義時は言う、我も終わるかも
公暁、実朝を打ち損じれば
《八幡宮の大階段》
公暁、義時を討ち取ったと
叫ぶもそれは人違い
思いもよらぬ仲章
歩き巫女、正気を失うか
告げてまわる
「天命に逆らうな」
実朝の公暁に刃を向けらて思う
これが天命か
迷いは消え
口もとに笑みも美しく
公暁の刃を待つ
大江広元
「手間は省けました」
実朝に渡された歌一首
別れの歌に妻の千世泣き崩れ
出ていなば主なき宿となりぬとも
軒端の梅よ春を忘るな
公暁は祖母政子の館に現れた
「源頼朝を父に持つ公暁であると、知らしめたかった
武士になりたかった」
恨んでも恨みきれない祖母政子最初で最後の甘えとなって
公暁は、乳母夫の三浦義村に
京へ戻る手配を頼んだ
しかし
義村の刃が背中に二度三度
公暁は殺された
北条家はもはや一枚岩ではなく
泰時
「父の思い通りにはさせない
私が止めさせる」
政子
「伊豆に帰りたい自害したい」
義時
「姉上、頼朝様のご意向を
示せるのは姉上だけ
とことん付き合ってもらいます」
またしても忌まわしい恐ろしい
八幡宮の大階段でした
でも、公暁に阻まれた時の
実朝の微かな笑みが
なんとも穏やかで優しくて
源実朝
歌人としても名を残した人
その和歌のいくつかを
ランダムに並べてます
我が心いかにせよとか山吹の
うつろふ花に嵐たつらむ
世の中は常にもがもな渚漕ぐ
海人の小舟の綱手かなしも
秋はいぬ風に木の葉は散果てて
山さびしかる冬は来にけり
いとほしや見るに涙もとどまらず
親もなき子の母を尋ぬる
時により過ぐれば民の嘆きなり
八大龍王雨やめたまへ
山はさけ海はあせなむ世なりとも
君にふた心わがあらめやも
身につもる罪やいかなるつみならむ
今日降る雪とともに消ななむ