陶芸工房 朝

アトリエ便りです。どうぞよろしく。

野萱草(ノカンゾウ)

2024年08月23日 | 野草

夏も盛りのこの季節、田んぼ道や川の土手でこんな花と出会ったことありませんか?

野萱草です。蕾は解熱作用、根は利尿作用、消炎や鎮痛にも効力があると言う薬草の一つです。若芽はアクもなく食感もよくおいしいとか。私は食べたことがないのですが、一昔前までは、人と植物の関係は今よりずっと密接で日常の暮らしと深く繋がっていたのでしょう。

花は、色合いこそ派手ですが飛び切り美しいという程でもなく、どちらかと言えば田舎道で出会った普段着の女の子(少女)といった印象・・。(これは私の主観ですが・・・。)

お転婆の女の子のごと野萱草

 

 

家のノカンゾウは、何の手入れもしないのに毎年同じ場所に同じように花を咲かせます。それが、いざという時には薬草になり、食料にもなり、仏花にもなる・・・まさに優しくたくましい「お母さん」のすがたもかさなりますね。

萱草の花の記憶の中の母  福田素吾

何だか、車を走らせてノカンゾウのいっぱい咲いている野原かなんかに行ってみたい気持ちになりました。

 


弟切草

2024年08月16日 | 野草

弟切草・オトギリソウ、弟を切るなんて何て物騒な名前だろう! 

誰が何処から持ってきて植えたのか定かではないが、この季節になると我が家の庭では、細い茎の先に小さな黄色い花をつけた弟切草が揺れている、写真の小さな黄色い花が弟切草、すっきりと伸び上がった茎の先に咲く花は名前と違ってむしろ繊細で可憐だ。

 

   

そもそもこの奇妙な名の謂れはこんなお話。

鷹の傷を治す秘薬であるこの植物のことを弟が誰かに教えてしまった。それを知った兄は怒って弟を殺した。「たかが薬草ごときで・・」と思うが、先祖伝来の秘薬は命と同じぐらいの重みがあった、という事だろうか?・・・、いかにも悲しいネーミングである。

この暑さの中、この花が庭の階段の登り口で揺れている姿は、おどろおどろしいよりむしろ清々しい。

 

ここまで書いた時だった。

突然、PCがサイレンのような警戒音を鳴らして「あなたのパソコンはハッキングされました。すべての機能は停止しました・・・」と叫ぶ声。

詳しくは覚えていないが、そんな意味合いの言葉が何回も何回も繰り返し響き、サイレンのような警報音が鳴りやまない! 画面もいつの間にか怪しげな画面に代わっている・・・・。

まさか自分のパソコンがハッキングされるなんて!  初めてのことだったので驚くというよりどうしたらよいのか解からず慌てた! 相談する相手もいない、茫然と画面を見つめていると画面に別枠の囲みが現れた。

「相談窓口 すぐに対処 今すぐ下記に電話 電話番号0000 マイクロソフト社」 

 

みっともないから詳しくは書かないが、

これがよく聞くなりすまし詐欺だと気が付くまでには、しばらく時間がかかった。

長い間パソコンは使っているけどどちらかといえばパソコン音痴、スマホもパソコンも車も然りだ・・。内部の仕組みなど全く分からない、それが凶器になるなんて思ってもみなかったが、現に詐欺にあっている人も多いという.。思えば弟切草のような裏切りへの報復も世界を見れば後を絶たない。世の中は目まぐるしく変化し続けているように見えるが、人間の本質は変らないという事か。

昨今の混乱した世界を見るとパソコンを初めとするATもありがたいような、ありがたくないような・・・。 

 

可愛がると実を付けるじゃがいもおくらトマトや季節になると黙っていても花を咲かせてくれる野の花々たち。 

そんなものを本当に愛おしく感じてしまう・・・ 「よっぽどのアナログ人間ネ」って言われそうだけど。


文月・イワタバコが咲いたよ

2024年07月01日 | 野草

何ということでしょう、ちょっとブログをさぼっている内に、もう七月です。

紫陽花が満開になってその前でホタルブクロが揺れている「ああ 蛍の季節だ」と思っていたのに、赤パンパスが1メートルも伸びて紫色の花を咲かせ、負けじとばかりに赤い鬼百合が2メートルもの上空から下を見下ろしている・・・、そんな初夏を迎えています。我が家の庭は雨のせいもあってでしょうか、うっとおしい程の雑草と緑に覆われてしまいました。

月日ばかりが無為に過ぎて、時に取り残された私はその後をただ訳もなく追いかけている、そんな空しく物悲しい気分になっていました。

 

今朝、雨の庭を見回っていて思いがけない発見をしました。イワタバコの花が咲いていたのです。

山じしゃ(イワタバコ ) の白露重みうらぶるる心も深くわが恋止まず  柿本人麻呂

 

万葉集にある柿本人麻呂の歌です。イワタバコは大昔から日本の山野に咲くごく自然な植物だったのでしょう。

山合いの水の滴る谷間にひっそりと咲いている薄紫の美しい花、でもなかなか出会えないこの花は、心の奥深くに留め置く恋しい人を想わせるに十分でした。現代のように赤や白やピンクの派手な花のなかった奈良の時代、意外な場所に咲くこの花の姿は十分に晴れやかで美しく貴重なものだったのでしょう。

 

我が家の花は、つくばい(手水鉢)らしき岩の割れ目に咲いています。あまり元気もなく色もさめています。もともとは井川峠の滝水の滴る岩場に咲いていたもので、そこではもっと鮮やかで生き生きしていたと思います。

岩たばこふるさと恋し滝しぶき

 


イカリソウ

2024年03月25日 | 野草

ヒメシャラの樹の下にま~るく広がった薄緑色、右上はフタリシズカ、手前がイカリソウ。

     

 

イカリソウってひょっとして「怒り草」って思いますよね。

でも、花の形を見ると分かります。イカリは「錨」船を固定する重りのような役割をするあの錨です。

花弁をグっと開いたその中心が花芯で、4本の花弁で花全体を支えた形が錨のようにみえます。

この緻密で難解な仕組みは、陶芸で再現しようとしても多分無理、神様の「いたずら」みたいなもの・・。

   

          

で、花言葉は「あなたを離さない」何たって錨ですもの!!

 


彼岸の前に

2023年09月13日 | 野草

あっという間に九月!と書いたばかりだと思っていたのにもう九月も中旬、無為な時間を過ごしていたせいか月日の流れの速さに驚かされる。

今年の「彼岸」は9月の20日から9月の26日。真ん中の23日が秋分の日で休日である。今頃書くのもおかしいけれど、ずっと「春分の日・秋分の日」は「昼夜の長さが同じ日」ぐらいにしか思っていなかった。

それが、よく考えてみると「彼岸」とは、すなわち煩悩の流れを超えたあちらの地、つまり涅槃の地であり悟りを意味するのだと気が付いた。それは、多分人間が長い歴史の中でたどりついた宗教的な叡智・・・・・、人の生と太陽の動きを重ねることで彼岸会の思想が生まれたのだろうと思った。これは、仏教の中でも日本独自のものだそうで、日本人の自然観が表れていて面白い。

閑話休題・

そんなことはいいとして、草ぼうぼうの庭の草をむしっていたらご覧のような集団にぶっつかった。

1週間後に花を咲かせるつもりらしい彼岸花たちだ。

今日は9月13日、ひょっとっすると人間よりもずっと精緻に天地の真理を生きているんじゃないかしらなんて・・・思ってしまった。

あらはなる秋の光りに茎のびて曼殊沙華ただひたすら高く


イワタバコ

2023年07月12日 | 野草

イワタバコ・日の当たらない湿った岩などに生え、タバコに似た葉をつけ、星形をした紅紫の花を下向きに咲かせる。

ずっと昔、井川峠に行く途中の岩場で見つけて持ち帰り、家の庭石につけて咲かせたのが一代目。一代目が絶えて、これは知人に頂いた我が家の二代目のイワタダコ。ほっておいたのに夏の気配をさっちしてか、可愛い花を咲かせた。どこかで岩を流れる清水の音がしてきそう・・・。

滝川の鳴りこもるあり岩たばこ   阿波青畝


蕗の薹

2023年02月20日 | 野草

春だよ 真っ黒な土の中から真っ先に顔を出したのは 蕗の薹

 

    

あっちの隅っこから、ほらこっちの隅っこからも 蕗の薹

 

     

 鮮やかなこの色は萌黄色? いえ、どう見たってこれは 春色。

 

       

   春色フキノトウ 

 


紫・むらさき考

2022年10月06日 | 野草

日の出が遅くなった。ちょっと前までは5時起きして庭の草取りをしたりもしていたのに、今朝などは6時のアラームが鳴っても起きる気がしない。気温もグッと下って今朝など20℃。秋の山野草が咲き始めた。写真はイワシャジンだが、やや薄紫色の花は優雅で釣鐘状の形と相まってなかなか美しい。富士山を中心にしたフォッサマグナの比較的に狭い範囲だけに咲くといわれる山野草だが、その気品ある姿を「いいな」と思って眺めている。

 

紫色の花を見ながら「どうして人はむらさき色にひかれるのだろう?」とふと思った。

なるほど、ギリシャやローマでは、貝紫からとる紫をロイヤルパープルとして3600年も前から敬っている、日本だって聖徳太子の冠位12階の最高位は色だ。そればかりではない、式部の書いた源氏物語の女主人公はの君だし、清少納言は「すべて なにもなにも なるものはめでたくこそあれ 花も 糸も 紙も 」と言っている・・・。

手持ちの日本の色辞典(吉岡幸雄著)をみると、深紫 古代紫 江戸紫 浅紫  等々と色の濃淡を表す名がずらずらと並び、さらに 藤紫 杜若(かきつばた)菖蒲 菫 葡萄 紫苑 藤袴 桔梗(すべてがつく)等々と花による色の呼称もたくさん並んでいる。一口に紫といっても、その日の天候や儀式の格や着こなしの色目の合わせによって、無限の組み合わせと規則があってのことだろうが、その奥の深さには思わずため息が出てしまう。

ついでに、今庭に咲いている藤袴でいえば、どんな紫色をさしているのか調べてみた。

藤袴は早秋に白に近く紅がかった紫色の小花をつける、その花の色を「藤袴色」という。イワシャジンとはまた違う種類のなのだ。

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紫色の花は「美しいな」と思う、でも、私は紫色の服を着た記憶がない。「色白の美人タイブじゃないから紫は無理!」といえばそれまでだが・・・、自然の中で見る紫と着衣の紫とではちょっと違うよ、というのが現代人としての感覚。

が、「紫」を美とする心をずっとずっと遠い祖先のDNAから無意識の内に引き継いでいて、それが私の美意識の底流にあるのかもしれない・・・などと思ってしまった。


スズメウリ

2022年09月27日 | 野草

裏木戸を開けると、いろんな雑草に交じって、1センチほどの小さな緑色の玉が吊る下がっているのが目に入った。

普通の目でみても、きっと見落としてしまうに違いない程の小さな小さな緑色のボールだ。

 

 

「あれ、スズメウリ!」と近くにいた友人。カラスウリならよく知っているけれど「スズメウリ」なんて聞いたこともない、初めて聞く名前だ。確かに実の大きさでいえばカラスとスズメほどの違いがあるが、蔓の具合はどことなくカラスウリに似ていなくもない。「カラスウリ」と「スズメウリ」とはよく名付けたものだと、思わず笑ってしまった。

 

 

蔓を手繰ってみると小さな小さな白い5mmにも満たない花は、細やかな細工物のイヤリングのように愛らしい。

「カラスウリ」は人間の寝静まった真夜中に、えも知れぬレース状の美しい花を咲かせる、もしかしたら「スズメウリ」も負けずに真夜中華麗な演出を見せるかもしれない、などと名前からくる連想を楽しんでしまった。

 

全開した雌花 

          写真はウイキペディアより借用・夜のカラスウリ

 


彼岸花ー2

2022年09月19日 | 野草

亡くなっ友だちから頂いた白色の彼岸花が、今年は妙に元気がよくて、ひと固まりになって咲いている。赤色が突然異変を起こして白色に変身する、そういうことはいろいろな生きものの中によくあることで、突然変異も驚くことではないと知ってはいるが、白色の彼岸花はなぜか「白花曼殊沙華」という別の植物のような感じがする。

 

子供のころ、川の土手いっぱいに咲いている赤い彼岸花を見て、怖いと思った記憶がある。毒があるから触ってはいけないとか、死人花とか誰かに言われたような気もするが、子供心にも美しいとは思わなかった。彼岸に咲くことから 死者・墓・地獄 などと言う言葉とつながっていて、それが一層この花を不気味なものにしていたように思う。

 

 

大人になって、寺山修司の短歌などを知ってから燃えるように咲いている赤い彼岸花を眺める目が変わったが、何よりここ(山の裾の家)に住むようになってからは、彼岸になると自然に生えてくるこの花の、その時と所のあまりの正確さに感動し、愛おしむようになった。

彼岸花の花言葉は「また逢う日を楽しみに」というらしいが、今年も、たくさんの人々のたくさんの想いを一身に背負って、今、満開である。

 


ヒメジョオン(姫女苑)

2022年06月08日 | 野草

空晴れて何やらうれし姫女苑(ヒメジョオン)

今日は朝から轆轤挽き・・・。何となく久しぶりに轆轤を挽きたい気分・・・・。

轆轤を挽きながら窓の外を見ると、雨上がりの緑がキラキラと輝いてひときわ美しい。緑と言っても、ここの緑は自然に生えてきた名もない雑草たちの集まりだからいわば雑草園だ。その雑草園の草たちが、互いに程よいバランスを保ちながら主張しあって作りだしている風景も、どうしてなかなかのもの・・・。そんな中でも今日の主役は姫女苑だ。雨の後に急に伸びた背の先に白い野菊のような花をつけている、それがひときわ目をひき美しい。

 

ヒメジョオンは、小さいジョオンという意味で「姫女苑」と書く。もともとは北アメリカ出身で、明治時代に園芸用として日本にやってきたもの。それが、何故か後に雑草として生きる道を選んだ。鉄道の路線の開線に伴って全国に広まった。

ヒメジョオンとよく似たものにハルジオンがある。こちらは「春紫苑」と書き、ハルジオンはタネが風で運ばれるため、落ちぶれた家の庭によく生えるので「貧乏草」ともいう。こちらの方が繁殖力が弱い。 (稲垣栄洋・雑草図鑑)

(写真は、アトリエから見える雑草たちの姿です。)


蒲公英・タンポポ

2022年04月09日 | 野草

たんぽぽのぽぽっと絮毛とばしたり      加藤楸邨

 

桜が終わって、アトリエの前の空き地はタンポポでいっぱいでした。

そのタンポポが咲き終わったと思ったら、透き通った白いま~るいボールになりました。

シャボン玉みたいなボールがまるでクラゲのように宙に浮いています、それもたくさん!

何日かすると、ま~るい生きものみたいなタンポポの絮毛は、風に乗って青い空に消えていきました。

まだ見たことのない大地をめざして、新しい命の誕生のための 冒険の旅の始まりです。

蒲公英(たんぽぽ)の絮毛の(わたげ)中に宇宙あり


うちの春三題

2022年02月12日 | 野草

雨上がりの黒い土くれの中から、ほら 蕗の薹が一つ 顔をだしたよ。

枯葉ばかりの雑草の中に、 黄色いタンポポが ほら一つ 咲いてるよ。

春一番に芽を出して春いちばんに花を咲かせる、

我が家の優等生 バイモユリ たちだよ。