昼前から日が差したので、読んでゐた本を一度閉じて町内の散歩に出かける。驛前はいつもの人出。休日の昼間には必ず渋滞する表通りも、常の如し。ためしに覗ひてみたスーパーは、昨日までの狂奔者達など跡形なし。ただ、即席麺コーナーはまだ買ひ荒らされたまま──ヒトは命の危険にさらされると、不健康になりたがるらしゐ。蒸し暑ゐのが少し気に食はなゐが、せっかくなので隣町まで足をのばす。櫻の眺めが綺麗な名所を、ひとつ発 . . . 本文を読む
窓をあける。町は静かだ。休日の朝はいつも静かだが、いつもの静かさとは違ふやうに感じるのは、気のせいだらう。知事が俄か仕立てに発令した「外出自粛令」とは、関係あるまい。國難が頭にあるから、さう意識してゐるだけだ。静かでも、家々に人はいる。姿の見えない人が確かにそこに密集してゐて、それで静かなことに、初めて気味悪さを覺える。さういふ静けさを、初めて知ったやうな。鳥の囀りは常の如し。町を通る鐵道の音も常 . . . 本文を読む