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巨大ブラックホールの衝突が新宇宙を形成⇒循環宇宙論、有機物質から人間への進化メカニズム(循環論理の評価)⇒戦略的進化論

福島原発と日本を救った故吉田所長の陰

2013年10月18日 18時44分48秒 | 深刻な問題

 電力会社のOBで構成する仲間が集った。酒が進むと自然に福島原発などが話題になる。吉田所長は本店からの指示を無視して原子炉冷却に海水を注入し、結果的には大爆発やそれに伴う高濃度放射能の拡散を防いだ。事が原子力で、命令に逆らうことはあり得ない事だが、これで、東日本壊滅を防ぎ、日本を救った。

 吉田所長は英雄だが、一方で、原子力設備管理部長だったころ、明治三陸地震を想定した津波のシミュレーションでは15.7mという計算が出たにも関わらず、あり得ない事だと、防波堤増強を見送っている。ここが電力会社の複雑なところで、従来の5.7mの設定は先輩(取締役以上になっている可能性大)が決めたことで、電力社員としてこれを覆すことはサラリーマンの将来を捨てることになる。

 つまり、吉田所長が原子力設備管理部長として正義感を発揮し、15.7mの津波も起こり得るとし、会社側に対策を求め、防波堤強化、電源保護対策、各種安全システムなどがなされていれば、メルトダウンにはならなかったし、放射能汚染にも至らなかった。が、しかし、昇進の道も閉ざされただろう。

 本店だからとりわけ反逆行為は許されず、左遷などは当たり前の世界だ。厳しい表現だが、そこで、原子力発電所所長としての地位に繋がったともいえる。これらの点でOBの意見は一致した。事故時は大規模で深刻な災害、生命の危険性を肌で感じ、妥協できなかったかと推察する。

 原子力の安全性については電力社内で会話するこは事実上ご法度だ。疑問点について原子力部に質問すると、情報がまわりまわり、上司から注意されたりする。原子力部は稼ぎ頭でもあるから鼻息は荒いし、課長クラスでも取締役以上とは密接に繋がっている。

 私は原子力発電所の建設に関わる研究設備を担当した際、独断で安全性優先を宣言し、安全性に疑問が有る場合は上司の意見も通さなかった。電力会社で私の行為は例外に例外である。つくづく原子力部に行かなくて良かったと思う(希望すれば100%行けた)。

 吉田所長とは同時代を生きたが、彼は発電畑で、設備を熟知し、管理運用する守りのベクトル、私は開発・改革、あるいは営業など外向き、攻めの立場、全く方向が異なる。ただ、同じ技術屋として言わせて頂ければ、何故、発電所トップとして非常時の電源確保にこだわらなかったか、その点が怠っていたと指摘せざるを得ない。

 原子力発電所の所長は世間が思う以上に権限が大きい。毎日、発電機が運転できていたらそれで良しとはならない。非常発電機も、バッテリーも、送電線も全部ダメになる(全電源喪失)など、悪いけど、発電所の課長以上は何をしとったかと言いたい。はっきり言って、技術屋の恥だ。

 全国の原子力発電所の課長以上は、福島原発の教訓を忘れずに、徹底的に安全性、とりわけ非常時の電源確保には拘って拘って必要な設備・システムを実現すべきだ。電源が確保されていれば、福島の大事故は起きていなかった。

 吉田所長は有能優秀で真面目な人だったようだ。だからことさらに、自分が握りつぶした津波安全対策の判断については心を痛めたと思う。電力会社では事実がしばしば都合が悪く、それをロンダリングした技術屋が昇進してきた明確な過去の実績が有る。

 まじめに働き続け、正義感が有り、常に公正で正しい判断を実行する人間は、早い段階で外され、あるいは潰され、決して取締役上にはなれない。

 電力会社本店は建設費と言い、まわりとは格段に違う立派なビルだが、透かして見る事が出来れば(普通、絶対見えないが)、実は事実が隠ぺいされ、重要なところでいかさまがまかり通る悪魔の殿堂だ。福島原発事故でよくわかったでしょう。

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