安芸の小京都といわれる竹原市にある
「豊山窯」についてだけは記しておきたいと思います。
(山陰の旅の続きです)
豊山窯は、瀬戸内海を遥かに見晴るかす小高い丘の上にある
陶芸家「今井政之」氏の窯です。
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今井政之氏は日本の象嵌法の第一人者で、
世界的にも有名な日本陶芸界の重鎮のお一人です。
象嵌とは、陶器の肌に模様を埋め込む陶芸の技法で、
ここの展示館には、
氏の素晴らしい作品の数々が展示されています。
日本芸術院会員でもある今井政之氏が、
郷里・竹原の海の見える丘に開設したのが
「豊山窯」と茶室「松聲軒」「柳慶亭」です。
瀬戸の海を庭に見立てた、
素晴らしいお茶室「柳慶亭・扇の間」で、
先生の奥様からお茶を頂戴しました。
このお茶室は1世紀も前に、
「岡山藩主主席家老伊木三猿斎」が建てたもので、
もともと京都にあったものを、縁あって今井氏が譲り受け、
この地に移築されたものだそうです。
波ひとつない蒼い海に浮かぶ緑の小島を眺めながら、
一服のお茶を頂いていると、
一世紀の時を隔てて、この地に居場所を見つけた
お茶室の感慨が、伝わって来るような気がします。
古から受けついだ「伝統」を守り抜こうとする
「文化人」と言われる人たちの営みの一端を、
垣間見た想いがしました。
平山郁夫氏の訃報を聞きました。
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つい先日、瀬戸内海の美しい島・生口島の
「平山郁夫美術館」を訪ねて来たばかりでした。
生口島は、平山郁夫氏生誕の地です。
美術館では、秋の特別展「幻想美の世界」の開催中で、
氏の精神世界を感じさせる素晴らしい作品を、
たくさん見ることができました。
看板も何もない日本建築の美しい美術館です。
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「青い海、緑の島々、神秘的な潮の流れや、群青色の海は、
平山少年の心に大きな影響を及ぼしました。
画家・平山郁夫の感性は瀬戸内の風土に育まれたといえましょう」
と解説がありましたが、確かに「しまなみ海道」の美しさは格別です。
日本にも、こんなに美しいところがあったのかと驚かされます。
私は氏の晩年の、宗教性の強い作品が好きです。