【阪神・淡路大震災30年】:「伝え続ける」葛藤から使命感へ 1.17に生まれた30歳の誓い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【阪神・淡路大震災30年】:「伝え続ける」葛藤から使命感へ 1.17に生まれた30歳の誓い
30年前の1月17日に生まれた男性が、阪神大震災の「語り部」として小中学校で出前授業を続けている。「生きたくても生きられなかった人がいる。その人たちのためにも、継承していく使命感がある」。被災体験はないが、その日に生を受けた宿命を背負う。
「おぎゃーーーーーー 夕方6時21分、ぼくはようやくうまれたんだ。お父さんもお母さんもたくさんたくさん泣いたんだ。うれしくて、うれしくて」
3歳の頃から誕生日になるとテレビカメラが回っていた。父の転勤で一時は神戸を離れ、15歳で再び戻ってくると、「震災の日に生まれた少年」としてまた取材を受けるようになった。
「誕生日という祝うべき日が、震災で多くの人が亡くなったんだ」。そんな残酷な現実を突き付けられた。「どうしたらいいのか分からない」。思春期だった当時はそんな葛藤を抱いた。
答え探しのために、大学では防災学習に熱を入れた。東日本大震災(2011年)の被災地にもボランティアで訪れた。足を踏み入れた瞬間、阪神大震災が起きた時の神戸の街が想像できた。
仮設住宅で暮らす人に話を聞く機会があった。地震直後に避難したが、貴重品を取りに自宅に戻って命を失った家族がいた話を聞いた。それが胸に刺さった。
父は避難直後、破水した母を病院に連れて行くため、車の鍵を取りに戻ろうと自宅マンションの階段を10階まで必死で駆け上ったという。「その行動がいかに危険だったのか。自身の奇跡的な誕生につながった尊さを思い知った」と目を潤ませる。
30歳を迎えるにあたり、いつしか葛藤は使命感に変わった。命の尊さと助け合いの大切さを、震災を知らない世代に伝えていきたいと思う。「強く大きく羽ばたいてほしい」。「翼」の名の由来を教えてくれた両親に、これからの飛躍を誓う。【関谷徳】
元稿:毎日新聞社 主要ニュース 社会 【災害・地震・阪神・淡路大震災30年】 2024年01月17日 05:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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