房州佐倉城趾の国立歴史民俗博物館にて、特集展示「海の帝国琉球」を観る。
首里城に象徴される琉球王國と云ふと、江戸時代初期に“倭人”の侵攻をうけて従属させられた苦難の王國、との印象がある。
まう昔になるが、NHK大河ドラマの「琉球の風」がその時代を描ひたドラマで、個人的には尚寧王役の沢田研二さんの、気品高い演技が印象に残ってゐる。
しかし、その琉球王國も中世には、独立した文化と風習をもつ“集落(クニ)”だった八重山や宮古を、武力で攻めて支配下に置く歴史を持ってゐた──
十五世紀までの琉球につひては私も全く知らず、今回の特集展示はそんな盲点を衝ひた興味深い内容で、「十六世紀に突然消滅した」集落の遺構から出土した膨大な陶器の欠片が、倭人の知らない激しい歴史の事實を訴へる。
そして、二年前の秋に首里城正殿が全焼したとき、祖先が琉球王國に侵攻されたと云ふ或る沖縄縣民の高齢者が、首里城への反發心を語った記事を讀んだことを思ひ出した。
そんな琉球王國時代の遺構は、第二次大戰後に米軍用地となった際、一部が破壊されたと云ふ。
歴史と因果は巡ることを、思はずにはゐられない。
まうひとつの特集展示である「アイヌ文化へのまなざし」も、今回ぜひ観ておきたかったもの。
英國人醫師ニール・ゴードン・マンローによって1930年(昭和五年)に撮影された、自然界と共存するアイヌ文化の一端を傅へた映画は、相手の歴史と文化を尊重することの大切さを切實に訴へる、最上のドキュメンタリーフィルム。
近頃、アイヌ民族を侮辱する言動を公にした者がゐたやうだが、相手への無知は自身に對しても無知であることを曝してゐるに他ならない。
久しぶりの遠出、大いに収穫あり!