この本を読んで、自分の生き方について、肩の力が抜けたというようなことを書いていた人がいた。
そうか、どんな本だろう、読んでみたいなと興味を持った。
作者は、梨木香歩という。
1959年生まれというから、私と近い年代だ。
1995年、「西の魔女が死んだ」で、第28回児童文学者協会新人賞、第13回新美南吉児童文学賞、第44回小学館文学賞を受賞。
そうか。この作品で、いろいろと賞を受賞したのだな。
そして、「児童文学」のジャンルに扱われたというわけだ。
そのせいか、この本は、私が行く図書館では、一般図書ではなく児童図書のコーナーに置いてあった。
主人公は、「まい」という名の少女。
中学校でいじめにあって、学校に行きたくなくなった子だ。
その子が、学校に行かずにいなかのおばあちゃんの家にしばらく預けられて生活したときの話が中心になっている。
おばあちゃんは、イギリスから来て日本人と結婚した人だった。
おばあちゃんのおばあちゃんが魔女の力があった、ということを知ったまいは、おばあちゃんから魔女の修行を受けることを希望する。
心の持ち方、考え方など「魔女の心得」をおばあちゃんから教えてもらいながら、おばあちゃん、自然、生き物、苦手な人と交わって生活する日々が過ぎていく。
その中で強調されていたこと、それは、「一番大事なことは自分で見ようとしたり聞こうとする意思の力」だった。
物語の始まりは、何年かしてそのおばあちゃんが死んだところから始まる。
そこから、回想シーンのようになって話が進む。
そして、最後のところで、苦手な人への見方も変わったり、おばあちゃんが遺したメッセージが魔女らしくまいの心に響いたりするのだった。
思春期の少女の悩みや見方に寄り添い、成長に導く。
たしかに、文学賞の受賞にふさわしい希望や感動を感じる作品だった。
面白いのは、ラストシーンに、「ギンリョウソウ」や「キュウリグサ」が大切な役割を果たすところだ。
ギンリョウソウは、苦手だった人への見方を変えるときに使われる役割を果たしている。
キュウリグサは、主人公のまいがワスレナグサに似た小さな花、ということで「ヒメワスレナグサ」と自分で呼んでいたものだった。
それが、おばあちゃんとの思い出の地へ行って、初めて「キュウリ草」という正式名を知る。
その花が咲く近くに、「魔女」からのメッセージを見つける、まい。
ギンリョウソウもキュウリグサも、2つとも、「自分の見方を変える」ということについて、大きな貢献をしている。
そんな話の展開に、感心した。
梨木香歩さんの作品には、植物に関するものも多いようだから、またほかの作品も読んでみようと思っている。