ラジオで、今日が『「リンゴの唄」の日』であることを知る。
「リンゴの唄」とは松竹映画「そよかぜ」の主題歌、その「そよかぜ」が昭和二十年の今日に公開されたことに因む云々。
歌劇女優だった並木路子主演の「そよかぜ」は、私も十年ほど前に當時は國立近代美術館フィルムセンターだった現在の國立映画アーカイブで、一度観てゐる。
故郷の田舎へ帰ってしまった並木路子演じる“ミチ”を、上原謙演じる青年が追ひかけて訪ね、そして二人がバッタリ出逢ふその絶妙な間で、「リンゴの唄」が流れる──
さういふ場面であったと記憶してゐる。
そして、終戰直後にこれだけ質の高い綺麗な映画を撮れた當時の日本の文化力に、私は日本が戰後復興を成し遂げ得た理由を、深く識ったことだった。
この「リンゴの唄」につひては並木路子のレコーディング時における葛藤が傳はってゐるが、それは既に様々な人が述べてゐるので、いまさら私が講釈することでもない。
ただ、「リンゴの唄」を復刻版CDで久々に聴ひて、静かに偲ぶのみである。