一見すると同じように「みどり」なのだが、一本一本の木の葉の色は微妙に違って、日にすかしてみると、透き通って葉脈の見えるものもある。この色見本のような美しさは、自然の創りだした妙としか言いようがな い。
ふと、この自然の色に「名前」がついているのかしらと、調べてみた。
鶸色(ひわいろ) 青白つるばみ 離かん茶 藍媚茶(あいこびちゃ) 苔色 海松色 萌黄 青丹 裏葉柳 ・・・・・・・・・・ ある、 ある、 かぞえきれないほどの色名がついている。
何という古人(いにしえびと)の感性の豊かさ、造詣の深さ。自然を忘れてしまった現代人の及ぶところではない。ふと、陶芸の世界も同じなのではないか、と思ったらこわくなった。
浜松グランドホテルで、友達の出版記念パーティがあり、それに出席した。
本の題名は「恩寵の風土誌」という。風土誌というから、浜松の風土にちなんだ内容かと思うが、そうではない。よくも悪くも、この風土の中で生まれ育った、ひとりの女の半生記である。
「柿の木つうしん」という形で、A4版の紙一枚に、エッセイ風の文章に俳句が数句ついた便りが、毎月送られるようになり、それが五年間続いたろうか。 内容はさまざまで、戦前の貧しい農家の暮らしのこと、七人兄弟の末っ子として生まれた自分のこと、父母や兄姉のこと、友人のこと、中学時代こと、時には現在の自分のことが、淡々とした口調で語られていた。
それが一冊の本になって送られてきて、驚いた。飾らない文章や、時には正直すぎるほど率直に語られた個人の思い出や出来事は、それなりに興味深い読み物だったのだが、それらが積み重なって、一つの風土の歴史になっていた。まさに「恩寵の風土誌」と言う言葉のように。
驚いたのはもう一つ。その出版パーティの素晴らしさだ。もちろん有名な評論家の樋口恵子さんや弁護士の渥美雅子さんなんかが、自前で思いっきり立派なバフォーマンスをしてくれたこともあるのだが、居合わせたみんなが、それぞれにとても優しく、とても暖かく、心地よかった。「恩寵の風土誌」の恩寵とは、神や君主の恵みの意味とか。
浜北のお百姓の家に生まれた一人の少女から始まって、およそ三代になるのだろうか、今、イギリスでヴァイオリニストとして活躍しているという姪のお嬢さんとその夫であるイギリス人のピアニストが、わざわざロンドンから駆けつけてきて、演奏を披露してくれた。曲はチゴイゼルワイゼン。二人の演奏でパーティはクライマックスを迎えた。
長いようで短い人の一生。人は一生の間に何人の人と出会うのだろうか。そして、その出会いをどれだけ自分の魂の中に受け止めて生きていけるのだろうか。
こんなに楽しいパーティは、めったにあるものではない。
ありがとう池本光子さん。
「千代みどりの森」は、静岡市の郊外にあるちいさな自然公園で、里山の一部が、そのまま植物園のようになっています。
新緑の芽吹き始めたコナラの林を歩いていくと、まず目に飛び込んでくるのが、白い小さな花をいっぱいにつけたニリンソウの群落。
そして小高い山道の林の中には、黄色いヤマブキの花。道端には、紫色のツボスミレ、白いイカリソウ、花をつりさげたホウチャクソウ、不恰好なウラシマソウ、可憐なヒトリシズカ 等など。
山野草好きには堪えられない光景です。
「千代みどりの森」は、静岡市内から安倍川を渡り、しいのお方向へ。
斎場に隣接した里山の一角が公園になっています。昔の里山の風景が、そのままよみがえったような懐かしい風情です。
しばらく留守にしていました。
静岡に帰ったら、桜はもう終わって、その代わりに、いっせいに緑が芽吹き始めていました。谷津山の蕨をとってきて、てんぷらにしました。これから竹の子が本番を迎えます。