喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『菜の花の駅』

2018-08-14 18:13:04 | 
少し前に詩集をお贈りいただいていた。



河崎洋充詩集『菜の花の駅』(編集工房ノア刊)です。
装丁は森本良成さん。

著者は河崎洋充さん(1952年生まれ)という人。
わたしは存じ上げない。
ということはノア社主の涸沢さんのお手配によるものでしょう。
とりあえず頭から読み始める。
質の高い作品だと思う。多分ベテランなのだろうと。
言葉がよく選ばれた読みやすい詩が並ぶ。
わたしは上手だなあと思いながら、しかし淡々と楽しませてもらっていた。
ところが、ところがである。
詩集は三部に分けて構成されているのだが、そのⅡに入ったとたんにわたしは、
身を乗り出してしまった。眼を見開いてしまった。
「これは本気で読まなくては!」と感じたのである。
「中空に書く」という詩がある。
←二段階クリックで。



それまでの詩と、通底しているものは同じなのだが、詩としての趣は全く違う。
いや、わたしだけがそう感じるのかもしれない。
とにかく、Ⅱ、の母親に関する詩群はわたしの心を捉えた。
ドラマチックなのである。
ということは、この作者の人生もドラマチックというわけだ。
しかしそのことを大げさに言うわけではなく、さり気ない。
淡々と書き進めて行く中に深い思いがこもっているのがよく解る。
それが読者の胸を打つ。

「母の日」という作品がある。

母が、また消えた

舞台袖にでも引っ込むように

微笑みも労いの言葉もなく

しかし、私はいつもそんな母を捜しにいく

三度も捨てられても


母が、夜中にそっと戸を開け

優しく私を抱きしめに

帰ってくれるのを待っていた

明け方の寒さに身を縮めながら

横に敷いた布団の手触りの冷たさに

掛け布団の端を強く噛んだ


慈母の顔をした母

夜叉の心を持つ

鬼子母神だった母よ


別れて二十年余り

ついに今生で暮らすことは叶わなかった



敢えてスキャンせずに文字を打ち込みました。

跋文を太田登という人が実に丁寧に書かれているが、わたしはそれを参考にせずに読ませてもらいました。
河崎さん、涸沢さん、いい詩集を読ませていただきましてありがとうございました。



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