川崎浮世絵ギャラリーにて「SHO(笑) TIME! 戯画展」を觀る。
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後世の漫画へとつながっていく浮世繪の“戯画”を集めた企画展で、今回の前期展示では歌川國芳、廣重、河鍋暁斎に焦點を當てる。
戯(ざ)れゑも江戸時代まで下るとだいぶ庶民臭──低俗味が濃くなり、洒落もだいぶこじつけだったりして、いささか泰平ボケしてゐるやうにも映る。
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(※案内チラシより)
その後に突入する幕末の世情不安は、さうした“泰平の眠り”から叩き起こされた反動でもあったらう。
そんな暢気な作品たちのなかで、じゃれつく狆を抱く若い女性の表面(うはべ)と本音を曝した歌川國芳の「虚と實心の裏表 狆を抱く女性」が、今回いちばんの逸品と思ゆ。
顔を舐めてくる狆をうはべで可愛がりながら──それでも本音のチラつくところがミソ──、裏ではイヤだわ汚らしいと粗雑な江戸弁で罵る辛味の効いた皮肉さは、たしかに漫画本来の精神に通じる面白だ。