今、姫沙羅(ヒメシャラ)という美しい名を持つ樹が、白い花をつけて満開です。
すらりとした美しい樹形に白い椿のような花をつけているのですが、
みどりの中にうずもれるように咲いているので花は目立ちません。
この姫沙羅、別名を「夏椿」ともいいます。
椿のような白い花が一日で落花してしまうので「椿」の名がついたのでしょう。
万葉学者の中西 進氏は、「万葉集の花」中で、「古代人における自然は今日の我々における自然とよほど違っていたように思われる。一言で言えば、彼らの「生命」と「言葉」と「自然」とが、ほとんど一つのものとして捉えられているからである。(中略) 「花」の意味が、見られることにあることを前提にしていえば、「咲き誇る」という行為は、空しい華麗さを耐えているということにもなる」。
ここに言う花は、小野小町の「花の色はうつりにけりな・・・」にあるような「桜花」のイメージなのでしょう。それに比べて美しいまま散る「椿」はよく武士の死の潔さに例えられました。
ぽとりぽとりと 足元に遊ぶ 夏椿
樹の下にいるとポトリポトリと音を立てるように姫沙羅の花が降ってきます。
これを見ていると、石畳の上や水桶の中で「見てよ、見てよ」とはしゃいでいる少女のようです。落下してから見せる「花」の美しさはどう例えるのでしょうかネ。