迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

初日初音。

2018-07-01 18:44:53 | 浮世見聞記
七月最初の日に、今年最初の蝉の聲を聞く。

夏が、いきなりやって来た。


強ひ日差しに街は白く揺らめき、

海と空の深い青が、



目にしみる。





先代桂小文治の「辰巳の辻占」が収録された中古CDを見つけたので、廉価を幸ひ手に入れる。



若手時分の大正時代に上京して以来、東京の噺家として活躍し、中堅までは新作物を、晩年は故郷の大阪を偲んでか、上方落語の大ネタをよく手がけてゐたと云ふ先代小文治が、江戸落語の「辰巳の辻占」を演ってゐたとは珍しいと思ひさっそく聴いてみると、ハメモノの入った濃厚な上方落語。

そのハメモノに上方唄の「由縁の月」が取り入れられてゐるあたりは歌舞伎(しばゐ)の“夕霧伊左衛門”の風情そのままで、コンチキチキと鉦が聞こえて来さうですらある。

私はまだ聴いたことがないが、元になった上方落語の「辻占茶屋」が、こんな雰囲気なのかもしれない。


中古品として手に入れた一盤だが、開封してみると明らかにパリパリの新品。

発売が1997年となってゐるから、実に二十年以上も手付かずのまま流れ流れて私の手に入り、やうやく初めての音を聴かせたわけだ。

と云ふことは、一度も再生されることなく廃棄されるCDが、見へないところでは数知れず、といふことでもあるのだらう……。


なんであれ、今日手に入れた一盤は、私の大切な音声資料のひとつに、加へられたわけである。
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