これはドキュメンタリー映画の題名です。
北欧フィンランドのオルキオオトに、世界初の
高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場の建
設が始められています。 実は、10数年前、こ
のオルキトオトの現場を視察をしたことがありま
す。荒涼とした山地に掘られたトンネルの地層は
1万年に数ミリしか動かない岩盤層だと聞きまし
たが、安全の保障がないということで、当時まだ
決定のゴーサイは出されずにいました。
(日本ではまだ候補地さえありません。)
* *
誰にも保障できない10万年後の安全。
映画は、これをめぐって科学者たちが、現場か
ら語るこもごもの思いをドキュメンタリータッチで
捕らえながら、最先端の科学技術世界の持つ不
条理をうまく表現しています。
* *
今ここにきて、ようやく原子力の是非を人々が
日常的な言葉で話り始めました。原子力には、今
回のような直接的な被害もありますが、忘れては
いけないのが、発電を続けるかぎり発生する高レ
ベル放射性廃棄物の存在です。半減期が何万年
にもなるこれらの物質の危険のメッセージを、10
万年後の未来の人類にどうやって届けるか、記号
か? 文字か? 絵画か?
誰にも保障できない「10万年後の安全」につい
て、確信をもって語れない科学者たちの素顔をア
ップでとらえながら、人類という視野にたって、こ
の問題に真正面から取り組んだ貴重な映像です。
私たちの想像を遥かに超えた10万年後の人類、
そこに思いをめぐらす学者たち、思わず笑える会
話があったりしながらも、これから長い長い地底の
眠りにつく放射性物質たちこと考え、暗い気持ちで
帰途に着いたのでした。
映画はサールナートホールで29日まで。
この地味な映画に、10人ほどの観客がいたことは
うれしいことです。