議論のなかでつくり上げた建白書が、歴史を動かした!
最後に、もう一つ、指摘しておきます。それは、以下の文章です。高知県の憲法的運動の歴史的伝統を示す証拠です。この歴史を、今こそ学ぶべきではないでしょうか。メディアも交通機関の、まだまだ未発達な時代にあって、国会開設運動や私擬憲法づくりに収斂していった国民のエネルギー、今こそ、ここに学ぶべきではないでしょうか。ご覧ください。
士族反乱・農民一揆=武装闘争から言論闘争(集会・署名運動)への革命的転換と発展!それを今、どうやって現代に活かすか!
色川大吉『自由民権』(岩波新書81年4月刊)より
自由民権運動が真にその名にあたいするのは1877年(明治10年)6月、立志社の国会開設建白以降である。このときはじめて当面する国民的課題を、地租軽減、国会開設、条約改正の三大要求に明確化し、士族の指導者と農民大衆との同盟の可能性がつくりだされた。そして植木枝盛、杉田定一ら若き遊説者の努力によって、78年(明治11年)9月、おもに西南の士族民権結社を糾合して、愛国社を再興し、民権派勢力の再結集を進めたのである。(引用ここまで)
後藤靖『自由民権 明治の革命と反革命』(中公新書昭和47年3月初版・昭和55年1月刊)より
自由民権運動の新しい転換を画するものが、10年6月の立志社建白である。佐賀の乱をきっかにして、士族反乱が続発した。…そしてついに10年1月には西南戦争が勃発した。この間に、政府は8年8月に江華島を砲撃し、朝鮮侵略の野望をむき出しにし、讒謗律や新聞紙条例を制定(8年6月)して民権運動の弾圧方針を明確にした。愛国者創立大会に出席した者の多くが、士族反乱に走った。…新しい民権論者たちも、土佐にやってきてその誤りを批判した。…いまやるべきことは、「民選議院を立て、憲法を定め、全国人民の権理(利)を確定する」ための行動だと説いた。ついに、こうした努力が実った。立社社建白は、その成果であった。片岡健吉が総代となって、京都行在所の天皇にむかって建白した。植木枝盛と吉田正春が起草し、竹内綱が手に入れたこの建白書は、立志社の自己批判を盛り込みながら、自由民権革命のあるべき方向を明らかにし、天皇専制政治に対して激烈な抗議を行った。「頻年土木軍役興って休まざるの巨費及び内外の国債、陛下誰と共に謀って之に処せんとするや」また「五事の誓約と立憲の詔令とをとなえ大声して之を訴えば、大臣は何を以て全国人民にこたえ、陛下何を以て天神地祗に謝せんや」と真向から天皇を批判し、「一、内閣大臣誓約の趣旨を拡充せず、公議を取らずして専制を行う」、「二、大政総理の序を失す」、「三、中央政府の集権に過ぐ」、「四、徴兵令、政体と合せずして軍制立たず」、「五、財政其道を失す」、「六、税法煩苛に属し、人民これに耐えず」、「七、士民平均を失す」、「八、外国干渉の処分を誤る」と八か条にわたって「陛下任ずる所の大臣」の失政を弾劾したのである。
この建白書によって、自由民権の三大綱領-国会開設・地租軽減・条約改正が、はじめて実質的に出揃ったとわたしはみる。天皇制官僚は、不遜にわたる箇所があるとして、この建白書を拒否した。片岡らが激憤し、この建白書を印刷して世論に訴えた。そして、全国の民権政社の統一にのりだすのである。(引用ここまで)
どうでしょうか。この立志社建白の8つの内容、安倍首相の政治批判にも当てはまりませんか?明治10年、五箇条の誓文を利用して、参政権を根拠づける。いわゆる「五箇条の御誓文」は、世直し一揆の世相や公議政体論を反映して考案されたものが、最終的には、木戸孝允によって、「神武創業の始」に立ち返るものにスリカエられました。しかし、「広く会議を興し万機公論に決すべし」だけを取り出すならば、民権派の主張は正しいし、この言葉は、安倍首相にも当てはまりますね。
地租が高いのは、不平等条約によって、金が大量に出ていってしまう、逆に安価な外国産織物などが大量に入ってくるのは農村破壊につながる!しかも検疫規制がないためにコレラ(コロリ)に大勢の国民が死に追いやられる!明治期だけで40万人を超える国民が殺された!不平等条約のために!と言っても言い過ぎでない状況でした。政府は1880年代には、この国民の「脅威」を外国の「脅威」に向けさせ、憲法体制と軍国主義づくりを推進していくのですが・・・。それにしてもコロリと名づけるほど、恐れられた!
ここで大切なことは、こうした政治が横行するのは納税者の声が政治に反映していないからだ、という視点が貫かれています。この三つは互いに関連し合って認識されたのです。
どうでしょうか。現在日米軍事同盟下の日本の現状がピッタリ当てはまりませんか?TPP・治外法権下の普天間基地、増税と貧困、小選挙区制と政治改革、特定秘密保護法と集団的自衛権行使などなど、憲法があっても無きがごとくのような無法とデタラメが横行していないでしょうか?
朝日の世論調査では、安保条約を支持する国民は圧倒的多数です。しかし、国民は軍事同盟ということよりか、日米平和友好条約の内容として、安保条約を捉えていることが、朝日自身の調査で浮き彫りになりました。以下の国民の意識は半分は事実を知らないという点で、危険な部分と、これまで自民党政権は軍事的協力よりか、経済的関係を重視した「日米関係」=「日米同盟」を強調してきたことの反映が、半分は沈殿している部分、すなわち国民の平和指向の根強さを浮き彫りにしている部分があるように思います。これは国民を戦争に動員しようと考えている安倍政権にとっても、難題でしょう。
だからこそ安倍政権の暴走、国民生活に対する配慮の欠如ぶりと軍事同盟の危険な部分、しかも集団的自衛権の行使には多額の軍事費がかかり、増税になるぞ!という本質的狙いが結びつけば、歴史は大きく転換していくことでしょう。立志社建白の内容は、そのことをも教えているのではないでしょうか。ではご覧ください。
日米安保条約をこれからも維持していくことに賛成ですか。反対ですか。 有効回答数2045人
賛成 79 1615.55人
反対 11 224.95人
日米安保条約をめぐる日本とアメリカとの関係について、あなたの考えは次のどちらに近いですか。
アメリカには日本防衛の義務があるのに、日本にはアメリカ防衛の義務がなく、不公平だ 15 306.75人
日本はアメリカに米軍基地や多額の駐留費用を提供しており、不公平ではない 72 1472.40人
日本がアメリカとの間で集団的自衛権を行使できるようにしなければ、日本とアメリカとの同盟関係が弱くなるという意見があります。その通りだと思いますか。
その通りだ 27 552.15人
そうは思わない 67 1370.15人
もし日本が集団的自衛権を行使できるようになり、アメリカから戦争に加わるよう求められたとしたら、自衛隊はどうしたらよいと思いますか。
一緒に戦ってよい 16 327.2人
一緒に戦うべきではない 71 1451.95人
もし日本が集団的自衛権を行使できるようになったら、日本が戦争に巻き込まれるかもしれないという不安をどの程度感じますか。
大いに感じる 52 1063.34人
ある程度感じる 36 736.20人
あまり感じない 8 163.60人
まったく感じない 1 20,45人
そういう意味で、自由民権の発祥の地、土佐の高知で、安倍内閣打倒が、全労連や連合傘下の組合や諸政党が集まって叫ばれたことの意味は大きいのではないでしょうか。
私擬憲法づくりは紆余曲折アリ!試行錯誤アリ!しかし、主人公は国民だった!そうして現在の日本国憲法の原案ができあかった!政権構想づくりも、同じ!共産党だけのものではない!国民を信頼して、議論のなかで、安倍内閣に替わる政権構想を構築すべし!これこそが国民が主人公!明治農民たちに学べ!
この立志社建白以後について、またこの建白書の歴史的意義については、以下をご覧ください。
【皇后さま79歳 回答全文】 2013年10月20日 http://www.tokyo-np.co.jp/feature/koushitsu/131020/
「小田為綱 」の「憲法草稿評林」
第122回 国民に天皇リコール権――「憲法草稿評林」の衝撃 - Econfn
社会科学者の時評: 皇后を神々しく語る教授作家 2013年10月31日
あの時代にあって、天皇を国民投票で選択するという発想が東北の地で考案されていたのです。土佐や多摩とは違ったものが、議論の中で考案されていた!今よりずっと進歩的です!議論の中で、国民的合意が形成されるのです!その橋渡しが共産党ではないでしょうか?国民が主人公とは、そういうことではないでしょうか?