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コーヒーカップの耳

続 コーヒーカップの耳 75

2019-01-13 13:05:51 | 続・コーヒーカップの耳
続 コーヒーカップの耳

75「椅子」

とうとう医者に見捨てられてしもた。もう治療の方法はないからホスピスを考えなさい 言いよんねん。ほんで俺 今 日曜大工しとんねん。孫にな 椅子作りよんねん。バーベキューとかした時に これジイちゃんが作ってくれた椅子や ゆうてくれるかな 思て。そやから俺 今忙しいんや。
人間の一生 あっという間やなあ。死んだらな~んも残らへんもんな。凡人はみなそうちゃいますのん?なんか残るもん マスターにはあります?俺が今思てんのはな 孫に O出S一ゆうジイちゃんがおったということを覚えておいてほしいということ。うん それだけ。この世にその子が生きて 覚えてくれてる間は 俺も生きてんねんな。それで 素人大工で椅子作っとんねん。仮に一か月後に俺が死んだとしても O出S一ゆうジイちゃんを覚えといてくれたら 六十年七十年生き続けるわけやん。うん 俺が今思てるん それだけ。
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電車話、二題。

2019-01-13 10:05:10 | 続・コーヒーカップの耳
うちの孫の下二人が、ことのほか電車が好きです。
正月に大阪の娘の家に一族集結した時のこと。
そこはすぐそばをJRと阪神電車が走っている。
三階のベランダからは、環状線の乗客と目が合うほどの近さで見える。
姫路の孫shuntaをそこに連れて行くと一日中離れなくなるだろうから、そこへは連れて行かなかった。
その帰りのこと、そのshuntaを連れて、阪神の線路際へ。
次々とやって来る電車に大喜び。体を震わせるようにして喜びを表していた。
で、電車話を二題。


続 コーヒーカップの耳

72「電車」

子どものころから電車が好きでね いっつも運転士の後ろに立ってました。前の景色見るんやなしに 運転士の操作を見てましてん。大きなったら運転士になりたい思うてました。そやけど 大きなるにしたがって運転士やなしに 電車を作りたいと思うようになりました。ほんで 山陽電鉄の車両部設計課に入ったんです。そやけど 人生思うようには行かんで なかなか自分の責任での設計はさせてもらえませんでした。ただ最後に 生涯一度だけの設計をさせてもろて その会社辞めました。それから何年かして 元の同僚が 「お前の設計した電車がやっと完成して走ってるぞ」と教えてくれて 一人でそっと会いに行きました。


73「馬」

踏切のそばの柵にもたれて 電車がやって来るんを待ちよりました。今みたいに次つぎとはやって来んから ジーッと待ちよりました。やがて向こうの方から大きなんが来ますねん。目の前をごっつい音させて遠ざかって行って。また 次のんを飽きずに待ちよりました。
阪急電車に就職しましたけど すぐに運転士にさせてもらえるわけあらしまへん。改札係を二年して車掌。それから一年して試験通ってやっと運転士になりましてん。そら うれしおましたでェ。ところが いざなってみたら 子どものころ思てたんとはえらい違いですがな。そら当たり前ですな。仕事やもん。遊び半分でできるもんやないですわな。まして後ろにようけの人の命を預かってるんやから。初めて乗客乗せて運転した時は 身体が震える思いしました。楽しいどころやない。
うん ぼくは大きな事故には遭わなんだけど 人身事故にはちょこちょこねえ…。あれは気持ちのええもんやなかったですなあ。
そうそう 一ぺん大きなもんと衝突したことがおました。馬。馬に衝突したことが。十三駅の近くやったけど 馬力引きの馬が突然前から走って来よって。踏切から入って来たんやろけど 線路の中をバーッと走って来ましたんや。どんな悩みがあったか知らんけど そらびっくりしましたで。まるで映画のアップシーンみたいで。直前に思い直したんやろか 横へ逃げようとしよったけど 間に合いまっかいな。気の毒なことしましたわ。

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