東京都江東區海辺と南砂町の境を流れる橫十間川──歌舞伎劇「東海道四谷怪談」で“だんまり”が演じられる“砂村隠亡堀”の旧跡を訪ねる。
この“だんまり”で演奏される下座音樂が「露は尾花」、昨年九月に大阪で觀た前進座版「東海道四谷怪談」のこの場で、“茶屋女おもん”に扮した河原崎國太郎の華やかさが強く印象に殘り、それを自分なりに取り入れて作品にしたいと拵へたのが、現代手猿樂の「春雨おもん」、
端唄「春雨」の冒頭に「露は尾花」をくっ付けて、“だんまり”の芝居をアレンジした振りを創って一曲にし、先月に上目黒氷川神社の神樂殿で披露す。
端唄「春雨」の冒頭に「露は尾花」をくっ付けて、“だんまり”の芝居をアレンジした振りを創って一曲にし、先月に上目黒氷川神社の神樂殿で披露す。
本當はその前に當地を訪ねておきたかったが“ビンボー暇なし”、今日の五月晴れを好機とやうやく出かける。
芝居では幽靈よりも人間のはうが恐ろしい“ドロドロ”劇が展開される當地も、現在では綺麗に整備された静かな親水公園となっており、それを幸ひに昼食の辯當をひろげて、今日に来たのはやはり必然であったと感じ入る。
長閑平穏な時間はたとへその一瞬(とき)だけでも、思ひ出として胸に匿(しま)っておくことで、それは永遠の時間となるはずだ。