喫茶 輪

コーヒーカップの耳

短歌誌『歩』

2022-03-17 13:27:10 | 文芸
但馬の歌人、今村明美さんからお送りいただきました。



合同歌集『歩』(第二歌集)です。

11人のお仲間で出しておられます。
この短歌会を指導しておられるのが明美さん。
でもこの歌集を見ると、11人がすべて平等の扱い。
初心者もベテランもなく、あいうえお順で配列されています。
これは気持ちがいいです。
出詠数も一人ほぼ25首ずつと平等です。中に少ない人がありますが、それは本人の意向の様です。
これは明美さんの最初のページの6首。
←クリック。
さすがに各種受賞歴が何度もあるベテラン、素人のわたしがいうのも変ですが上手いものです。
ほかのページのわたしの目に留まったものを。

《「好き」と言いあなたがくれた梟の土鈴の音色が私は好きよ》
ちょっとドキッとする歌。
《終着の無人駅舎に夜の来たり昔のままの小さな明かり》
この駅舎は、わたしも昔ちょっと利用したことのある懐かしい駅でしょうか。

ほかのひとのも紹介しましょう。
足立ゆう子さん
《新米の熱あつご飯をほおばりて「旨い」 米作りの兄に合掌》

池野欣治さん
わたしと似たお名前で親近感を感じます。
《コロナ君ころころ転んで今すぐに消えてなくなれ空の彼方へ》
小学生が作ったといってもいいような初々しい作ですが、実感がありますねえ。
わたし、こんなんけっこう好きです。

うぐ森まる美さん
《焼き芋をぱかっと二つに割りみれば黄金色せる夢なる世界》
眼に見える実感。

大垣ひとみさん
《故ありて神戸へ通う車窓には五年目の秋 季節巡りて》
「故」とは?「お大事に」でいいのでしょうか。
《羊らはにやりと笑い足早に駆けてゆくなり眠れぬ夜を》
これはユーモアですね。

中島敬子さん
《白内障手術を無事に終えしのち眼帯外せば見える嬉しさよ》
わたしもそろそろ勧められていますが。
《終日を夫と過ごせば家事の増えそのストレスの捌け口探す》
これは身につまされますね。

中島寿美子さん
《在りし日の祖父が植えし杉の木を愛おしみつつ撫でいる父よ》
《図書館の前の欅は手を広げ孫とわたしを迎えてくれる》
《風呂あがり老眼鏡を鼻先に乗せ丸まりて足の爪切る》

いずれも実感豊か。目の前に見るようです 。

中治やゑ子さん
《君と手を繫ぐ月夜に廻り道 寄り添いている初冬の影よ》
ロマンチックですねえ。
と思えばこんなのが。
《土を耕す爺の後ろを幼子はトマト苗持ちよちよち歩む》
畑の匂いがしそうです。

羽淵維子さん
《妹をランドセルのまま抱き寄せてその姉はしきり頬ずりをする》
かわいいですねえ。
《老妻をショートスティに見送りのその夫の背に安堵と寂しさ》
なんともいえない目線。作者の羽淵さんは優しい人なんだ。

古屋鶴江さん
《案じいる友より届く年賀状に介護施設の消印のあり》
この世の実相。
《東大に合格したる甥の子は喜び爆発 家族も共に》
まわりも誇らしくなりますよね。

増井浩子さん
《はらはらと舞い散る花を両の掌に受けて夢見る乙女の心地》
《おかっぱの頭並べて学びたる友と繋がるこの歳にして》

平凡の中になんともいえぬ良さがあるような。

以上、短歌門外漢の素人選出でした。
ほかにはもっと短歌としての姿のいい作品がたくさんありますがわたしの好みで。

最後に申し添えますが、今村明美さんはわたしの従姉です。


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2 コメント

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『歩』 (imamura)
2022-03-18 10:11:05
あけみ様
楽しそうな会ですね。
わたしも楽しませていただきました。
今後とものご活躍を祈ります。
返信する
「歩」 (あけみ)
2022-03-18 09:31:50
コメントをありがとうございます。
それぞれ個性がある人ばかりで短歌の内容も
それぞれに表現方法も違いますし楽しみながら一歩ずつ前進出来たら良いなと思っています。
一人ずつを取り上げてくださっての感想とても励みになります。
返信する

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