携帯やメールがなかった私たちの青春時代には、手紙は大切な通信手段でした。
大概の家の玄関近くには草花や木と一緒に郵便受けがあって、待ち受けていたその手紙の文面は咲いていた花や木の香りと一緒に記憶されていたりして、その季節になるとふと思い出したものです。
手紙〈歌や文)は、万葉の昔から人々の心象風景として記録され、今も私たちの心の奥深くに息づいています。
我が家の郵便受け附近、今、白いシュウメイギクが満開、水桶の中にはヒメダカがいる。
さて、今時どうして郵便の話なんか?と思われるでしょうが、実は「日展の入選通知」は、予め決められた日(作品を搬入してから10日ほどたった日)に郵便で来ることになっています。
夏の間悪戦苦闘して制作した作品を送りだして「やれやれ」と一息ついた後にやってくる「入選できるかどうか?」という不安。この待ちの時間をどうやって過ごすか、みんな旅行に行ったり映画を見にいったり、友だちと遊んだりして気を紛らわせるのですが、発表の前日から当日になるとなぜか郵便受けが気になり始めます。これは半世紀以上も前の入試の合格通知同じで、この歳になっても変わらないのです。
今年も、朝からそわそわ待っていると10時半頃に郵便配達の人が「速達で~す」と声をかけてくれました。運よく「入選」していました。その時のほっとしたうれしい気持ちも、昔とちっとも変わりません。
早速心配してくれている人にメールを入れたりしたのでした。
昨今はIT時代とか言って何もかもをスマートフォンで済ませるご時世、何年かしたら「入選通知」もメールで来るようになるのでしょう。(今年も公式発表は、午後3時・パソコン上でした)。でも、その前に、手間暇かけて人が運んできてくれる「速達郵便」は、温かみがあって「いいな~」と心から思ったのでした。
・・・などと言いながら、これが「落選」だったら真反対の気持ちになるのかもしれませんネ・・・・・。