喫茶 輪

コーヒーカップの耳

「蜂供養」港野喜代子

2017-12-10 23:10:48 | 
港野喜代子さんの第一詩集『紙芝居』(昭和27年。爐書房)の中に印象的な詩がありました。
「蜂供養」です。

   蜂供養
          港野喜代子

少年は瓶に集めた蜂を部屋の中に次々放し
弟や妹の悲鳴を平然と見ている

蜂はうなり舞いガラスに当身で怒り立つ
彼は今日何を持て余しているのか
何故素直に母にぶつけて来ないのか

ここ数日のもの足らぬ食事のことか
昨日までせがみつづけて拒まれたグローブのことか
終りに近い夏休みのたまつた宿題のことか

それとも彼は何か悲しみを知つたとでもいうのだろうか
それが悲しみであることも識らず
キラキラと剣ある虫を戸迷わせようとしているのか

戸外に妹らが逃げ出そうとするのを
傲然と押し返し
彼は更に次の瓶の蜂を放つ

母はたまらなくなつて
彼の肩をつかみよせようとした

突如、彼は窓を開いた
蜂共は数日の或は十数日の囚われから
一直線に秋を光らせて生きのびて行く

蜂の種類をここまで集めただけが
彼のこの夏の仕事でしかなかったのに
あと数日で止どめ並べようと彼は箱も出してあるのに

今、少年は窓に足をかけたままでいる
きつと涙をためているに違いない

やがて彼は振り返りざまワツと泣いて
あの寶、全部戻せと母に責めつくことであろう

港野喜代子詩集『紙芝居』(昭和二十七年爐書房)より
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将棋カレンダー

2017-12-10 09:32:49 | 将棋
今年も井上慶太九段から「将棋カレンダー」が届きました。

この表紙、いいですねえ。
ひふみんこと加藤一二三九段と今ブームを巻き起こしている藤井聡太四段の記念すべき初対局後の写真。
これが両者の最初で最後の公式戦になったのでしたが。

そして中を開いてみると、井上九段のお弟子さんの稲葉陽八段や菅井竜也七段の写真がある。
慶太さん、さぞやうれしいことでしょうね。
早速メールでお礼を伝えましたが、きっちりとていねいな返信がありました。
慶太さんも将棋ファンの間では人気者ですが、奢ることなく誠実なお人柄の人です。
ただ残念なのは、少し前までは、当の慶太九段もよくこのカレンダーに登場しておられたのですが、今回はありません。
まだまだ現役で頑張っていただきたいものです。
慶太さん、ありがとうございました。
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