昼から雨は本降りとなり、散歩に出ることも叶はず。雨とその音にはなんら風情を感じぬ我なれば、せめてあの音くらゐは消さんと、かなり久しぶりに三味線を引っ張り出して、しばし時刻(とき)を忘るる。大昔に、誰かがおのれを棚に上げて「ヘタの橫好き」などと評したままの技量(うで)なれど、今では好きでやってゐることゆゑ、誰憚ることもありゃしねェ。かつて人に頼んで手に入れた、いまは亡き人間國寶自筆の譜が、そのまま私 . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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