東京・千駄ヶ谷にある国立能楽堂で、能を見てきました。
代々木の国立競技場に近いこのあたりは緑も色濃く、豊かな自然が能楽堂へのゆったりした気分を演出してくれます。
この日の演目は、「賀茂」「杜若」「天鼓」の3本。
舞台ま近かの正面席からの鑑賞なんて初めてのこと、 素敵な発見が多々ありました。
中でも一番驚いたのは「音」の効果でした。
笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方・囃子方のからみあいの合い間に入る「イヤア」「オー」「ハー」という合いの手の音色の見事さ。その響きの美しさ。
そんなものに惚れ惚れするもは、やっぱり日本人だからでしょうかねー。
演目では「杜若」(かきつばた)がよかったです。在原の業平の伊勢物語に因んだもので、か・き・つ・ば・た・の音を頭に詠んだ有名な歌、
から衣 きつつなれにし つましあらば はるばるきぬる たびをしぞ思う
にちなんだ妖艶なもの。
この舞台を見ながら、
思わず 「 これって日本のオペラじゃない? 」 と思いました。オーケストラは囃子方、プリマを演じるのはシテ役者、舞台を引き立てる謡方たち・・・・・・。
そして、この豪華絢爛たる舞台を堪能しているのは時の大名や武将たち。誰もが教養として「源氏物語」や「伊勢物語」や「万葉集」や「古今集」を諳んじていて、「今日のシテの舞がよい」とか「あの唐衣は斬新だ」とか「鼓方の合いの手が見事だワイ」なんて、舞台を楽しんでいる・・・・・・。
能は、世界的に見てもとても優れた芸術に違いない。だって、イギリスでシェイクスピア劇がうまれるのも、イタリアでオペラが生まれるのも、まだ後のことなんですもの。