十五年前、十年間籍を置いてゐた組織に幻滅し、訣別する勇氣を私に與へてくれたのが、アリス九號.だった。
當時結成四年目だったこのV系ロックバンドの、「MIRRORBALL」と云ふ曲との出逢ひがなければ、新たな人生へと飛び込んで行く勇氣は湧かなかったかもしれない。
十五年前のあの時、名古屋で出逢ったアリス九號.は、間違ひなく私の背中を押してくれた。
新たな生活を始めた私はアリス九號.のファンクラブに入會し、ニューアルバムやニューシングルを購入し、都内や近郊でのライヴに通ふなどして數年を過ごしたが、グループ名の表記を“Alice Nine”とヨコ文字に改めたあたりから、だんだんと彼らの音樂の方向性が自分の氣持ちとそぐはないものを感じ始めて距離をおくやうになり、以降は彼らが所属事務所から独立して“A9”となり、そして再び“アリス九號.”に戻ったことは、仄聞で知るのみとなった。
しかし、アリス九號.のあの頃の樂曲は、いまも折に触れて聴いてゐる。
あの頃の共感は現在(いま)も変はらないし、これからも変はらないだらう。
そもそもアーティストなんてものは一國一城の主ゆゑ、徒党を組んで行動することには難しいものがある。
無期限“凍結”であれなんであれ、彼らがこれまでに創ってきた音樂が、これで消滅するわけではない。
音樂は聴き續けることで、人の壽命を超えて生き續けるのだ。