東京都目黒區の上目黒氷川神社にて開催された地域ふれあいまつり「第9回 おかげマルシェ」に参加し、神樂殿にて現代手猿樂「河原左大臣(かはらのおとど)」を舞ふ。
昨夏に同じ會場で裃の略式にてつとめてゐるが、面と装束をつけた本式は人災疫病禍が眼前に迫った令和二年二月に、山形縣米澤市の雪まつりに参加して以来、四年ぶり。
私の好きな能のひとつ「融」を基にして、自分なりに創った愛着ある作なだけに、
人災疫病禍が落ち着いた暁には再び必ず、と願ひ續けて今日にその御縁を結ぶ。
先月にみちのくを旅した際、作中でも謠ふ『みちのくの 信夫もぢずり 誰ゆゑに……』の和歌(うた)ゆかりの歌碑、また文知摺石を文知摺觀音に拝し、
その謠ひの發聲を仙薹郊外の海原に近きほとりで大いに稽古し、
それが今日の舞薹で結實したことで、あのとき日和山から捧げた震災犠牲者の方々への黙とう共々、やっとひとつ自分なりの慰靈を果せたかな、と考へる。