迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

かみがみのうたげ。

2016-08-18 19:21:35 | 浮世見聞記
川崎区川崎市宮本町の稲毛神社例大祭で行われた、間宮社中による江戸里神楽を見る。


はじめに、夫婦となった猿田彦神(さるたひこ)と、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が“相生の舞”を舞う「天孫降臨」の一場があり、



つぎに話しはかわって邇邇芸命(ににぎのみこと)が自分の子どもである海幸彦には釣竿、山幸彦には弓矢を与えて自立させる「山海交易(さんかいこうえき)」のうちの“言付(いいつけ)”、



海幸彦と山幸彦がお互いの持ち物を交換する“幸替(さちがえ)”と、人間味豊かな神話がゆったりとした神楽囃子にのせて黙劇で進行する。


最後が喜劇味たっぷりで楽しい「山狩(やまがり)」。



狐、猿、兎、狸が集まって酒宴を開くところから話しは始まり、やがて興に乗った猿が烏帽子をつけて三番叟を舞えば、



兎は杵で餅をついて狐が捏ねて見せるうち、猿がそれをつまみ食ひし、



こんどは狐が真似てつまみ食ひをしやうとすると、誤って杵で手を突かれてしまふ喜劇が展開される。

やがて、狸が腹鼓を打ち過ぎて腹の皮が破れてしまひ、



それを猿が畳職人の手つき縫ゐ合わせる件りは、洒落の利ゐた傑作だ(しかも、烏帽子をのせたままなのが面白ゐ)。

ところがそこへ、狩りに分け入った山幸彦に遭遇し、逃げ遅れた狸は危うく仕留められさうになるが、



間一髪のところで助かり、獲物を全て逃した山幸彦はガッカリして山を下って行く―




照る付ける日射しと、

蝉の大合唱と、

威勢のよゐ神輿の掛け声と、

子どもたちの嬌声とが渾然一体となった夏祭りの場で、

日本国の昔話が、

華やかな装束で、

素朴に語られる。




明日を見たければ、

まずはいにしえの声に、

耳を傾けることだ。
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