まう夏ではなし、かと言って秋でもない中途半端な陽気ですが、さうですか、“読書の秋”ですか………。


いや、私は季節に関係なく一年中、本を読みますよ。
読む本を切らすと、たちまち禁断症状が出るんで……。
ですから常に買ひ溜めた状態になるんです。
かういふのを、ツンドクとか云ふらしいですね。
私は興味を持った本なら、分野に関係なくなんでも読みますよ。
逆に浮世で話題の作品でも、興味がなければ完全無視です。
もっとも、興味を感じたことは一度もありませんが。
ええ、アレは出版社が報道屋を手先に使って煽ってゐるだけですからね。
そんなのに煽られるヒトって、結局は騙されやすいヒト、ってことでしょ?
自分でもこんな本を書ひてみたいとか、舞台となった場所を訪れてみたいとか、さういふ心が奮ひ立つ作品に出逢へた時の幸福感は、また格別ですね。
いや、書名なんていちいち挙げてゐたら、キリがありません。
べつに他人(ひと)にオススメするつもりもありませんし。
……ええさうですよ。
さういふのって、自分の感性の押し付けみたいで、私は好きではないんです。
ススメるのも、ススメられるのも。
私は過去に他人(ひと)からススメられた本で、よかったと思へた本なんて、一冊もありません。
だから、ヒトにススメたりもしないんです。
『自分で見つけた自分だけの一冊』──
これこそが、真実(ほんとう)の寶物と云ふもんでせうね。