迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

驚愕の二枚目、哭く二枚目。

2019-01-27 20:11:49 | 浮世見聞記
活弁士•坂本頼光氏による「サイレントシネマ&活弁ワールド」を、今年も横浜市岩間市民プラザで楽しむ。


いつもの大仕掛けな道具立てと体を張ったギャグで、約二十分間笑ひを誘ふといふより、驚きを誘はれる「キートンのマイホーム(文化生活一週間)」(1920年、米)と、大正十四年(1925年)に“バンツマ”こと阪東妻三郎が主演した画期的なチャンバラ作品「雄呂血」の二本立て。


バスター•キートンも、阪東妻三郎も、どちらも細面の二枚目。

特に「雄呂血」の、社会性と人間性の理不尽さに苦悩し、やがて血を吐くやうにして刀で絶叫する阪妻の姿は、やはりあの容貌だからこそ、観る者の心に強い印象をのこす。

──もちろん、見た目だけの問題ではなゐことは、論を俟たない。

そこへ、人物を緻密に掘り下げた坂本頼光氏の見事な活弁とが相俟って、サイレントフィルムのなかの阪妻が、生の聲をもって私たちに訴へかけてくる、その迫力!


活弁は、近代文明によって生み出された傅統話藝の新たな形であることを、二十一世紀におゐて見事確立してゐる。




その活弁士を主人公にした新作映画が、かつてはヒット作を飛ばしてゐた監督によって撮られさうで、坂本頼光氏が活弁士役を演じた二人の若い無名役者に実技指導を行なったことを、上映前の挨拶のなかで披露してゐた。

昨年の夏から年末にかけて、坂本頼光氏はその無名役者に付きっきりで活弁の指導にあたったさうで、他人(ひと)に教へるくらゐなら自分でやったはうが早いと考へる私などには、到底出来ない技だと感心する。


なにしろその若い無名役者たちが、今年十二月の公開までギョーカイに生き残ってゐるかどうか、わからないのだから……。

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