《社説①・12.28》:袴田さん捜査の検証 冤罪を直視しない不誠実
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.28》:袴田さん捜査の検証 冤罪を直視しない不誠実
罪なき人を死刑囚にするという重大な過ちに、誠実に向き合っているとは思えない。
再審で無罪となった袴田巌さんに対する捜査・裁判について、最高検と静岡県警が検証結果を公表した。1966年にみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で、一旦は死刑が確定していた。
連日、深夜まで長時間に及んだ取り調べに問題があったと認めた。取調室で用を足させることもあり、県警は「不適正だった」と結論づけた。最高検も、検察官が犯人と決めつけるような発言をして自白を迫ったと言及した。
しかし、今年9月の再審判決が認定した捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)に関しては、最高検は否定した。事件の1年2カ月後にみそタンクから見つかり、犯人のものとされた「5点の衣類」などだ。
それまでの捜査や立証の方針と矛盾するとして「現実的にあり得ない」と反論した。だが、説得力のある根拠は示していない。
県警は、当時の捜査員やみそ会社従業員への聞き取りを実施したが、捏造の有無を判断できる証言は得られなかった。
いずれの検証も冤罪(えんざい)を生んだ理由の分析には踏み込んでいない。
最高検は「無罪の結論を否定するものではない」としながらも、「逮捕、起訴に問題はない」と言い切った。最後まで有罪だと主張したことを含め、裁判への対応もおおむね適切だったと強調した。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月28日 02:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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