2018/11/3
・大学野球の二軍でくすぶっている大学生が、生真面目な後輩に刺激されて、野球にかかわる意味を見つける話。
・舞台は手前と奥で二分されている。手前が野球グランドのホームベース付近、奥が部室。力作。
・手前と奥でシーンを切り替えながら、ソツなく話を進めている。
・TGRの新人賞エントリー作品なのでそういうつもりで見てたけど、明らかに新人っぽくなかったのが各種野球仕草の精度。
・野球は、テレビでいくらでもプロ選手を見られるので、中途半端にやると途端に嘘くさくなるリスキーな題材。
・そんななか、素振りもボールを投げるのもグローブさばきも、明らかに訓練されている人のそれ。
・女子マネすらかなりバットが振れている。
・素振りが始まると話そっちのけで見入ってしまう。
・さらりと出た「お、流すねえ」という一言が、いかにも野球やる人が言いそうなセリフで好き。
・部員どうしの会話もいいリズムで、役者さんの中の野球経験者の割合とか、役者さんのプライベートでの仲良し具合も気になってしまう。
・将来何の役にも立たないはずの野球をどうして続けるのかという疑問。
・例えば、鉄道マニアの人はどういう気持ちで見てるんだろうと思いながら見る。
・好き過ぎると負担になることもあるから、そういう意味では共感できるのかも。
・作中、裸足にはならなかったけど、自分の中で制約を設けていた男が外部からのきっかけで開放に向かうところは、ニール・サイモンの『はだしで散歩』感がある。
・本家と違うのが、変化のきっかけが妻とのケンカではなくて、黙々と繰り返される後輩の素振りというところ。
・言葉に頼るのが必ずしも悪いことではないけど、そういうところに作り手側の腕を感じる。
・とかくありがちなしょうもないエピローグもなく、ばっさり話を切り上げたのも印象がいい。
・素振りの印象が強いけど、実際には個々の演技力も高いし、他に何が出来るんだろうと今後の期待感が高まる作品だった。
・80分と書いてたけど65分なかったんじゃないだろか。
※(訂正)TGRのサイトに70分と書いてあったような気がしたんですが、80分だったので直しました。