磐田市にある「見付神社」にお宮参りするという娘夫婦に付き合って、初めて「見付神社」に参詣した。
この神社の本尊は矢奈比売・やなひめ・ということだが、(矢奈比売の名は続日本後記(840年)に登場するが何者かは詳らかでない)、菅原道真(天神様)や、それにまつわる牛の像や、入り口には犬の像もあったりして、いろいろな神様がまことしやかに同居している感じ。
悉平太郎には、次のような伝説がある。
むかし、八月の初めになると、どこからともなく、白羽の矢が町家の棟に突き立てられ、その矢が立てられた家では、娘を供犠に立てなければならない。家主は、娘を生きたまま白木の棺に入れ、見付神社の森の奥深くにおいてくる慣わしになっていた。
泣く泣く娘を森においてくると、真夜中、怪神があらわれて、娘をもてあそび、その後食い殺してしまう。
毎年続くこの人身供犠に苦しむ人々の話を知った旅の僧は、「これを何とかしたい」、と苦心難行の修法に励み、「妖怪が信濃の国の悉平太郎を恐れている」ことを聞き出す。
僧は、早速信濃の国を訪れ、悉平太郎を探す。これが信濃の国で「早太郎」と呼ばれる犬だと分り、この犬を連れて、見付に戻ってくる。
次の年の八月、娘の代わりに悉平太郎を棺に入れて、供えものとすると、案の定、真夜中に妖怪が現われた。棺から飛び出した悉平太郎は、妖怪にとびかかり、格闘の末に、ついに妖怪を倒す。
このことがあって、悉平太郎は、「人々を救った勇敢な犬」として、見付神社に祀られるようになった。信州駒ヶ根でも、同じように「光前寺」にこの犬の供養碑があるが、こちらでは「悉平太郎」ではなく、あくまでも「早太郎」と呼んでいるのだとのこと。
娘たちは、この話にちなんで、わざわざ磐田見付神社にお宮参りをしたらしい。ちなみに、赤ちゃんは男の子。亭主は信州・飯田の出身。
私は、何も知らないで、そのお供をしたという次第。