迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

すなわち『命』。

2018-10-04 00:00:13 | 浮世見聞記
“平成の大横綱”の若い弟子が、

「部屋を移籍しても、師匠から頂いたしこ名は変へない。変へるとしても、師匠の一字は変へない」

と表明してゐることに、深い共感を覚える。


その道で生きる者にとって、師匠から頂いた名前とは、命に等しいもの、寳なのだ。


私が師匠亡き後、大阪で五年もの間独りで生きてこられたのは、師匠が私に遺してくれた“藝名”の力に拠るところが大きい。


師匠から頂いた名前とは、つまりさういふものなのだ。


ところが私は、その寳を東京へ戻ってから間もなく、確信犯によって騙し取られたことがある。


こんにち取り返すまでに十年近くかかった大失敗を味はってゐるだけに、私はその若い力士の心意気を、心から称賛したい。

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