神奈川縣相模原市のグリーンホールで、「第三十六回 相模原薪能」を觀る。
屋内で模擬篝火を設へての上演形態もすっかり定着した行政主催の演能會、今年は寶生流宗家が「船辨慶」を、“後之出留之傳”なる小書(特殊演出)を付けてつとめる。
前シテで、義經と向かひ合って涙する件りはわかったが、座席位置の都合で後シテが最後に揚幕あたりでやった型は、全く見えず。
さりながら問題なし。
二期目の相模原市長が、初期腎臓ガンの摘出手術のため今夏に入院したが現在は回復して今月中に退院予定、と開演前に立った副市長の挨拶のはうが、私には印象に殘ったゆゑ。
もちろん相模原市長と面識はなく、ただはるか以前にまだ草の根運動をやってゐた時分から知ってゐるゆゑ、勝手に親近感を抱いてゐるだけのことである。
終演後、外へ出るといまや夏の定番となった不穏な風に不穏な雲。
今日の能で、海上に漕ぎ出た義經一行が遭遇した光景もかうであったかと、なにか怪士の現れる前にと歩を早める。