ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

蘇ったカルメン

2021-08-01 19:48:35 | 芸術およびコミュニケーション

2021年8月1日びわ湖ホールにて歌劇「カルメン」

以前の「カルメン」は、田舎出の真面目なドン・ホセをカルメンが色仕掛けで誘惑し、エスカミーリョに心を映したカルメンが殺されるのも自業自得…というイメージだったが。

アレックス・オリエ氏の演出では、カルメンは現代のロック・グループの歌姫。
ライブで大勢の人を魅了する。ドン・ホセと恋に落ちるも、ストーカーのようにカルメンを束縛するドン・ホセから心が離れ、エスカミーリョに心が移る。

「俺と一緒に来なければ殺す」と脅すドン・ホセに「誰も私の自由を奪うことはできない」と言い放つ強い女性のカルメン。

「同じ歌、同じセリフなのに、どうしてこうも違ってみえるのか」と思うほど。
ドン・ホセのストーカーぶりにはゾッとする。
引き換え、命に代えても自分の自由を守ろうとするカルメンの強さよ!

読んではいないが、メリメの原作では、ドン・ホセはスペインのバスク少数民族の人として描かれているそうで、ドン・ホセの側の悲哀にもっと焦点が当たっていたのだろう。
今回は、ドン・ホセは独占欲が強く、嫉妬深く、拒絶されるのを許すことができない狭量な男として描かれているため、許しがたい。

しかし、いつの時代であっても殺人に至ったドン・ホセは許される立場ではない。
それでもその人物像の解釈が大きくことなってきたことに時代の流れを感じる。

カルメンを現代に置き換えたこと。そのイメージにふさわしい鉄パイプの舞台美術。
カルメンを現代によみがえらせた。
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