歌舞伎座の前に立てられた、今月の芝居らしき繪看板を見て、おや、と足を停める。赤いキモノに金色の烏帽子をのせた、三番叟に扮してゐるらしい役者の手にした扇の繪柄が、引っ掛かったのである。單純に見れば、能の修羅物で敗将の靈が用ゐる「負修羅扇」の繪柄と、似てゐる。これは“波に日の入り”とか云って、赤い日輪は波に沈む夕陽を表はしたものであり、三番叟のやうな祝ひモノには似つかはしくないのではない . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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