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『浪花女的読書案内』を読む③

2019-04-16 19:46:35 | 『浪花女的読書案内』
『浪花女的読書案内』を読む③です。
「谷崎潤一郎の偏愛(上)」←二段階クリックで。

谷崎はわたしも若い時からよく読んでいる。遠い昔だが「刺青」には衝撃を受けた覚えがある。
そうですよね。谷崎の小説には、がめつい女、「大阪のおばちゃん」なんて登場しないですよね。
それは小説の中だけではなく、松子(夫人)さんにも言えることで。
石野さんは松子さんの回想録『倚松庵の夢』から引いて谷崎の恋文を紹介しておられる。
《はじめてお目にかかりました日から一生御寮人様にお仕え申すことができましたら、たとえそのために身を亡ぼしてもそれが私には無上の幸福でございます」「私には崇拝する高貴の女性がなければ思うように創作できないのでございます。しかし、誤解遊ばしては困ります。私に取りましては芸術のための御寮人様でなく、御寮人様のための芸術でございます」》
すごいですね。

(下)では「細雪」に登場する女性を中心にいろんなタイプの女性を挙げる。しかし、「おばちゃん」は登場しない。
そして石野さんはこう締める。
《(略)そんな谷崎は「大阪の女は文楽の人形の首ぐらいの古さがある」と書いた(『私の見た大阪及び大阪人』)。とすれば浪花女こそ、伝統的女性美の純粋な継承者であると見えたのだろうか。うれしいような、こそばゆいような気がする。》
この石野さんの感想、ちょっとおかしみがあるなあ。石野さんもまた魅力的な浪花の女なのかもしれない。

この際ちょっと我田引水。
拙著『触媒のうた』にも谷崎は何度も登場する。それは、谷崎と富田砕花師が親しかったということで。
(つづく)
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