音楽の捧げもの BWV1079
ーみ恵み深い君主にー 心から恭しく、陛下に音楽の捧げものをおささげいたします。
その中の特に高貴な部分は、陛下が自らお作りになりました。・・・・略・・・・
1747年7月7日 心から忠実なる J.S.BACH
バッハの「音楽の捧げもの」のジャケットです。その最初にあったのが、バッハがフリードリッヒ大王に捧げた
献辞。ちなみに表紙絵は有元利夫の「花火」です
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「母の日」に、いきなりズシリと重い宅急便が届きました。
「なんだろう?」と開けてみるとバロック音楽を特集したLPレコード盤20枚入りの音楽全集!!
THE BESTCOLLECTION OF BAROQUE MUSIC
「音楽の捧げもの」ならぬ 「音楽の贈りもの」でした。
ヘンデル・バッハ・ヴィヴァルディ・モンテヴエルディ・アルビノーニ・スカルラッティ・・・
フルート・バイオリン・ギター・オルガン・管弦楽・トランペット・オーボエ・ハープシコード・・・
盛りだくさんのバロック音楽を収めたLPレコードが20枚、そのジャケットの装丁は有元利夫の絵です。
思いがけない贈り物に驚きながら、とりあえず、その全部を部屋に並べてみました。
ほら、こんな具合、部屋がいっぺんにバロックの世界になりました。
バロック音楽のこともですが、私たちには、有元さんの絵にもいろいろな思い出があるのです。
有元利夫の絵を初めてみたのは、静岡の知り合いのギャラリーでした。それはオルガンを弾いている女性の後ろ姿で、その女性の前を花ビラがひらひらと舞い落ちている絵でした。その頃はまだ有元利夫といっても有名ではなく、「安井賞」をとったばかりの若手の画家ということでした。しっとりとした色調の中に「確かな存在」として人が描かれていて、なぜかその柔らかな雰囲気に魅せられたのでした。その後、何かの本で、有元氏は中世のフレスコ画の技法を用いて制作していることや、大変なバロック通でご自身もバロックフルーテを演奏する、というようなことを知りました。そういえば、当時娘が所属していた静岡市の美術館で「有元利夫展」をやったことがありました。夜、展覧会の会場で小さなコンサートをしたことを思い出します。多分、その当時から、娘も「有元ファン」だったのでしょう。
古 楽
その後、有元さんは39歳という若さで亡くなりました。そのあまりにも早い死をとても残念に思ったものでした。
その頃から、当時は主流だったLPレコードもCDにかわっていきました。当然LPのジャケットも小さなCD盤用になり、前記のジャケットのような派手さがなくなったように思います。そのCDさえも、昨今では音楽配信やダウンロードや携帯にとって代わり、次第に姿を消しつつあります。改めて30年という年月の重みを感じます。それにつけても、この「分厚くて重いLP20枚」の存在観は何なのでしょう。音楽の重みと時間の重みが重なって生まれた重量感とでも言いましょうか。
ところで、せっかくの「音楽の贈り物」です。早速聞かなくてはと昔のオーディオを出してきて、スイッチを入れてみました。風体は昔のままなのにプレーヤーは何故か盤が回転しません。長い間使っていなかったので動かなくなってしまったのでしょう。とっさに、「なんとかしなくちゃ!」と思いました。でも、考えてみると、そんなにあわてることでもないという気がしてきました。コーヒーを飲みながら、LPレコードをひっくり返したり眺めたり、ジャケットの解説を読んだり見たりしながら、ゆったりと音楽を聴く、それって急がなくても、自然に訪れる理想の老後のような気がしたからです。
ともあれ、素敵な「音楽の贈り物」をありがとう。ゆっくり楽しませて頂きますね。