」

ひどくいたずらっぽく笑うメリサンド女官長
男が一目で恋に落ちるほど さぞや魅力的な少女だったのだろうーとベルナーは思う


「恋する魔法使い」-4-

2017-03-20 10:39:19 | 自作の小説
一夜明けて ディスタン王の意向で少しでも親睦を深める為に やや遅い朝食を皆が同じ部屋で摂ることになっている

身支度を整えた王子たちはエスコートする姫を待つ部屋に女官長のメリサンドに案内された
「姫様方は じきに参られます 
どうぞこちらで景色でも眺めて暫くお待ち下さいませ」
「忝い お世話をかける」とアンドール

微笑み一礼し引き下がるメリサンド

バルコニーに出て外を眺めてリトアール「なるほど 良い景色だ しかし眠い」と欠伸をする
肩を並べるように立つロブレインは目ざとく庭を歩く歌うたいに目を止める「寝るなよーああ 歌うたいだ 遠目でも目立つな」

「なんだか散歩というより周囲を見回っているようだ」とダンスタン

アンドールも呟く「あの見かけと言い ただの歌うたいと思えない人間ではあるな 実に・・・興味深い」

そんなアンドールにリトアールは明るく尋ねる
「それでどうなのアンドール兄上 マルレーネ姫はとても素晴らしい女性に見えるけれど」
ロブレインものっかる「穏やかで優し気で出しゃばらず控えめで実に実に申し分ない深い美しさがある」
答えないかとも思えたアンドールだが まるで心のうちにマルレーネの姿を浮かべているかのように語った
「幾重にも取り巻く高い城壁・・・その奥にある真実の心
まさに難攻不落ー攻めあぐねるー」


そこに声が聞こえてきた


隣の窓から声は流れてくるようだった


それはー
リザヴェートの声だとダンスタンにはすぐに分かった 


「-わたしは ただ誠実に向き合うだけだわ・・・恋の駆け引きとか分からないしー
わたしに一番大切なのは向き合う人間が信じられる相手であるのかどうか
そこから始めるしかできない」

手鏡で髪を確かめていたマルレーネはリザヴェートに寄り添う「その真っ直ぐさはあなたの魅力だと思うわ
羨ましいこと・・・
義務とか立場とか どう振る舞うべきかーそんな事ばかり考えて・・・
素直に欲しいものを欲しいとも好きなものを好きとも言えなくなってしまっててー」

髪を梳いていたエルディーヌも姉に寄り添う
「お姉様は長女の責任に囚われて妹達を庇うように育ってこられたからー
父上はお優しいけれど あの通りのん気だし」

「メリサンドとロズモンドは随分わたし達の慰めになったわ」とアシュレイン


エルディーヌも微笑む「ええ ロズモンドはもう一人のあたくしの妹のよう」

「わたしよりも エルディーヌお姉様はロズモンドと気が合っておられるもの
ところでお姉様はロブレイン様をどう思われているの」とリザヴェート

聞いちゃったわねえーという表情のマルレーネ 
恐々エルディーヌを見るアシュレイン

そしてエルディーヌは手の中の櫛を折らんばかりの勢いで握り込む
「あんな暗い冷たい眼をした男はね 隠し子の1ダースも居そうな気がするわ」


(この時 隣の部屋では片手で口を押え 片手で腹を押えたリトアールが笑い死にそうになっていた)

窘めるようにマルレーネ「確かに華麗な容姿のお方だけれどーそれはエルディーヌ あなたもそうだわ
見かけだけを言うのなら あなたもとても華やかよ」

エルディーヌはいじける「あたくしはおとなしく奥方でございますーなんておさまりかえっていられないわ
縫物だって自分の指を針の穴ばかりにするし 刺繍は布がひきつるばかり」

「でもエルディーヌお姉様はとても強いもの 剣だって弓だって上手だわ」
頑張って励まそうとするアシュレインだけれど
エルディーヌは重ねる「強いなんてね 美徳じゃないのよ」


そこにロズモンドが入ってきた「姫様方 お迎えに参りました お仕度はよろしいでしょうか」

振り返ってリザヴェート「あら おはようロズモンド 昨夜は懐かしい歌を歌っていたわね」

応えてロズモンド「歌うたいさんに教えて歌ってもらうように言われましたものですからーお耳汚しでした」

「ううん」と微笑むアシュレイン「おかげで とてもよく眠れたわ」

エルディーヌも明るく笑う「とても素晴らしい声の歌うたいね ひどく美しいし」


楽しい会話はメリサンドの登場で終る
「ロズモンド あなたはお迎えに上がって何をぐずぐずしているのです
そんなことでは一人前の女官と申せませんよ
王子様方は既に先程から お隣のお部屋でずうっと!お待ちでございます」

こ この!とハタと気が付いたエルディーヌ「と・・・隣の間ですって! やったわねメリサンド」

「何の事でございましょう お食事が冷めてしまいます」ととぼけるメリサンド

小声でエルディーヌ「どんどん くえないバーサンになっていくのだから」

メリサンド「聞こえておりますよ」



さて ここで少し時間を戻しましょう
レイダンド国とブロディル国のある大陸と海を隔ててアクシナティという国があります
そこの皇帝コキンタクは かつてレイダンド国の先代王ランデールと戦って敗北
再度 力を貯めて侵略の時を執念深く窺っておりました
各地を略奪しては数多の美女を侍らせる色ボケ欲ボケ皇帝コキンタク
そうした皇帝に皇后のシュランサイは愛情を持ってはおりません
皇女ファナクの母親としての立場と帝国の皇后としての権力こそが大切

武大臣のモウトウゲンも内大臣のボクグジンの両大臣ともが 事あらば皇帝コキンタクを斃し その座にとって代わろうと狙っております

虐げられている民の事を考えている人間は 権力の座にはおりません

更に他国者でありながら将軍となったリシュウライー彼もまた野心家なのでございます
レイダンド国を征服する事に一番の執着を見せているのは この男かもしれません

美女好みの淫乱多情な皇帝コキンタクは かつてレイダンド国王妃クリスタベルの絶世の美女との評判に略奪を試みたのでありました
けれど結果は大惨敗でした
せめてもの腹癒せに卑劣なる暗殺部隊を送り出し・・・ランデール王は遂に毒矢に斃れました
ランデール王の後を継いだディスタン王は隙なく国を守られました
ランデール王によってズタボロとなったアクシナティ国は立ち直るまでに長い時を要してー

レイダンド国の美しい四人の姫の事を耳にして皇帝コキンタクの邪心が燃え上がります
捲土重来・報復の炎が赤々とー
なあんてしつこいのでしょう
美しい美しい四人の姫 中でもクリスタベル王妃と生き写しとも言われるエルディーヌ姫

クリスタベル王妃とエルディーヌ姫の母親のミュゼラン王妃は姉妹でもありました
伯母と姪であるのだから似ているというのも頷けます

昔と違いレイダンド国には名高い手強そうな将軍もおりません

いよいよ海の向こうにもこのアクシナティ帝国を拡げるのだ
この海も全て海の向こうの大陸さえ このアクシナティ帝国皇帝コキンタクのものだーと
愚かなごうつくばりは思い上がります
あれもこれも全てわが物
底無し欲張りの大阿呆は何時の世にも迷惑にも居るのです
自分ばかりに正義があると思い込む我欲ばかりの醜悪な生き物

リシュウライ将軍はコキンタク皇帝をけしかけます
将軍の野望の掌の上で欲ボケ馬鹿皇帝コキンタクは踊ります

レイダンド国の姫達の絵姿にさえ涎を垂らさんばかりの皇帝コキンタクなのでありました

皇后シュランサイは自分に忠実な者ばかりがアクシナティ帝国の都に残れるように画策致します

リシュウライ将軍は言葉巧みにファナク皇女を誘いました
海の向こうの美しい国を観たくはないかと
ーかくして戦いにファナク皇女も同行を願うようになりー
皇后シュランサイは案じるもー
皇帝コキンタクは自分達が負けることはないとの大言壮語

「良いですか もしももしもファナクに何かあれば妾(わらわ)は許しませんよ こればかりは譲れません
お覚悟よろしいですね」
皇后シュランサイは厳しい言葉を皇帝コキンタクに向けました
そうしてファナク皇女には愛情溢れる言葉をかけたのです
「良いですか あなたはこの大帝国の後を継ぐ大切な大切な身です
必ず無事に 生きて・・・戻ってくるのですよ
大切な大切な妾の娘」

皇后シュランサイは娘のファナクをこの戦いに誘った将軍リシュウライには怨恨(うら)みの気持を燃やしております
「余計なことを吹き込みおって!信用ならぬ他国者めが!」

かくしてアクシナティの都を離れ出港してから10日余り・・・彼等は遂にレイダンド国へ達そうとしておりました



「恋する魔法使い」-3-

2017-03-18 14:13:04 | 自作の小説
ベルナーの声に注意を引かれた人間は多かった

デイスタン王とメリサンドもベルナーの姿と振舞いに何かこうもどかしい思いを抱いていた

ダンスタンは苦笑いを浮かべる「やばいなあ・・・」

リザヴェートが「どうされました?」と問いかけると ダンスタンは顎をさすりながら返事する

「いや あの声 こんな僕ですら恋したくなりますよ それにあの歌い手はひどく品がある 
何処かの王子か王様と言ってもとおりそうだ」

リザヴェートは遠くの歌うたいとダンスタンを見比べた

淡い金の髪 青い瞳 姉のアシュレインなら本の絵姿そのままの王子様と言うだろうか
たやさない優しい笑顔

「わたしには 恋はわかりません
リボンや花が生きることの何の役に立つのかとも」

ダンスタンは自分のよく似たリザヴェートの陽(ひ)に透ける金色の髪と春の空のような水色の瞳を見る
「そんな綺麗な目をした乙女なのに 完全なる無垢・・・
あなたはまだ目覚めていない眠り姫のように僕には思える
リボンや花は あなたをより美しく愛おしく装ってくれる
無くてもいいが あればもっといい」

ここで少し笑った「僕は結構 意地が悪いんだ 僕の言葉を全部 信じてはいけないよ」

ダンスタンは真っ直ぐに自分を見つめて来るリザヴェートに照れたのだった

その耳にベルナーの歌う恋歌が聞こえてくる

ーさぁ 君 恋するのは今だ! この瞬間(とき)を逃すな 
過ぎた時間(とき)は二度と戻ってはくれない
乙女の腕を逃がしてはいけない
自分の心を見失ってはいけない
それはー身の破滅 魂(こころ)の死

この瞬間(とき)を逃すな
さぁ 君 恋するのは今だ!-

歌声を聞きながら 実にやばい・・・とダンスタンは思っていた

恋に落ちてしまいそうだ いや もう?!
まさかー

どう見てもエルディーヌとのやりとりは言い争っているようにしか見えないのに・・・内心ロブレインは焦っていた

ー確かに美しい姫だが・・・・・
豪華な黄金の巻き毛が豊かに波打つ 瞳は青とも緑ともつかぬ深い海のような輝きを放ちー
つんとした唇からは鋭い言葉しか出ないというのに

「その程度で腕自慢?」

ずきずきと言葉で心を突き刺してくる

まさか!?

おさえつけて強引にキスで黙らせたい
馬鹿な!
惚れたら負けだ
惚れてやるものか こんな こんな生意気な女に!

「女の腕を折る かような武は持たぬ」

ーああ もう その女如きにーって態度が嫌だわ 女ってだけで馬鹿にしているんだわ
その容姿(見かけ)ですもの さぞかし女性を泣かせてきたのでしょうよ
だからって あたくしは夢中になどなってさしあげない
ひれ伏してなどあげないわ

目をつりあげて睨みつけてくるエルディーヌを どんな表情をしても美しいと思ってしまっているロブレイン


そっとご主人様の様子をうかがいに行ったアリストは頭を抱える
「なんて おっかないやり取りをしているんだか」


ロブレインの前では大抵の女達は自分から身を差し出す 彼はその藍色の瞳で見つめるだけでいい



ーわたしが求めるのは 心の底から求めるのは わたしだけを見つめ 愛してくれる人
共に過ごしてくれる人

出逢う為に あなたと出逢う為に 長い事 旅をしてきた

愛しい人よ
巡り合えたこの時間を無駄にしないでおくれ

あなたを愛している
愛している

どうか わたしの腕の中に この胸に飛び込んできておくれ

わたしは何も持たない
あなたを愛する心のほかにはー


ベルナーの歌声が人々の胸の中にも落ちていく


その声 なんという稀有な歌い手だろうか



リトアールは溜息を吐く

「すみません 私ばかり話しまして・・・・・退屈されましたよね
いつも妹からさえ叱られておりますのに・・・」
しょんぼりするアシュレインにリトアールはおどけて目をぐるぐるしてみせる
「女きょうだいがいないので あなたの話はとても楽しいです
僕は退屈するとすぐに寝る人間なのですがーちゃんと起きているでしょう?
ぼくもあの歌うたいみたいに歌えたらいいなって思ったんです
ケンカも歌でしたら・・・面白いだろうしね」

「あら!」
可憐な花のようにアシュレインが笑う
艶やかな黒髪にスミレ色の瞳のアシュレイン
結婚とか妻とか まだピンと来ないリトアールだが・・・
何しろ会ったばかりだしー守りたいな・・・この笑顔を・・・
いや 笑っている顔を見ていたいなと思い始めている

ほのぼのとしているリトアールとアシュレイン その様子を遠目に見てほっとしているゲイルド


が!ロブレインとエルディーヌは かなり激しい
バシン!遂にエルディーヌがロブレインをひっぱたいたのだ
第二撃を加えようとしたエルディーヌの手を掴んでロブレイン「今度叩いたら キスしますよ」

「なんて おっしゃいまして」ひどく冷たい声でエルディーヌが問いかける

膝を折って一礼しロブレインが答える「キスしてほしいのなら 殴りなさい どうぞ」

「世界中の人間が3万回死に絶えたって ごめんです」
くるりと向きを変えたエルディーヌはロズモンドを呼んだ「お願い あたくしがそこの傲岸無礼にして愚劣極まる自信過剰の首を刎ねないうちに
連れだしてくれる
ひどく!頭痛がするから これで退出致します」

「まぁ お可哀想に 姫様 ずうっと頭痛を堪えておられたのですね なんてお気の毒
ささ 少し休んでまいりましょう」

「ええロズモンド 場所を変えればおさまると思うわ」
エルディーヌとロズモンドは共犯者めいた笑みを浮かべる
刺繍や縫物よりも弓矢や剣の練習が大好きなはねっ返り二人組であった


一人残されて肩を竦めているロブレインの様子を眺めてアンドールがマルレーネに話しかける
「弟は ひどくあなたの妹姫に心惹かれているようだ」

「エルディーヌはちょっと癇癪持ちですけれど その実 とても優しくて傷つきやすいところもありますの
すみません 御無礼をして」

「弟にはいい薬です
弟は気になる相手にはつっかかるところがあるからー妹姫を怒らせたのは逆にいい兆候だと思います」

アンドールはマルレーネと語り合いながらも弟たちの様子をそれとなく気にしていて それはマルレーネも同じだった
自分達だけでなく絶えず周囲に目を配る
鷹揚に構えているように見せて



ー恋のように夜も深まる その想いにこの身は包まれる
ゆるやかに 強く 深く

あなたへの想いに身動きすらできなくなる
わたしを自由にできるのは・・・・・
あなただけ ただ あなた一人ー


客たちから乞われ ベルナーは歌い続ける
宴がお開きとなり 一息ついたベルナーのもとへロズモンドが近付いてきた

ロズモンドは盆の上に飲み物や食べ物を載せていた「よろしければ いかがですか」
少し驚いた様子のベルナーに「情け深き有難きディスタン王からでございます」とロズモンドは言葉を続ける
布で区切り小部屋を拵えた場所へベルナーを案内した
開け放った窓のバルコニーから外の新鮮な空気が入ってくる
卓上に盆を置くと ロズモンドはまた口を開いた
「女官長メリサンド様がー今宵は実に見事な歌に感じいりましたーとのお言葉でございます
つきましては休む場所を案じておられます」

「はい」とベルナーが手を上げる
「見事な女官ぶりだけど もっと肩の力を抜いて 僕に合わせた言い回しをしてくれないかな」

「言い回し・・・ね 私が合わせて・・・ね 」

「そうしてくれたら 有難きしあわせ」
席について座ろうとして立ったままのロズモンドを気にするベルナー「君は食べないの 座らないの」

「私は先程エルディーヌ姫と少し頂きましたので」そう言いながらベルナーと向かい合わせの椅子に腰かける
「もしもきちんとした寝場所が無いのならーひと部屋用意があります」

「有難いな その辺で横になるつもりだった」

それは自分が嫌だと何故かロズモンドは思った
浮かれ女達がベルナーほどのいい男を放っておくとは思えない
好みの男には夜這いをかけたり自分の部屋にひきずりこむ女もいる
朝 寝乱れた姿で男にしなだれかかる女の姿を見回りの時に見たことも幾度かある

心の中でぶるんとロズモンドは首を振る
緊張するとなる固い言葉遣いのままロズモンドは言った「代わりといえば何ですが お願いがあります」

「君が 僕に? 何だろ・・・」

「いえ女官長のメリサンド様から・・・先代の王を想って先代の王の王妃が作られた歌があります
逆に先代の王がその王妃を想い作られた歌も
あなたの声を見込んで 歌ってほしいとディスタン王が思われたそうです」

「どんな?」

「私は・・・」ここで漸くロズモンドは普段の言葉遣いに完全に戻った
「私は歌が得意ではないんだが これはすごく好きな歌なんだ
子守歌がわりに母が歌ってくれた
ベルナーのようにはうまく歌えないがー私が歌うのを聞いて覚えてほしい」

「楽しみだ・・・」
自分の声とは違うロズモンドの優しい声が響く
いつかベルナーは楽器を奏で 声を合わせた
愛し合う者同士のように二人の声が重なる





「恋する魔法使い」-2-

2017-03-17 20:02:06 | 自作の小説
城は外壁 中壁 奥を守る壁と三重の壁で守られている

これはブロディル国も似た造りとなっている
この二つの国は同じ海に面しており互いに助け合ってきた

内陸部の奥は沙漠に隔てられさほど大きくない特殊な地域とつながっている

ある理由があって並みの人間はその特殊な地域には辿り着けない

四人の王子がレイダンド王の城に到着した日 祝いの意味で外壁の内側の前庭までは開放された

旅の疲れを取るようにとそれぞれの部屋に案内され入浴をすませ着替える

暢気者の三男リトアールの従者のゲイルドは焦っていた
「他の御兄弟方は皆様着替えを終わられております 寝てはだめです リトアール様」

「旅は疲れた」

「ああ もう!立っているだけでいいのです 椅子に座って眠りこけてもいいですから とにかくお出ましになって下さい
リトアール様は身なりをととのえられたらーそれなりの威厳もあるお方なのですから!」

「威厳はアンドール 見かけのよさはブライ(ロブレイン)に 賢さはダンスタンに任せた」
無理矢理に髪をととのえられながら 未練がましく寝台を見るリトアール
「寝ちゃダメ?」

ゲイルドは精一杯恐い顔を作る「絶対に駄目です 僕が王妃様に殺されます くれぐれもと王妃様じきじきに頼んで下さったのです
ーリトアール あのコはいいコなのだけど 少し礼儀作法やしきたりを無視していけないわ
わたくしは可愛い坊やのリトアールが落ち着く姿を見たいのよー
僕は命に代えてもリトアール様にまとまっていただきます!」

「ゲイルド たぶん母上は他の兄弟の従者にも言っていると思うよ
とにかく孫を抱きたいんだから
なんでそんなにーおばあちゃんーと呼ばれるようになりたいんだか」

ぶつぶつ言いながら どうやらみられる格好になったリトアールが部屋を出ると 兄弟達が待っていた
悪戯っぽい顔でダンスタン「さすがに寝なかったんだ」

四人の王子が大広間へ姿を現すと レイダンドの国王ディスタンと四人の姫君に紹介される

上から順番の雑な組み合わせで最初は踊ることとなった

アンドールはマルレーネの手を取る

ロブレインはエルディーヌ

リトアールはアシュレイン

ダンスタンはリザヴェートと踊る

うまくダンスまでにこぎつけて四人の王子の従者達はほっとしている

「ああしていると王子にしか見えないんだけどなあ」溜息つくゲイルド

「いやいやリトアール様はおおらかだからいいぞ」ロブレイン付きのアリストも溜息

「それぞれに苦労があるってことさ」とダンスタン付きのオライス

「でも どの方も素晴らしい方々だ お仕え甲斐がある」とアンドール付きのスタイン


あれだけ嫌がったわりには眠りもせずリトアールは優しくアシュレインの話を聞いていた

ダンスタンはいつものように如才ない
リザヴェートの言葉に ちょっと面白がるような表情を浮かべている

ロブレインとエルディーヌは何か激しい言葉の応酬をしているようだがー

一見穏やかに見えるアンドールとマルレーネのやりとりは 互いの力を見切ろうと 推し量ろうとしているようでもあった
無作法になることなくギリギリのところで
「ブロディルは美しい国だとかー」

「そう あなたの瞳のような藍色のしっとりした夜 その肌のように咲く白い花がある
一度見れば心を捕えて離さない・・・」

「夜の花は 明けて見ればかすんで褪せて見えましょう」

「賢い人だ あなたの心は言葉ではとらえられないのだろうか」
静かな微笑を返すマルレーネ
敢えて言葉は返さずに

アンドールも最初から「口説き」が成功するとは思っていない
やりとりを愉しみたい男でもあったから


そんな様子を面白そうに魔法使いは見ている
面倒だから 暫くは歌うたいのベルナーと呼んでいましょう

ベルナーは魚をくれた女官のロズモンドを捜していた
長い髪を風に揺らせ陽の匂いをさせていた娘

その自由な娘がどんな女官となっているか

彼は最初の歌はロズモンドに向かって歌うつもりでいた


ーうるわしき女性(ひと)よ・・・
緑輝く野に在りて さらに煌めき増す女性(ひと)よ

その瞳 深く我を貫き その姿 我が心を射る


さぁ僕に この僕に君を愛させておくれ
その自由な心を僕に向けておくれ

その影を崇めよう

あなたの微笑みの為に僕は死のう

だから振り向いておくれ
笑っておくれ

眩しき魂持つ女性(ひと)よ

命のありったけで僕はあなたを愛したい

どうか許しておくれ
その柔らかな唇に触れることをー



ベルナーの歌声は ロズモンドの耳に届いた
声の主の方へ ロズモンドは視線を投げる


女官姿のロズモンドが自分の姿を認め気が付いて近寄ってくると ベルナーはロズモンドに微笑みかけた
「やぁ しちめんどうな髪形似合ってるよ」

微かな戸惑いを瞳に浮かべ ロズモンドは答える
「これはー巻きつけた布でごまかしたー基本 三つ編みを繰り返して・・・たたんでいるだけだ」
人懐っこい笑みを浮かべているベルナー
初めて会った時から いつも穏やかな優しい目でロズモンドを見つめてくる
破壊力抜群の美しい容姿の自覚が無いのではーと思えてくる

若い娘には「目に毒」な男なのだった

「さっきの歌は君に捧げた 気が付いてくれて嬉しいよ」

「そんな事ばかり言っていると 誤解されて今にひどい目にあうぞ」

「僕はしがなき旅の歌うたい 誰もマトモには見てくれないよ」

「そんな事は・・・・」

「いいんだ 何処の馬の骨とも知れぬ男にわざわざ魚を焼いてくれた その優しさ胸に沁みたよ 有難う」

そこに周囲の人間から声がかかった
「歌うたい いい声だ 今度は賑やかなものをヤってくれないか」

声の方へ振り向き「かしこまりました」とベルナー

賑やかに楽器をかき鳴らし始める

ーさぁ みんな 今夜は踊ろう
美しい月が出ている 星の光浴び
みんなで踊ろう しあわせな夜だから

さぁ みんな 飲んで踊ろう
月と星とが輝く夜にー 




「恋する魔法使い」-1-

2017-03-16 21:32:24 | 自作の小説


四人の王子がおりました
四人の王女がおりました

それゆえに この物語は始まるのです

いいえ それより ずっと昔に始まっていたのかもしれません

大陸の海に面した国二つ 先祖の代の何処かで血のつながった国ゆえに その平和は保たれておりました
レイダンドの国の先王ランデールは勇名高く 王妃クリスタベルは美しく
されど好事魔多し
二人の間の子供はさらわれて行方不明に
哀しみ嘆きのうちにクリスタベルは病死して ランデール王は戦場で受けた傷がもとで落命

ランデール王の弟ディスタンがレイダンドの王となり 妃のミュゼランとの間には四人の娘が生まれました
ただ王妃ミュゼランは末娘のリザヴェートを産んで間もなく亡くなりました


それから月日は流れて 四人の姫はそれぞれ美しく成長しました

いつも落ち着いており聡明な一の姫 マルレーネ

華やかな美女でありながら「猛々しき姫」と呼ばれる二の姫 エルディーヌ

お人形のように大きな瞳の夢見がちな乙女 三の姫 アシュレィン

すぐ上の姉姫が余りにも浮世離れしているものだから その反動でかひどく現実的な四の姫 リザヴェート

この姫達を大切に慈しんで育てたのはリザヴェートの乳母もした女官長のメリサンド
メリサンドの悩みの種は リザヴェートと乳姉妹になる娘のロズモンド

姫達の護衛としての腕を磨きすぎてー女官というより武官に近い
「そんなことでは一人前の女官とは申せません」
と元気過ぎるロズモンドを叱る言葉が口癖のようになってしまっているメリサンドだった


ディスタン王は跡継ぎの王子がいないことから 四人の王子がいるブロディル国に縁談を申し入れた

互いに四人ずつの子供達

同盟を強める為にも

かくして四人の王子は旅をする

一見穏やかだが中々食えないところもあり女性の扱いにも長ける第一王子 アンドール

見た目は優男の超絶美男だが兄弟の中では一番好戦的な第二王子 ロブレイン

おおらか~~~な性格の第三王子 リトアール

誰にでも優しいけれど その実 何を考えているかわからない第四王子のダンスタン

それぞれ髪の色も瞳の色も 身長さえ違い ばらばらの外見なのに 一緒にいるとやはり兄弟な四人の若者達は 

「もう誰でもいいから 一人でもいいから いい加減にまとまって!」と悲鳴のような母親の叫びに送られて レイダンドへ向かった


美しい四人の姫の噂は海を越えた国にも届いていた
平和で豊かな国レイダンド


そして強いランデール王は・・・もういない
野望の前には荒れる海も何の障害にもならない


恋と戦いと 王子様とお姫様

となれば 昔々のお話には魔法使いもいなくては

主役がいなくては お話は進みません

では主役登場

この魔法使い 魔法使いゆえに本当の名前は明かせません
レイダンドには歌うたいのベルナーとしてやって来ます

輝く金の髪に青い瞳持つ美丈夫です

本人の望みかはともかくも魔法使いには秘密が付き物でもあるのです

彼は川辺で落ちていた弓を拾い こうひっぱろうとしましたが・・・・・

背後から声がしました
「それは 私の弓だ 弓もひけないのか」

振り返った魔法使いが見たのはー

緑色を帯びた不思議な輝き放つ栗色の髪と金色の中に緑色が弾けて輝く瞳の娘
その娘は魔法使いに こうも言った

「見かけない顔だな 何者だ」

「これは!失礼いたしました 歌うたいのベルナーと申します」
魔法使いは優雅に膝を折って挨拶する

「祝い事がある噂に色々な者が来ているらしい
わたしは女官のロズモンド
この国を楽しまれよ」


そのまま立ち去ろうとしたロズモンドだが どういう気まぐれか ベルナーに声をかけた

「長い旅をしてきたのであれば 腹も減っていよう ベルナーとやら魚は嫌いか?」

腰に提げていた袋から 川で捕まえた魚を取りだすと器用に石を並べて焼き始める

様子がひどく手馴れている
それは気取った女官らしくなかった

軽い驚きを魔法使いは覚えている

「ああ 私は変わり者なんだ いつも母から怒られている
ややこしい意味もわからん作法より こうしている方が落ち着く」

焼き上がった魚を魔法使いに渡すと「では これで失礼する これからこの束ねただけの髪をしちめんどうな形に結い上げねばならんのだ」

男言葉を使うロズモンドの女官ぶりを美形の魔法使いは見たくなった


王子を招いての祝賀会で芸を見せる人間を選ぶ集まりで 見事な歌声を披露した魔法使いは入城を許される



入りたいのに・・・

2017-03-16 21:13:36 | ペット
時々長男は通販で買い物をしているのだけれど

中身を取り出した後の空箱に よく瑠奈が居座っています















今日は卵を温めるように 空き箱に乗っかっていました

中に入れない大きさの箱であるのが 残念そうです

何とかして入れないか 箱の中を覗き込んでいます

遠藤周作著「沈黙」 (新潮文庫)

2017-03-15 19:44:21 | 本と雑誌
沈黙 (新潮文庫)
遠藤 周作
新潮社




島原の乱の少し後の話 キリシタン禁制の日本へ命の危険を冒して潜入したポルトガル人の司祭ロドリゴ
彼は尊敬するフェレイラ神父が棄教したことが信じられずにいた

ロドリゴ達に同行して日本へ帰国したキチジロー 
薄汚れた鼠のような男

キチジローの案内で ロドリゴ達は迫害されつつ ひそかに主を信じる人々に出会うこともできるが 裏切られる

ロドリゴを密告したキチジローだが 彼はずうっとロドリゴを追いかけて来る


踏絵を踏み 棄教したキチジローだが 一番救われたがっていたようにも思える
彼もまた神を 主を信じたかったのではなかったのか


うわべの話だけをすれば フェレイラと同じくロドリゴも転び伴天連となる
日本人名を名乗るようになり妻帯もする


彼が転ばなければー多くの信者が残酷な死を迎えることになるからー


読み手の年齢 思想によって感想は異なるだろう物語

解説は作家の佐伯彰一氏

ただいま 休憩中♪

2017-03-15 13:43:53 | 子供のこと身辺雑記
月曜日  自分の眼科

火曜日 税理士さんからの書類が午前中に届いてから 自分の側と主人の側と両方の墓掃除 出たついでに犬さん 猫さんの食糧買い込み
が!猫のトイレの砂を買い忘れるーー;


水曜日 長男が出かけてから姑の家で読経に来られるお寺さん待ち
終わってから姑の目薬をもらいに眼科医さんへ

帰り道 人間の食糧と日用雑貨の買い込み~~~~
買ってきた品を片付けてから 犬の飲み水変えて おやつとかあげつつ犬と遊ぶこと
(癒しの時間^^)

それから自分のお昼ごはん~~~

ちょっとパソコンで遊ぶ
(午後1時半くらいから)

もしもできれば少し読書(月曜日から読みかけの本を いい加減読了したい・笑)


現在パソコンで遊びながら 夕飯おかずをどうしようかも思案中~~~



青空が広がってはおりますがー 
時々 思い出したように雨が落ちて来る 
中途半端なお天気雨
少し風もあります

窓越しに見る外はあったかそうなのに

いささか妙なお天気です

希望する返事は来ないもの

2017-03-13 21:20:04 | 子供のこと身辺雑記
眼科行きだったのですが 少し時間がかかりました

光線を当てたり 目の写真をとったりー

そんな影響でしばらく目が光りを見ると乱反射するような丸い光が放射線状に見えるので

夕方に姑の家へ行く時には 必要以上に安全運転

姑の家からの帰り道 もう近くまで帰ってきていると長男から連絡が入って

帰りに買い物する予定だったけれど 変更して駅まで長男を迎えに行き「ついでに近くで食べて帰ろうか」って
言ったらー
長男が「お寿司」

ううん 私はね駅前の喫茶店とか近場のラーメン屋さんかうどん屋さんなどをイメージしていたんだけどな
なんか しんどかったし

しんどいから買い物も日延ばしにしたのにね

まあ しゃあないか 家から遠くなると言っても

車だと片道10分も変わらないし 

幸い 駐車場も空いていて車も停めやすくて 待ち時間も無しにテーブル席に座れた回転寿司屋さん






桜鯛のロール寿司を最後にして デザート(私は杏仁豆腐 長男はメロン)のつもりで注文したら
先に来たのはデザート

暫く待ってもロール寿司来ないから 先にデザート食べたらー
美味しかったけど この最後のちっちゃなロール寿司が思いのほか胃にどっしりとこたえました^^;

このひと皿が象(豚を通り越しています・笑)のもと・・・なのだわ^^;

長男は 久しぶりにお寿司が食べたかったそうな

これから長男に 何が食べたい?と聞くのは止めようかな

消えた花を惜しんで・3

2017-03-13 20:40:49 | ひとりごと
少女時代は週刊マーガレットの黄金期(呼ぶのは私だけですが^^;)だったと思っています
山本鈴美香先生「エースをねらえ!」
池田理代子先生「ベルサイユのバラ」

木原としえ(後に敏江と改名)先生の「天まであがれ!」ほか読み切りも

40年以上前なんで全部の作品は覚えておりませんが とっても充実しており毎号楽しみでした

それでも雑誌連載当時は これがアニメ化されたり実写化されるとは思ってませんでした

宝塚歌劇団が舞台化すると雑誌に記事が出た時は驚いたものです

オスカルは無理だろうと思っておりました
でも榛名由梨さんがオスカルを横に置いて その舞台化粧をしているという記事を読んだ時には ファンの気持とイメージを大切にしてくれていると嬉しかったものです

原作のイメージへの誠実さ
榛名由梨さんのオスカル

その後 繰り返し宝塚歌劇で上演されるようになる「ベルサイユのバラ」


明日海りおさんのフェルゼン 花乃まりあさんのマリー・アントワネットで台湾公演


































短時間での舞台は その昔の原作ファンからすればー
これは原作を知らない台湾の方々には理解しにくいのでは?と危ぶまれるものではあります

そんな中 演じられる方々は頑張っておられたなと

オスカルもアンドレも短い出番ながら

扮装はもう美しくてね まんま漫画の登場人物
特に柚香光さんのオスカルは メインでの物語がー舞台が観たいと思うほど 似合っておりました


ショーの宝塚幻想曲は「カリスタの海に抱かれて」でもトップの明日海りおさんの花魁!?女性姿がとても美しくて そっからの男性姿への早変わりも素晴らしく美しくて 盛りだくさんで目を惹かれた大好きな作品でした

台湾公演での花組の方々の様子を映したDVDも楽しいです


宙組から移ってきて・・・・初めての海外公演
花乃まりあさんは娘役トップとして 色々なことを乗り越えてこられたのだろうと思いながら 収録された練習風景なども繰り返し眺めております



消えた花を惜しんで・2

2017-03-13 14:57:55 | ひとりごと
「ドリアン・グレイの肖像」で著名な作家オスカー・ワイルドが19世紀末に書いた喜劇「真面目が肝心」を宝塚歌劇団が2005年に「Ernest in Love(アーネスト・イン・ラブ」のタイトルにて上演

2015年花組の花乃まりあトップ娘役お披露目公演として また2016年にも同じ花組にて再演された
























ちょっと食いしん坊で朝寝坊の貴族の青年アルジャーノン・モンクリーフ(芹香斗亜)の執事レイン(高翔みず希)は サンドイッチの為のキュウリを配達した八百屋や出入りの人間から代金を請求され「世の中 貴族がいないと困る」と随分な言い訳ですっとぼける

次に登場するのは主人公のジャック・ワージング(明日海りお)彼は恋するグウェンドレン・フェアファックス(花乃まりあ)嬢へどうプロポーズすればいいか悩んでいる
仕えるパーキンス(夕霧らい)にプロポーズの方法について尋ねるも「上流階級のことはわかりません」-と助けにはならない

求婚の方法を教えてくれる学校があればいいのにーとまで歌っている

でもパーキンスはグウェンドレンがイトコのアルジャノンを母親と訪ねる予定を聞き出し ジャックも行くだろうとグウェンドレンの侍女を通じて伝えてもらっている

ジャックは鞄に入った赤ん坊として発見された自分を養子にして育ててくれた恩人の孫のセシリィ・カデュー(城妃美伶)の後見人であり屋敷のある田舎では 後見人らしく品行方正な堅物として通しているため 自由を求めてロンドンに道楽者で厄介事ばかり引き起こすアーネストとなる架空の存在の弟をこしらえてーロンドンではアーネストと名乗っていた

同じ頃 仕度をするグウェンドレンは今日こそアーネストがプロポーズしてくれるはずと帽子選びに余念がない
どんな独身を誓った男性の目も惹きつけ 心を動かす素敵な帽子

彼女は言う 男性がお天気の話ばかりする時は 続けて本当はプロポーズしたがっている
そういうものだ
それに もう独身は(女性にとって)流行りじゃない

「アーネスト」という名前の青年と信じて愛しているグウェンドレン

アルジャノンの家へと向かうジャックもグウェンドレンも恋するあまり誰を見てもお互いに見えるーと

このグウェンドレンを演じる花乃まりあさんの声を聴いていて 聞き覚えのようなものを感じました

松坂慶子さんの若い頃のお声に似ておられるのです 少し
 
そしてドレス姿からはやはりお若い頃の舞台での栗原小巻さんの雰囲気が何処か漂って見えました

せっかくレインが用意したキュウリのサンドイッチが好きなアルジャノンの伯母にしてグウェンドレンの母親ブラックネル用の そのサンドイッチを食べるアルジャノン
ジャックにも分けてくれない

この時代 キュウリのサンドイッチは贅沢なものだったようです
ジャック「キュウリのサンドイッチか 贅沢だなあ」

午後は紅茶とキュウリのサンドイッチ

先日 ジャックが忘れていった金のシガレットケースの中を見たアルジャノンは ジャックの正体に疑問を持ち追及
グウェンドレンとの結婚は僕が許さない

そこでジャックは本当は自分の名前はアーネストではないこととその理由を白状
アルジャノンは 僕のバンパリーと同じだと笑う
アルジャノンも架空のバンパリーという友人をでっちあげ 彼が重病なので見舞いに行くーと遊びに出かけるのだと

意気投合し ブラックネルを引き受ける間にグウェンドレンにプロポーズしろと言うアルジャノン
お礼に食事を奢ってくれたらいいからと

さてブラックネルと娘のグウェンドレンが登場

が!伯母のブラックネル用のきゅうりのサンドイッチは食べてしまってたアルジャノン
執事のレインは「今日は胡瓜が手に入りませんでした」

曲選びにアルジャノンが別室にブラックネルと行ったあと

ジャックはまずお天気の話から始めようとするもー

察しの良いーというか早くプロポーズしてほしいグウェンドレンは お天気の話はいいからーと

そして漸く愛を告げることのできたジャックを急かせる
何しろグウェンドレンの母親ブラックネルには「急に戻ってくる」ことがあるらしい

更にグウェンドレンは言葉を重ねる
わたしは そのプロポーズを承諾するつもりなのだと

ここまで言われリャ安心してプロポーズできて当然ーですが 一つ大きな問題がありました

グウェンドレンの夢は「アーネストという名前の人間にプロポーズされること」であったそうな

ジャックなんて名前はとんでもない

その言葉に「洗礼しなきゃ(名前を変える)」とジャック

けれど部屋に戻ってきたブラックネルはグウェンドレンを馬車に行かせてから ジャックの財産 生い立ちを聞いて
親が分からない素性のはっきりしない人間は娘の結婚相手として認められない
ハンドバッグは母親じゃないー


ブラックネルの帰って行った後 部屋に戻ってきたアルジャノンは求婚はうまくいっただろうと結婚の歌をハミング
が!ジャックからブラックネルの反対を聞いて とりあえず約束の食事をおごってもらおうと出掛けようとー
そこにグウェンドレンが 帰宅の馬車の中で母親からジャックの生い立ちを聞き 感動したと戻ってきます
「アルジャノン 向こうをむいていて」
素直に壁の方をむくアルジャノン

もしも結婚できずに 何回も他の人と結婚することになってもー愛しているーとグウェンドレン

(ジャックと結婚できなかったら 結婚しないーという選択はないらしい・笑)

それでも感動してグウェンドレンを抱きしめるジャック

ジャックがグウェンドレンに話す田舎の屋敷の住所を盗み聞き 「二幕で会いましょう」
ーとジャックの屋敷へ向かうらしいアルジャノン
目当ては好奇心をそそられたジャックが後見しているセシリィに会うこと

そして第二幕

家庭教師のプリズム(芽吹幸奈)と勉強中のセシリィ
プリズムがチャジュスル牧師(夕霧らい)と散歩に出かけたところへアルジャノン登場
ジャックの弟のアーネストと名乗っています

セシリイもアーネストという名前の人間に想像募らせ 秘密の日記を書いていました

可憐でちょっと突飛な言動のセシリイに惹きつけられるアルジャノン

そこへ流れるのは一幕でジャックがグウェンドレンに向けた愛の歌を歌い始めた時の曲
ーああ 遂に僕にもこの時が!

ところがセシリイも言うのです
アーネストという名前の人間にずうっと恋していたのだと

アルジャノンなんて名前は駄目だーと言われてしまいます

そこでアルジャノンが思いついたのも「洗礼を受ける」でした
教会に大切な用事があるーと走り去ります


一人になったセシリイの所へ今度現れたのは愛するアーネスト(ジャック)を訪ねてきたグウェンドレン
初対面から意気投合した二人ですが 互いの婚約者の名前がアーネストであると知り とっても険悪になります

言い合う二人

ジャックは訪ねてくれたグウェンドレンの姿に感激

抱きしめようと階段を駆け下りてきますがー

ジャックがセシリイは後見してる娘で彼女とは婚約していないと話して やっとキスを許すグウェンドレン

しかしアーネストじゃない 本当の名前はジャックと


そして戻ってきたアルジャノン
グウェンドレンはイトコだ 彼女とは婚約していないー
そこでセシリィにキスをさせてもらえるアルジャノン

するとグウェンドレンが彼の名前はアルジャノンと


女性二人は 騙されていたという共通事項で一致団結

男二人を庭に置いて屋敷へ入ってしまいます

ジャックは弟のアーネストは死んだーと屋敷に戻ってきていた(愛しのグウェンドレンに求愛したし もう息抜きの存在は不要だから さっさと「殺した」)

が!アルジャノンがアーネストと名乗って突然現れた為に バタバタする笑える場面もね ありました
笑える場面 いっぱいあります


どうにか愛する女性の怒りを解かなきゃーって必死のジャック
マフィン食べだす食いしん坊で呑気なアルジャノン


言い訳より正直に謝ろうとアルジャノンもひっぱっていくジャック
残るマフィンに未練を見せるアルジャノン

ジャック「君に会う為にロンドンに来たかったからー」

アルジャノン「セシリイに会う為にアーネストの名前を使った」

二人の言葉にそれぞれの女性は怒りも解けて 抱き合う恋人たち


しかしそこへグウェンドレンを捜すのに大勢の使用人を連れたブラックネル

持参金と相続財産のあるセシリイと借金だらけのアルジャノンの結婚は認めますが

ジャックのことは認めてくれません


本当の家族が欲しかったひとりぼっちの男の子のことを考えてほしいージャックの生い立ちはグウェンドレンの胸ばかりか他の人々の心にも響くのに

けれど ここで登場のプリズム

実はプリズムは28年前 自分の書いた小説と赤ん坊を入れ替えてしまったことがありました
小説は乳母車に 赤ん坊はハンドバッグに

この大失策から プリズムは姿を消したのです

ジャックが取って来た赤ん坊の自分が入っていた鞄こそ プリズムのもの

プリズムにママ~~と追いかけまわすジャック
私は独身ですーと逃げるプリズム

ブラックネルは教えます あなたはわたしの わたしの妹の子供
つまりアルジャノンの兄になる

本当の名前はー

ブラックネルも父親と同じ名前をつけたとしか覚えていない 
アルジャノンも自分が一歳の時に死んだ父親の名前を憶えておらず 紳士録からわかった名前はー

アーネストだった

ジャックの本当の名前はアーネストで アルジャノンって放蕩者(だった)弟もいたし 愛するグウェンドレンには何一つ嘘はついていなかった

そして大団円

チャジュスル牧師とプリズムも良い雰囲気だし ジャック(アーネスト)とグウェンドレン アルジャノンとセシリイも幸せに


何回 観ても幸せな気分になれる作品です

なんといっても笑えるところがいっぱい


「真面目が肝心」について より詳しく知りたい方は ウィキペディアをどうぞ↓

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E9%9D%A2%E7%9B%AE%E3%81%8C%E8%82%9D%E5%BF%83

登場人物の名前にも さまざな由来や意味があるようです
でもね!
そんな しちめんどうなことは どうでも^^;いいから お芝居と歌を素直に楽しんでほしいと 私は思います





消えた花を惜しんで・1

2017-03-12 11:11:19 | ひとりごと
宝塚歌劇団・花組のトップ娘役であった花乃まりあさんが「雪華抄・金色の砂漠」の舞台を最後に退団されました
トップの明日海りおさんと花乃まりあさんのコンビが好きでした

ーもう観られないーそう思うと・・・最初はネット動画で花乃まりあさんの映像や書かれた記事などを追いかけていたのですがーとうとうDVDをAmazonと宝塚アンさんを利用で購入

明日海りおさんトップ就任で披露の「エリザベート~愛と死の輪舞」から「雪華抄・金色の砂漠」までの花乃まりあさん出演の舞台を繰り返し観ております


そこで そこから妄想のモノなど少し




「仮面のロマネスク」
原作はフランスの作家コデルロス・ド・ラクロが1782年に書いた書簡体の小説「危険な関係」
繰り返し映画化やドラマ化されております

自分を裏切った元愛人への復讐で宮廷の遊び人に純真な乙女を誘惑させたり 宮廷の遊び人が貞淑な人妻を誘惑し陥落させて破滅へ導く
そんな彼等も報いを受ける
退廃と不道徳の代表のような二人の人物を脚色し時代も移して少しストーリーも色合いを変えて演じられたのが宝塚・花組の舞台「仮面のロマネスク」

あでやかな美貌で噂の的のメルトゥイユ侯爵の未亡人フランソワーズ(花乃マリア)は宮廷で生き残る為に浮名を流している ーこっそりとー

相続した時に傾いていた家をその手腕(色事と宮廷での渡り歩き方)で立て直したジャン・ピエール・ヴァルモン子爵(明日海りお)














かつてフランソワーズの愛人の一人だった軍人のジェルクール伯爵(鳳月杏)は遊び人としても浮名を馳せており ヴァルモンの恋人を誘惑し寝取ったことがある
フランソワーズとヴァルモン この二人が互いにちょっと「こいつ!」と思っているジェルクール伯爵が婚約をした
相手は修道院から出てきたばかりの世間知らずの純真無垢な乙女のセシル・ブランシャール(音くり寿)
軍人の父親から厳しく育てられたフレデリーク・ダンスニー男爵(芹香斗亜)は青年らしい憧れを持ってセシルに恋をしていたのだがー

ダンスニーの不器用さにも歯がゆさを感じるメルトゥイユ侯爵夫人フランソワーズは ジェルクールへの意地悪い復讐を思いつき 同じくジェルクールへいい思いを抱いてないヴァルモンにセシルを誘惑するように言う
だがヴァルモンは この時 貞淑と噂のマリアンヌ・トゥールベル夫人(仙名彩世)へ食指をそそられていた

マリアンヌを陥落させてからセシルにかかるというヴァルモン
フランソワーズは もし首尾よくいけば そのご褒美は自分だと言う
「ご褒美は わ・た・し」
この色っぽい言葉に俄然やる気を出す 悪い男のヴァルモン

革命は成功したものの 思うよりも生活が楽にならなかった市民たちは貴族や社会への不満が高まり 世は不穏な流れのもとにある

マリアンヌへの誘惑は効を奏しながらもイマイチ調子の出ないヴァルモン
その最後の一押しができないヴァルモンが マリアンヌへ恋心を持ったと気付くフランソワーズ
セシルを一夜で仕留めたヴァルモン
「恋心を持っていない 思っていない相手だと仕事が早い」
マリアンヌへの嫉妬も見せるフランソワーズ

けれどヴァルモンが心の底で本当に思っていたのはー欲していた相手はー

そうしてヴァルモンに本気になって捨てられたくなくてー先に終止符を打ったフランソワーズも実のところはー


セシルへのうまくいかない恋に悩むダンスニーに女性の扱い方を教えるフランソワーズ
マリアンヌのことでのヴァルモンへの嫉妬と当てつけもあったかもしれない
自分が仕向けたことながら 純朴な青年ダンスニーへ疚しさ 同情

マリアンヌをこっぴどく振ったつもりのヴァルモンは フランソワーズがダンスニーを連れ込んでいる屋敷へ乗り込む
言い合って ダンスニーにフランソワーズは ダンスニーの恋に協力していたヴァルモンがセシルに手を出していたことを告げる

ダンスニーはヴァルモンに決闘を申し込み

戒厳令も出ているがー


ヴァルモンは空に向けて撃ち それを認めたダンスニーも空に向けて撃つ

案じるセシルに自分達は一緒に生きよう 離れないでと誓うダンスニー

市民たちが貴族への攻撃を始める中 軍服を着たヴァルモンは 命を賭けた戦いの前 会いたいと願う人の屋敷へ急ぐ

フランスを離れようと船旅の準備をしているフランソワーズ
忠実な者だけを残し 他の使用人達には暇をやった寂しい屋敷

そこでフランソワーズはヴァルモンの無事を祈っていた

「やっぱり いたね」
逢えてほっとしたように微笑するヴァルモン

「好きだったわ」本当の想いを告げるフランソワーズ
互いに嘘ばっかしの宮廷で・・・・・
貴族の社会で
最後の最後に心の仮面を外して
ーあなたがいたから生きてこられたー

互いの気持ちの奥底を伝え合い 二人だけの舞踏会を始める
永遠の別離の前に・・・・・



ーとね 原作とは似て非なる仕立てとなっております


で ここに至る前のお話でっちあげ(笑)

貴族の娘は15ほどで親の決めた相手に嫁がないといけないーという そっからね拾って^^;
(原作は無視・笑・です)


若い頃ジャン・ピエールは愛らしい少女に恋をした
だがーその恋はかなわなかった

当時 家は傾いており借金まみれ
とうてい結婚を言い出せる身ではなかった

しかも相手は侯爵家

少女フランソワーズは眩い若者ヴァルモンに憧れを抱きつつー親の言いつけにはさからえなかった

嫁いだ侯爵が亡くなり 自由の身になり
思いがけず言い寄って来たヴァルモンに身を任せる
恋の喜びに打ち震えながらもー既にヴァルモンは数々の浮名を流している
自分も獲物の一つにすぎず いつかは捨てられる
ならば捨てられる前に
誇りと・・・愛が得られないなら自分なりの誇りと立場にしがみつくしかない

本当に欲しいものが得られないならーヴァルモンも戯れの恋を続けるしかなかった



花乃まりあさん退団により トップ娘役は仙名彩世さんに代わり 明日海りおさん以外の配役は変わって 「仮面のロマネスク」は再演されます
柚香光さん演じるダンスニーには興味をそそられますが

台湾公演の「ベルサイユのバラ」ではオスカル・フランソワを演じた柚香光さん 
華やかにして美しくとても似合っておりました
 
本公演では無理かもしれませんが オスカルとアンドレをメインの舞台で
アンドレ役を鳳月杏さん
オスカルを柚香光さん
フェルゼンを水美舞斗さん
こんな配役で観たいなーなんて思ってしまいました

原作「ベルサイユのバラ」は長い物語であり舞台にかけると省かれるものも多くて その本当の人間関係は伝わりにくいです
いかにしてアンドレが深くオスカルを思うようになったか
男として育てられたオスカルが初めて恋心を抱いたのがフェルゼン伯爵
ただフェルゼンの心はマリー・アントワネットへの想いで占められていた

オスカルの女性としてのドレス姿とか 省いてほしくない場面は多いのですけれど

いざ舞台にかかると 唐突でひどく荒唐無稽に思われる話のつなぎ方は とても残念です




「葬恋記」-11-

2017-03-10 20:41:39 | 自作の小説
ー鬼となった娘ー

四方を山に囲まれ僅かに拓けた地が 一族の代々暮らす場所であった
美しい水を湛える湖もあれば 清い流れの川もある

春ともなれば山野にはとりどりの花々が咲き乱れた
長(おさ)の娘はその花々も褪せて見えるほどに美しく・・・・・名を紗穂(さほ)と言う

守備隊長の息子の東風丸(こちまる)と近く夫婦になることが決まっていた

自身も紗穂を妻にと望み 叶わなかった男がさる大国へ 紗穂の美しさを知らせてーーーーー
大国の主の息子は娘一人を奪うのに大軍で その美しい場所を攻めた


焼き討ちをかけられて多くの民が焼け死んだ

紗穂を逃がそうとした東風丸は捕えられて 娘の目の前でなぶり殺しにされた


「お前はこいつの目が好きか では目を失くしてやろう」
そう言って目を抉り 耳をそぎ 鼻を刻み

「この腕でこいつはお前を抱いたか」
両腕も切られ 足は折られた挙句にやはり切り取られー
苦しめられ 体中の血を流しきるように 
娘の愛する男は殺された

自分一人を奪う為に 一族全てを殺した男

この殺戮に関わった全ての人間を娘は呪った


「子々孫々その末裔全て絶えるまで・・・・この恨みは消えぬ

我が命消えようと この呪いは解けぬ 終わらぬ
覚悟せよ

我が魂は この仇を討つ」

美しい娘は鬼となり湖へ身を投じた

それからー間もなく
大国は他の国に攻められ思わぬ敗北
傲慢な大国の主もその息子も首を斬られた


一人殺されるごとに 湖は高笑いの声をあげたという

やがて山の噴火があり湖は無くなったが その水は大地に沁みて 姿を変えて残り・・・・・
呪いも残った

最後の一人が死に絶えるまで 呪いは消えず


形を変えた死の呪いは漂い続けた

まるで愛し愛される者を捜すように
恋の相手を求めるようにー
ただ・・・・・流離(さすらい)続けた

既に呪いの始まりすらわからぬながら 死を求め続けた

人の命も死も ソレには何の救いも与えなかったけれど



(「葬恋記」終わります)


信用ならないヤツ(笑)

2017-03-10 20:23:17 | 子供のこと身辺雑記
朝ご飯を食べながら「ZIP!」を見ていた長男
素麺が紹介されるコーナーで
「初めて見た!」とおおいに感心してみせる


あえてつっこまずスルーの私「ふ~~~ん」

車で1時間以内の場所に「揖保乃糸」の工場がありますし 小豆島でも美味しい素麺がつくられています

長男「冗談やて 毎年食べてるし」
やたら焦る長男に私「頭の良い人間って こちらが何も言わないほうがこたえるでしょ」


長男「なんか言うてくれへんと俺がアホみたいやん」

「あんまり白々しいし 味噌汁の具 にゅう麺 夏場以外でも食べてるし」と私

長男「冗談に決まってるやん 」

私「君の人間性を見たね  」


「こんな純粋でいたいけない若者なのにー」と長男

一日はオチのない母子漫才で始まる

ただ それだけの話である