ラジオ放送の觀世流「氷室」を聴く。
今は昔、山中に設けられた天然の氷貯蔵庫を氷室(ひむろ)と云ひ、夏場にはここから氷をミカドへ献上云々、亀山院の臣下が丹波國の氷室山中で出逢った氷室を守る老人は、實は氷室明神の化身にて、やがて正体を現すと、ミカドへ氷を献上する様を見せて御代を壽ぐ──
曲中の季節は春であり、夏の曲ではないが、“氷”が主題ゆゑに現在では夏場の演能會で、ちょくちょく仕舞でも舞はれたりする。
私も暑い季節に忘流の仕舞で觀たやうな記憶があるが、はっきりしないのは暑さでボンヤリしてゐたからか?
氷のやうにシャキッとした今回の謠に、まずは今のボンヤリとしたくなる夏日を忘れて、しばしの涼を聞く。