陶芸工房 朝

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秋の美術館と静岡県工芸美術展のご案内

2016年11月23日 | 展覧会

今「静岡県工藝美術展」が、「静岡県立美術館」 県民ギャラリーで開かれています。

私も、そこに作品を出品しているのですが、秋の美術館のたたずまいがとても素敵なので、

会場へのプロムナードからご案内します。

 

 

静岡県立美術館は、遠くに南アルプスを望む、自然豊かな日本平の麓にあります。

 

 

構内は、今、紅葉の真っ盛り。

美術館までの穏やかな坂道には、いくつかの素敵な彫刻が設置されていて、

そんな作品を眺めながら、紅葉した木々の中をゆっくりと歩くのが、快適です。 

 

 

秋の感触を楽しみながら歩いていくと、

出会うのは、存在感絶大な女性像     掛井五郎の「  蝶  (ブロンズ)」  です。

 

 

枯葉が地面を落ち葉色に染めて, 秋は深まりを見せています。

 

 

茂みの中でキラキラ輝いているのは、大西 清澄の ステンレス作品 「 涛の塔」です。 

 

 

登り口の途中で、ワイヤロープが自然に錆びて、空間と一体化しつつある作品に出会います。

 

 

時間の中での風化をテーマにした作品。   鈴木久雄  「風化儀式V-相関体」です。

 

 

プロムナードは、おしまい頃になると作品が小ぶりになります。

 佐藤忠良 のブロンズ像  「みどり 」です。そして美術館の入り口へ・・。

 

*

 

さて、お目あての「静岡県工芸美術展」は、この美術館の右サイドのギャラリーで開催中です。

 

 

 

 (中央の作品)「涅・うちなる有機体」が、光栄にも会員最優秀賞を頂きました。

会期は11月27日(日曜日)まで。紅葉を楽しみながらお出かけ下さい。

*

ありがとうございました。

展覧会は、無事に終了いたしました。(12月1日記) 

 


秋の花・竜胆(りんどう) と野菊

2016年11月16日 | 野草

昨日までは蕾だった竜胆が、今朝、きれいに咲きました。

 

 

 

 この花を見ると、なぜか少女の頃に読んだ伊藤佐千夫の「野菊の墓」を思い出します。

まだ15~6歳の少年「政夫」と2歳年上の「民さん」との淡い恋のお話し

秋祭りの前の日、近くの山に棉摘みに行った二人は、そこに咲いている野の花を見て、言います。

 

 

 

「民さんは何がなし野菊のような人だ」

 

 

そういわれた民さんは、「政夫さんは何がなし竜胆のような人だ」   とかえします。

 

*

 

竜胆の花を見ると、なぜか、頭のどこかにインプットされたこのセリフが、思い浮かぶのです。

現代っ子は、こんなセリフを聞いたら笑い出すのでしょうか?

 

 *

手入れもしないのに、今、家の庭には、「竜胆」と並んで「野菊」」が満開です。

 

 

山里に  祭り太鼓ひびき  竜胆の咲けり

 


秋の実・ぬばたま(ヒオウギの黒い実)

2016年11月11日 | 野草

秋の実・その2は真っ黒なヒオウギの実です。

 

暑い夏の日差しの中で、濃い橙色に赤い斑点のついた花を咲かせているのはヒオウギです。

 

Belamcanda chinensis 2007.jpg

ウイキペディアより借用

  

それが、この季節(11月)になると、全くの別人のような顔になります。

それが下の写真の黒い実です。なぜか呼び名も「ぬばたま」となります。

 

 

 「ぬば」とは黒い色を意味する言葉で、黒い色の玉、すなわち「ぬば  たま」です。

 実の色が黒いということから「ぬばたま」は、「黒」「黒髪」「夜」「闇」など

「黒いもの」を表すときの枕詞(まくらことば)として使われます。

 

ぬばたまの夜の更け行けば 久木(ひさぎ)おふる 清き河原に 千鳥しば鳴く 

万葉集   山辺赤人

                ぬばたまの夜のふけぬれば、巻向(まきむく)の川音高し 嵐かも疾(と)き

                                                       万葉集    柿本人麻呂

 

 

人工の光 のなかった時代「夜」は今私たちが思う「闇」とはまったく違う、

恐ろしいほどの「漆黒」だったのでしょうね。

 

 

その「ぬばたま」の実は、ご覧のように「漆黒」です。

花のないこの季節、私はこの実を「茶花」として使っています。

 

 「古代の闇は、まさに黒という色によって塗られているというべきもので、

「黒(ぬば)魂(たま)」という名称は、十分に畏怖すべき聖性を備えたものでした。

闇は恐れやおののきを決定的にするものでした。

それは、神秘さであり、畏怖であり、威力でした。」(中西 進   万葉の花)

 

ぬばたまの  夜は深まり  雨音の高し

これって、眠れない夜の実感なんですが、これじゃあ  人麻呂と同じですね!

 

ぬばたまの   眠れぬ夜の   雨音の高き 

これで どう? 

 

 

     

 

 


秋の実・サネカズラ( またの名を ビナンカズラ)

2016年11月05日 | 野草

花の数が減って、その分、赤や黄色や青や黒色の「実」が目立つ季節になりました。

 

 庭掃除をしていたら、赤い実と目があいました。サネカズラ(ビナンカズラ)の赤い実です。採って花器に活けようとしましたが、つるばかり長くて、花器にはさせないので、掛け花に活けました。

 

 

赤い実のさきに、長い長いつるが伸びています。

 

さねかずら  後も逢わむと夢のみに 誓ひわたりて 年は経につつ(万葉集 巻11)

山高み 谷へに延へる たまかずら 絶ゆるときなく 見むよしもがな  (万葉集 巻11)

 

 

ここにみられる かずら はつる草の総省で、さねかずらびなんかずらともいわれます。

 

  これらの歌は、このかずらのつるが伸びていって後に出会うさま、つるの絶えることなく伸びていくさまを「思い」に託したものです。出会いは当然  恋のそれですから「さね」に「さ寝」のひびきを感じ取ったことも必然でしょう。(中西 進・万葉の花)

 

 

     

  赤い実にばかり気をとられて、「つる」の行方など気にも止めなかった私の感性とはちがって、花のさきに伸びていく「つる」を目ざとく見つけて、恋人との対面をイメージとしてとらえて言葉にかえた古代人のものの見方、感性の豊かさに、感じ入るばかりです。

 

クリスマス   オーナメントに   サネカズラ

 

 


日本美術展覧会 ・ 略称 「日展 」が始まりました。

2016年11月01日 | 展覧会

会場は、東京の六本木にある国立美術館です。(設計は黒川紀章氏)

 

National Art Center Tokyo 2008.jpg

写真はウィキペディアから転載

 

美術展は、日本画・洋画・彫刻・工藝・書道 と5部門で、それぞれ展示室が分かれています。 

3階エスカレーターより下階を見る。(3階は書道の展示室) 

私の属している陶芸は、「工藝」の部で2階です。

 工藝の展示風景

 

日展は、公募展ですから、原則、誰でも、どこからでも、応募できます。

工藝の場合、応募作品の搬入は10月8日でした。

その日から入選者発表の16日までが、期待と不安の交錯した何とも言えない2週間となります。

普通は一度入った人は余裕で入れそうに感じますが、

どうしてどうして、そんなに甘いものではありません。

みんな 何回もの落選を繰り返しながら、ようやく勝ち取る入選なのです。

毎回毎回が真剣勝負です。 

*

どうしてそんなに難しいのかしら?

落選を繰り返しながら、私もそう思っていました。

全国の作家がこれに挑戦するのは、この展覧会の歴史の重さにあるのだと思います。

「日展」は、1907年(明治40年)に、文部省によって開催された文部省美術展覧会「文展」を前身としています。政府が主導で開催された日本で最初の美術の公募展です。「文展」は、その後、帝国美術院が創設されると「帝展」となり、さらに第2次世界大戦の後(昭和21年)に「日展」と改称されます。その間、109年という歴史を持つ日本の最大の美術公募展ということです。

平成26年にいろいろな問題が持ち上がり、新たに組織を改めたのは、周知のとおりです。

今回が 改組 第3回 日本美術展覧会  (12月4日ま) というわけです。